【経営者必見】銀行融資に有利な役員報酬はいくら?知らないと損する「会社の稼ぐ力」の正しい見せ方

役員賞与・役員報酬

「役員報酬、いくらに設定すればいいのだろうか?」

これは、会社の経営者が常に頭を悩ませる、永遠のテーマの一つです。

「節税を最優先に考えて、できるだけ低く抑えるべきだろうか…」
「いや、それでは自分のモチベーションが保てない。生活の質も重要だ」

多くの経営者は、「節税」と「個人の手取り」という2つの視点の狭間で、最適なバランス点を探ろうとします。しかし、会社の未来を左右する、もう一つの極めて重要な視点が抜け落ちてはいないでしょうか。

それが、「銀行融資」という視点です。

あなたが設定した役員報酬の額は、会社の決算書を通じて、銀行の融資担当者に静かに、しかし強力なメッセージを発信しています。そしてそのメッセージが、あなたの会社が将来、事業を拡大するための資金を調達できるかどうかを大きく左右する可能性があるのです。

この記事では、多くの経営者が見落としがちな「融資に有利な役員報酬の決め方」というテーマに焦点を当て、銀行があなたの会社をどのように評価しているのか、そして融資交渉を有利に進めるためには役員報酬をいくらに設定すべきなのか、その戦略的な考え方を徹底的に解説していきます。

この記事を最後まで読めば、あなたは役員報酬を単なる経費や給与としてではなく、会社の信用と未来を創るための「戦略的ツール」として捉え直すことができるようになるはずです。

1.銀行は「利益」だけを見ていない!会社の真の”稼ぐ力”の正体とは?

銀行が融資の審査を行う際、決算書の「当期純利益」の額を見るのは当然のことです。しかし、プロの融資担当者は、決してその数字だけを鵜呑みにすることはありません。彼らが見ているのは、その奥にある、会社の 「実質的な収益力(稼ぐ力)」 です。

そして、その実質的な収益力を測るための重要な指標こそが、 「利益 + 役員報酬」 という計算式なのです。

なぜ、役員報酬を足して見る必要があるのでしょうか。具体的な2つの会社を比較しながら、その理由を考えてみましょう。

【A社とB社の決算状況】
| | A社 | B社 |
役員報酬 | 2,000万円 | 500万円 |
税引前利益 | 800万円 | 800万円 |
実質的な稼ぐ力 | 2,800万円 | 1,300万円 |

A社とB社は、決算書上の利益は全く同じ800万円です。しかし、銀行の評価は、この2社で天と地ほどの差が開きます。

銀行は、「もし社長という存在がいなかったとしたら、この会社は一体どれだけの利益を生み出せる事業体なのか?」という視点で評価します。つまり、社長に支払われている役員報酬も、本来は会社が生み出した利益の一部であると考えるのです。

この視点に立つと、

  • A社は、役員報酬2,000万円と利益800万円を合わせて、年間2,800万円を稼ぎ出す力のある会社だと評価されます。
  • 一方、B社は、役員報酬500万円と利益800万円を合わせて、年間1,300万円を稼ぎ出す力の会社だと評価されます。

利益額は同じでも、その背景にある「稼ぐ力」には、実に2倍以上の差があるのです。あなたが銀行の担当者なら、どちらの会社に「この会社は将来性がある、ぜひ融資したい」と感じるでしょうか。答えは、火を見るより明らかでしょう。

2.なぜ「高い役員報酬」が決算書の信頼性を高めるのか?

「それなら、役員報酬を低く抑えて、その分、決算書上の利益を大きく見せた方が評価は高まるのではないか?」

そう考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ここにも銀行側の巧妙な視点が隠されています。それは、 「中小企業の決算書の利益は、操作されやすい」 という前提です。

残念ながら、世の中には、実態以上によく見せるために決算書の数字を操作する「粉飾決算」が後を絶ちません。在庫の量を調整したり、架空の売上を計上したりすることで、利益の額を意図的に作り出すことは、不可能ではないのです。上場企業であれば、監査法人による厳しいチェックが入りますが、監査の入らない多くの中小企業において、決算書の数字が100%正しいという保証はどこにもありません。

銀行も、そのリスクを十分に承知しています。だからこそ、利益の額面だけでなく、その利益が「本物」であるかどうかを、様々な角度から検証しようとします。

そこで、強力な「裏付け」となるのが、役員報酬の支払い実績なのです。

考えてみてください。社長が2,000万円の役員報酬を受け取っているということは、その報酬に対して、多額の社会保険料や所得税・住民税を、実際に国や自治体に納めているということです。

「これだけの税金や社会保険料を負担してでも、個人として報酬を受け取っている。ということは、この会社は本当に儲かっているに違いない。決算書の利益も、信頼できるものだろう」

高い役員報酬を支払い、それに対応する納税義務をきちんと果たしているという事実は、決算書の数字に「信憑性」という強力なお墨付きを与える効果があるのです。利益だけが突出して高く、役員報酬が極端に低い決算書は、かえって「この利益は、本当なのだろうか?」という疑念を抱かせる可能性すらあるのです。

3.役員報酬は会社の「危機耐性」を示すバロメーター

役員報酬をある程度の水準に設定しておくことには、もう一つ、経営管理上の大きなメリットがあります。それは、役員報酬が、会社の業績が悪化した際の「調整弁(バッファ)」として機能するという点です。

例えば、これまで2,000万円の役員報酬を取っていた社長が、予期せぬ経済危機などで会社の業績が悪化したとします。その際、社長は自らの役員報酬を1,000万円に減額するという決断を下すことができます。

この決断によって、会社は新たに1,000万円の利益(キャッシュ)を確保することができ、この苦しい局面を乗り越えるための原資とすることができます。

銀行から見れば、「この会社は、いざとなれば社長の役員報酬を削ってでも会社を守るという選択肢が残されている。つまり、危機に対する耐性が高い」と評価することができるのです。

逆に、もともと役員報酬をギリギリまで低く設定している会社は、業績が悪化した際に、もう削れるものがありません。打つ手がなく、すぐに経営が行き詰まってしまうリスクが高いと判断されても仕方ないでしょう。

役員報酬を適切に設定しておくことは、会社の利益を管理しやすくするだけでなく、会社の「危機対応能力」を外部に示す、重要なシグナルとなるのです。

4.では、融資に有利な役員報酬は、具体的に「いくら」が理想なのか?

「役員報酬が高い方が良いことは分かった。では、具体的にいくらくらいに設定すれば、銀行から評価されるのだろうか?」

もちろん、これは会社の規模や利益水準によって一概に言えるものではありません。しかし、一つの強力なベンチマークとして、 「年収2,000万円」 という数字を意識してみることをお勧めします。

なぜ、2,000万円なのでしょうか。その理由は、極めて人間的で、リアルな 「銀行との交渉力」 にあります。

銀行員に「下に見られない」ための戦略的報酬設定

あなたが融資の相談をする相手は、多くの場合、取引銀行の「支店」の担当者や、その責任者である「支店長」です。彼らも一人のビジネスパーソンであり、人間です。交渉の場で、相手に対して無意識のうちに優劣を判断してしまうことは、残念ながらあり得ます。

もし、社長であるあなたの役員報酬が年収300万円や400万円だったとしたら、どうでしょうか。20代の若い銀行担当者からすれば、「この社長、自分と同じくらいの給料しかもらっていないな」と感じるかもしれません。そうなると、知らず知らずのうちに態度が大きくなり、上から目線で「社長、この業績では融資は難しいですよ」といった発言をしてくる可能性もゼロではありません。

これでは、対等なビジネスパートナーとしての交渉は望めません。

一方で、あなたの役員報酬が年収2,000万円だったらどうでしょう。おそらく、その銀行の支店長の年収と同等か、それ以上である可能性が高いです。

【金融機関別・支店長クラスの年収目安】
| 金融機関の種類 | 支店長クラスの年収(目安) |
メガバンク | 1,500万円 ~ 2,000万円以上 |
地方銀行 | 1,000万円 ~ 1,500万円 |
信用金庫 | 800万円 ~ 1,200万円 |
※上記はあくまで一般的な目安であり、金融機関の規模や業績、個人の評価により異なります。

自分の年収をはるかに上回る報酬を得ている経営者に対して、銀行員が無下に接することはまずありません。「この社長は、相当なやり手だ。大切なお客様として、真摯に対応しなければ」と感じるのが、自然な心理です。

馬鹿げた話に聞こえるかもしれませんが、役員報酬の額が、交渉のテーブルにおけるパワーバランスに影響を与えるというのは、紛れもない事実です。あなたの会社が決算書を提出したとき、そこに記載された役員報酬の額は、あなたの経営手腕と会社の価値を雄弁に物語る 「無言の名刺」 となるのです。

もちろん、融資の可否は総合的に判断されるため、役員報酬だけで全てが決まるわけではありません。しかし、より良い条件で、よりスムーズに融資交渉を進めるための「環境作り」として、自社のメインバンクの支店長クラスの年収を意識し、それを一つの目標として役員報酬を設定するという戦略は、非常に有効な一手と言えるでしょう。

まとめ:役員報酬を「財務戦略」として見直そう

これまで見てきたように、役員報酬の設定は、単なる「節税」や「個人の手取り」の問題ではありません。それは、

  • 会社の真の「稼ぐ力」を外部に示す、最も信頼性の高い指標である。
  • 会社の「危機耐性」を示す、経営のバッファである。
  • 銀行との交渉を有利に進めるための、強力な「戦略的ツール」である。

節税を優先して役員報酬を低く抑えることが、短期的にはメリットがあるように見えるかもしれません。しかし、それは将来の成長に必要な資金調達の道を、自ら狭めてしまう行為にもなりかねないのです。

ぜひこの機会に、あなたの会社の役員報酬を「財務戦略」という、より大きな視点から見直してみてはいかがでしょうか。会社の成長ステージに合わせて、戦略的に役員報酬を引き上げていくこと。それが、銀行からの信頼を勝ち取り、あなたの会社の未来の可能性を大きく切り拓くための、賢明な経営判断となるはずです。

この記事があなたの経営の一助となれば幸いです。