【社長必見】役員報酬と社会保険料の最適バランス!手取りを最大化する賞与・企業型DC活用術を徹底解説

役員賞与・役員報酬

「役員報酬を上げたいけれど、社会保険料の負担が増えるのが心配…」
「給与と賞与、どちらで受け取るのが一番お得なんだろう?」
「税金と社会保険料を考慮した上で、最も手取りが多くなる報酬設計を知りたい」

多くの経営者が、自身の役員報酬を設定する際に、このような悩みに直面します。役員報酬を増やせば、当然ながら所得税や住民税、そして社会保険料の負担も増加します。この複雑な関係を理解しないまま報酬を決定すると、せっかく増やした報酬のかなりの部分が、税金や社会保険料として消えてしまうことにもなりかねません。

しかし、役員報酬の額や支給方法を戦略的に設計することで、社会保険料や税金の負担を最適化し、手取り額を最大化することが可能です。特に、「賞与(ボーナス)」や「企業型確定拠出年金(企業型DC)」といった制度をうまく活用することが、その鍵となります。

この記事では、役員報酬の額が社会保険料や税金にどのように影響するのか、具体的なシミュレーションを交えながら、その複雑な関係を解き明かします。さらに、賞与や企業型DCを活用して、経営者の手取り額を賢く増やすための具体的な戦略と注意点について、分かりやすく徹底的に解説していきます。

役員報酬と社会保険料の「意外な関係」:報酬が増えると負担割合は下がる?

まず、多くの方が誤解しがちな、役員報酬額と社会保険料負担の関係について、その基本的な仕組みを理解しておきましょう。

社会保険料の基本的な仕組み

  • 社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は、毎月の役員報酬の額(標準報酬月額)に基づいて決定されます。
  • 報酬が多いほど、保険料の絶対額は高くなります。これは、「報酬比例」が基本となっているためです。
  • 保険料は、役員本人と会社が原則として折半で負担します。

「給料が増えれば、社会保険料の負担が増える」は本当か?

「役員報酬を上げると、社会保険料の負担もどんどん増えていく」と考えるのが一般的です。これは、ある一定の報酬額までは事実です。しかし、社会保険料には「上限額」が設定されているという、非常に重要なポイントがあります。

  • 厚生年金保険料の上限:
    標準報酬月額が65万円(月給63万5千円以上)に達すると、それ以上報酬が増えても、厚生年金保険料は頭打ちになります。
  • 健康保険料の上限:
    標準報酬月額が139万円(月給135万5千円以上)に達すると、それ以上報酬が増えても、健康保険料(介護保険料含む)は頭打ちになります。

この上限額の存在により、役員報酬が一定の水準を超えると、収入に占める社会保険料の「負担割合」は、逆にどんどん低下していくという現象が起こるのです。

【報酬額と社会保険料負担割合のイメージ】

  • 月給66万円(年収792万円)あたりまで: 報酬の増加に比例して、社会保険料の負担割合も約15%(自己負担分)で推移します。
  • 月給66万円を超えると: 厚生年金保険料が頭打ちになるため、負担割合が徐々に低下し始めます。
  • 月給135.5万円(年収1626万円)を超えると: 健康保険料も頭打ちになるため、負担割合はさらに大きく低下していきます。
  • 年収2,400万円(月給200万円)の場合: 社会保険料の負担割合は、約4.4%にまで低下します。

このように、「役員報酬を上げすぎると社会保険料の負担が重くなる」という懸念は、特に高額報酬の領域においては、必ずしも当てはまらないのです。

賞与(ボーナス)の活用術:社会保険料の「上限」を突く戦略

では、この社会保険料の上限制度を、さらに戦略的に活用する方法はないのでしょうか。そこで登場するのが「賞与(ボーナス)」の活用です。

毎月の役員報酬を低く抑え、その分を賞与として一括で受け取ることで、社会保険料の負担をさらに軽減できる可能性があります。

賞与にかかる社会保険料の仕組み

  • 賞与にも、月々の給与とは別に社会保険料がかかります(標準賞与額に保険料率を乗じる)。
  • しかし、賞与にかかる社会保険料にも、1回あたりの支給額に上限が設けられています。
    • 厚生年金保険料の上限: 1回の支給につき150万円まで。これを超える部分には厚生年金保険料はかかりません。
    • 健康保険料の上限: 年度(4月1日~翌年3月31日)の累計で573万円まで。これを超える部分には健康保険料はかかりません。

【シミュレーション比較:年収798万円のケース】

  • パターンA:全額を月給で支給(月給66.5万円)
    • 社会保険料(自己負担):約123万円
    • 所得税・住民税:約90万円
    • 手取り額:約585万円
  • パターンB:月給10万円+残りを賞与で支給
    • 社会保険料(自己負担):約97万円(約26万円の削減!)
      • 月給120万円分にかかる社会保険料
      • 賞与678万円分にかかる社会保険料(健康保険の上限573万円を超えた部分にはかからない)
    • 所得税・住民税:約98万円(社会保険料控除が減るため、税金は増加)
    • 手取り額:約603万円
  • 結果:
    このケースでは、支給方法を賞与中心に変えるだけで、年間の手取り額が約18万円も増加しました。社会保険料は26万円以上削減できましたが、その分、所得税・住民税が増加するため、手取りの増加額は社会保険料の削減額よりも小さくなります。

【シミュレーション比較:年収1626万円のケース】

  • パターンA:全額を月給で支給(月給135.5万円)
    • 社会保険料(自己負担):約178万円
    • 所得税・住民税:約413万円
    • 手取り額:約1035万円
  • パターンB:月給10万円+残りを賞与で支給
    • 社会保険料(自己負担):約101万円(約77万円の大幅削減!)
    • 所得税・住民税:約455万円(税金は増加)
    • 手取り額:約1070万円
  • 結果:
    このケースでは、賞与中心の支給方法にすることで、年間の手取り額が約35万円も増加しました。

このように、特に高額報酬の場合、毎月の役員報酬を低く抑え、大部分を賞与として受け取ることで、社会保険料の上限制度を最大限に活用し、手取り額を増やすことができるのです。

賞与活用の注意点(役員賞与の損金算入)

ただし、この手法を役員が用いる際には、大きな注意点があります。役員賞与は、従業員への賞与とは異なり、原則として会社の経費(損金)にはなりません。経費として認めてもらうためには、「事前確定届出給与」として、事前に税務署に「誰に」「いつ」「いくら」支給するかを届け出る必要があります。この手続きを怠ると、賞与分は会社の損金にならず、法人税が課された上で、役員個人にも所得税が課されるという二重課税の状態になってしまうため、必ず専門家である税理士と相談の上、適切な手続きを行う必要があります。

企業型DC(はぐくみ基金等)の活用術:もう一つの手取り最大化戦略

高額報酬者が手取りを最大化するためのもう一つの強力なツールが、「企業型確定拠出年金(企業型DC)」、特に中小企業向けに設計された「はぐくみ基金(選択制確定給付企業年金)」などの制度です。

企業型DC・はぐくみ基金の仕組み

  • 役員報酬の一部を「給与」として受け取る代わりに、その部分を「掛金」として会社から年金資産に積み立ててもらう制度です(選択制の場合)。
  • 最大のメリット:
    • この「掛金」部分は、役員個人の給与所得とは見なされません。
    • そのため、掛金部分には、所得税・住民税だけでなく、社会保険料もかかりません。
  • 会社側にとっても、この掛金は全額損金として処理できます。

【シミュレーション比較:年収2,400万円のケース】

  • パターンB:月給10万円+賞与中心
    • 社会保険料(自己負担):約101万円
    • 所得税・住民税:約744万円
    • 手取り額:約1,555万円
  • パターンC:はぐくみ基金等を活用(月々の掛金40万円と仮定)
    • 給与として受け取る部分: 月給160万円(200万円 – 40万円)× 12ヶ月 = 1,920万円
    • 掛金として積み立てる部分: 月40万円 × 12ヶ月 = 480万円
    • 社会保険料(自己負担、給与1,920万円に対して):約179万円
    • 所得税・住民税(給与1,920万円に対して):約499万円
    • 手取り額: 1,920万円 – 179万円 – 499万円 = 約1,242万円

手取り額だけの比較では、パターンBの方が有利に見えますが…

パターンCでは、手取り1,242万円に加えて、年間480万円が非課税で将来の年金資産として積み立てられています。 この積立金は、将来退職金や年金として受け取る際に、退職所得控除などの税制優遇を受けられます。

一方、パターンBで得た手取り1,555万円の中から、もし年間480万円を貯蓄・投資に回そうとしても、その原資は既に税金・社会保険料が引かれた後のものです。

したがって、将来のための資産形成という観点まで含めると、企業型DCやはぐくみ基金を活用するパターンCの方が、トータルでの資産形成上有利になる可能性が非常に高いのです。

どちらの戦略を選ぶべきか?

  • 賞与中心の戦略(パターンB):
    • メリット: 目先の現金手取り額を最大化できる。増えた手取りを、自身で自由に資産運用(不動産投資、株式投資など)したい人に向いている。
    • デメリット: 将来の資産運用の成果は不確実。
  • 企業型DC・はぐくみ基金活用戦略(パターンC):
    • メリット: 税金・社会保険料がかからない形で、効率的に将来の退職・年金資産を形成できる。運用をプロに任せられる(商品選択は自身)。
    • デメリット: 積み立てた資金は、原則として60歳以降まで引き出せない。目先の現金手取り額は減少する。

判断のポイントは「退職までの期間」

  • 退職まで10年を切っているなど、期間が短い場合:
    短期で大きな運用リターンを得るのは難しいため、非課税で効率的に積み立てられる企業型DC・はぐくみ基金の方が有利になる可能性が高いです。
  • 退職まで10年以上ある、若い経営者の場合:
    賞与中心で目先の手取りを増やし、その資金を長期的な視点で積極的に資産運用に回すことで、企業型DCの運用利回りを上回るリターンを得られる可能性もあります。

自身の年齢、リスク許容度、資産運用の知識や意欲などを考慮して、最適な戦略を選択する必要があります。

まとめ:役員報酬設計は、税金・社会保険・資産形成を考慮した総合芸術!

役員報酬をめぐる税金と社会保険料の仕組みは複雑ですが、その構造を正しく理解し、戦略的にアプローチすることで、手取り額を最大化し、効率的な資産形成を実現することが可能です。

役員報酬戦略の重要ポイント

  1. 社会保険料には上限があることを理解する。 高額報酬の場合、収入に占める社会保険料の「負担割合」はむしろ低下する。
  2. 賞与を戦略的に活用する。 毎月の役員報酬を低く抑え、大部分を賞与として受け取ることで、社会保険料の上限制度を有効活用し、手取りを増やせる可能性がある。(ただし、役員賞与の損金算入には「事前確定届出給与」の手続きが必須)
  3. 企業型DC・はぐくみ基金を活用する。 税金・社会保険料がかからない掛金として、効率的に将来の退職・年金資産を形成する。
  4. 「賞与中心戦略」と「企業型DC活用戦略」を比較検討する。 自身の年齢、リスク許容度、ライフプランに合わせて、最適な戦略を選択する。
  5. 必ず専門家(税理士、社会保険労務士など)に相談する。 これらの戦略は、専門的な知識と正確なシミュレーションが不可欠です。顧問税理士などと連携し、自社にとって最適な報酬体系を構築しましょう。

役員報酬の設計は、単なる給与計算ではありません。それは、会社の財務、経営者の税負担、そして将来の資産形成までを見据えた、総合的な「財務戦略」です。この記事が、皆様のより賢明な役員報酬設計の一助となり、会社と経営者個人の双方にとって豊かな未来を築くためのきっかけとなれば幸いです。