「銀行からお金を借りたはいいけど、毎月の返済が重くて、資金繰りが一向に楽にならない…」
「事業が成長して、売上が増えれば増えるほど、なぜか手元のお金が足りなくなっていく…」
「元金を返済せずに、利息だけを支払えばよい、そんな夢のような融資制度があるって本当?」
会社の経営者であれば、誰もが一度は「資金繰り」という大きな壁に直面するのではないでしょうか。特に、仕入と販売の間にタイムラグがあるビジネスでは、 「帳簿上は黒字なのに、なぜか手元の現金が足りない」という、いわゆる「黒字倒産」 のリスクが常につきまといます。
この、多くの経営者を悩ませる「資金繰りの悩み」を、根本から解決する可能性を秘めた、ある特別な融-資制度が存在することをご存知でしょうか。
それが、 「短期継続融資(短コロ)」 です。
これは、通常の融資のように、毎月元金を返済していく必要がなく、原則として利息の支払いだけで、借入金をずっと維持し続けることができるという、まさに「知る人ぞ知る」究極の資金調達手法です。
この記事では、
- そもそも、なぜ会社には「返済不要の運転資金」が必要なのか、その根本的な仕組み
- 通常の「長期借入金」と、「短期継続融資」の決定的な違い
- 金融庁も推奨しているにもかかわらず、なぜこの制度がほとんど知られていないのか
- 銀行に「短期継続融資」を提案し、実行してもらうための具体的な交渉術
- 会社の成長に合わせて、融資額を増やしていく「更新」という、この制度ならではのメリット
まで、徹底的に、そして分かりやすく解説します。
この記事は、あなたの会社の「お金の悩み」を解消し、資金繰りのプレッシャーから解放され、事業そのものに集中するための、強力な武器となるはずです。この記事を最後までお読みいただき、盤石な財務基盤を築くための、新たな知識を手に入れてください。
なぜ会社には「運転資金」が必要なのか?利益と現金のズレ
まず、「短期継続融資」の重要性を理解するために、なぜ会社に 「運転資金」 というものが必要になるのか、その根本的な仕組みからおさらいしましょう。
会社の利益(儲け)と、手元にある現金(キャッシュ)の動きは、必ずしも一致しません。この 「利益と現金のズレ」 こそが、運転資金が必要となる最大の理由です。
【具体例:とある卸売業のケース】
この会社は、以下のような取引サイクルで事業を行っているとします。
- 月の売上:1,000万円
- 月の仕入(原価):400万円
- 在庫の保有期間:常に3ヶ月分の在庫(1,200万円相当)を保有している。
- 売掛金の回収:商品を販売してから、代金が入金されるまで1ヶ月かかる。
- 買掛金の支払い:商品を仕入れてから、代金を支払うまで1ヶ月の猶予がある。
この会社の、ある時点での「運転資金」は、いくら必要になるのでしょうか。
運転資金は、以下の計算式で算出できます。
運転資金 = 売掛金 + 在庫 − 買掛金
これは、 「まだ現金化されていない資産(売掛金・在庫)」から、「まだ支払っていない負債(買掛金)」 を差し引いた金額であり、事業を回し続けるために、常に会社に滞留し、不足している現金の額を示しています。
この計算式に、先ほどの会社の状況を当てはめてみましょう。
- 売掛金:常に1ヶ月分の売上(1,000万円)が、未回収の状態。
- 在庫:常に3ヶ月分の仕入(400万円×3ヶ月 = 1,200万円)が、現金化されずに眠っている状態。
- 買掛金:常に1ヶ月分の仕入(400万円)が、未払いの状態。
運転資金 = 1,000万円 + 1,200万円 – 400万円 = 1,800万円
つまり、この会社は、事業を今の規模で回し続ける限り、常に1,800万円の現金が、どこかに固定されてしまっている(事業に投下されている)状態なのです。帳簿上は毎月利益が出ていても、この1,800万円という「構造的な資金不足」は、解消されません。
この不足分を補うために、外部から調達する必要があるお金。それが 「運転資金」 なのです。
通常の「長期借入」が、資金繰りを楽にしない理由
多くの会社は、この運転資金を、銀行から 「長期借入金」 として調達します。
例えば、先ほどの会社が、不足している運転資金1,800万円を、返済期間5年(60ヶ月)の長期借入金として融資を受けたとします。
融資を受けた直後は、会社の口座に1,800万円が入金され、資金繰りは一時的に楽になります。しかし、翌月から、毎月の元金返済が始まります。
毎月の返済額 = 1,800万円 ÷ 60ヶ月 = 30万円
事業構造が変わらない限り、常に1,800万円の資金が不足している状態は続くのに、そのために借りたお金を、毎月30万円ずつ返済していかなければならないのです。
これでは、またすぐに手元の現金が減っていき、資金繰りは再び苦しくなります。そして、5年後に借入金を完済した時には、また振り出しに戻り、1,800万円が不足している、という元の状態に戻ってしまうのです。
このように、 「常に必要であり続ける運転資金」を、「いずれは完済しなければならない長期借入金」 で賄うことには、構造的な無理があるのです。
究極の解決策:「短期継続融資」という選択肢
この構造的な問題を、根本から解決するために生み出されたのが、 「短期継続融資」 という、特別な融資制度です。
短期継続融資とは?
短期継続融資は、その名の通り、
- 短期:契約期間は1年以内と短い。
- 継続:しかし、1年後の契約期限が来た際に、問題がなければ、元金を返済することなく、契約を「更新(ロールオーバー)」し続けることができる。
という特徴を持っています。
つまり、1,800万円の短期継続融資を受けた場合、
- 毎月の返済: 元金返済はゼロ。 支払うのは、利息のみ。
- 1年後:業績に大きな問題がなければ、再度1,800万円の融資契約を更新する。
という流れになります。
これにより、会社は、常に1,800万円という運転資金を手元に確保したまま、事業を継続することができるのです。毎月30万円という、重い元金返済のプレッシャーから、完全に解放されます。
金融庁も推奨する「本来あるべき姿」
実は、この短期継続融資は、銀行を監督する立場にある 「金融庁」が、「中小企業の運転資金は、この短期継続融資で供給することが望ましい」 と、公式に推奨している、本来あるべき融資の形なのです。
しかし、驚くべきことに、この制度の存在を、多くの中小企業の経営者はもちろんのこと、現場の銀行員、特に若手の担当者でさえも、知らないケースが非常に多いのが実情です。
そのため、銀行側から「短期継続融資はいかがですか?」と提案してくることは、まずありません。
銀行に「短期継続融資」を実行させるための交渉術
では、この非常に有利な融資制度を、どうすれば活用することができるのでしょうか。
その答えは、 「経営者である、あなた自身が、この制度の存在を知り、銀行に提案する」 ことです。
銀行の担当者に、
「弊社の運転資金として、〇〇円を 『短期継続融資』 の形で、ご検討いただけないでしょうか。金融庁のパンフレットでも、中小企業の運転資金として推奨されていると認識しております」
と、具体的な制度名を挙げて、堂々と交渉するのです。
もし、担当者がこの制度を知らなければ、「少し調べて、後日改めてご連絡します」という反応になるでしょう。しかし、金融庁が推奨している公式な制度である以上、銀行は無下に断ることはできません。
この交渉を成功させるためには、
- 自社の運転資金が、いくら必要なのかを、冒頭の計算式で正確に算出しておくこと。
- できれば、一行だけでなく、複数の取引銀行がある中で、 最も関係性の深い「メインバンク」 に、最初に相談すること。
が、重要なポイントとなります。
短期継続融資の、もう一つの絶大なメリット:会社の成長への追随
短期継続融資には、元金返済が不要であること以外にも、もう一つ、非常に大きなメリットがあります。
それは、会社の成長に合わせて、融資額を柔軟に増額できる点です。
事業が成長し、売上が増えれば、それに伴って、必要な運転資金の額も増加していきます。
【例:売上が1,000万円 → 1,500万円に成長した場合】
- 売掛金:1,500万円に増加
- 在庫:1,800万円に増加
- 買掛金:600万円に増加
- 必要な運転資金 = 1,500 + 1,800 – 600 = 2,700万円
売上の増加に伴い、必要な運転資金も、1,800万円から2,700万円へと、900万円も増加しました。
もし、これが長期借入金であれば、既存の1,800万円の返済を続けながら、新たに追加で900万円の融資を申し込む、という、非常に煩雑で、審査のハードルも高い手続きが必要になります。
しかし、短期継続融資であれば、1年後の契約更新のタイミングで、
「事業が成長し、必要な運転資金が2,700万円に増えましたので、今回は、融資額を2,700万円に増額して、更新をお願いします」
と、交渉することができるのです。
このように、会社の成長フェーズに合わせて、タイムリーに、そして柔軟に、資金調達額を調整できる。これも、短期継続融資ならではの、絶大なメリットなのです。
まとめ:「返済不要の融資」を、あなたの会社の武器にする
今回は、多くの中小企業経営者が知らない、しかし、知っているだけで資金繰りを劇的に改善できる、究極の融資制度「短期継続融-資」について、詳しく解説しました。
- 会社の事業活動には、「利益」とは別に、常に一定額の「運転資金」が必要です。
- この「常に必要な運転資金」を、いずれは完済しなければならない「長期借入金」で賄うことには、構造的な無理があります。
- 「短期継続融資」は、元金の返済が原則不要で、利息の支払いだけで借入を維持できる、運転資金の調達に最適な制度です。
- この制度は、金融庁も推奨しているにもかかわらず、銀行側から提案されることは稀です。経営者自身が制度を理解し、銀行に提案する必要があります。
- 短期継続融資は、1年ごとの更新時に、会社の成長に合わせて融資額を増額できるという、非常に大きなメリットも持っています。
「借金は、返さなければならないもの」
その常識を、一度、捨ててください。
短期継続融資は、返済のプレッシャーからあなたを解放し、会社の血液である「現金」を常に潤沢に保ち、あなたが事業そのものに、安心して集中できる環境を与えてくれます。
まずは、あなたの会社の「必要な運転資金」が、一体いくらなのかを、この記事でご紹介した計算式で算出してみてください。そして、その金額を手に、メインバンクの担当者と、新たな交渉のテーブルに着いてみてはいかがでしょうか。
その一歩が、あなたの会社の資金繰りを、そして未来を、大きく変えることになるかもしれません。
最後までお読みいただくありがとうございました。この記事があなたの経営の一助になれば幸いです。