【法人向け】車の購入は新車と中古、どっちが得?節税効果を最大化する購入方法を徹底解説

節税・経費

「会社で車を買おうと思うけど、新車と中古、どっちが節税になるんだろう?」
「一括払いとローン、買い方によって経費の計上額は変わるの?」
「最近よく聞く『残価設定ローン』って、法人にとって本当にお得なの?」

会社の経営者や経理担当者の方にとって、社用車の購入は大きな投資であり、その選択は会社の資金繰りや節税戦略に大きな影響を与えます。特に、「新車か、中古か」「一括か、ローンか」という選択は、多くの方が頭を悩ませるポイントではないでしょうか。

巷では「4年落ちの中古車が節税に有利」といった話もよく耳にしますが、その理由を正しく理解している方は意外と少ないかもしれません。

この記事では、数多くの企業の財務戦略をサポートしてきた専門家の視点から、法人が車を購入する際に、節税効果を最大化するための最適な選択肢について、その根拠となる「減価償却」の仕組みから詳しく、そして分かりやすく解説していきます。

この記事を最後までお読みいただくことで、あなたは以下の知識を手に入れることができます。

  • 節税の鍵を握る「減価償却」の基本的な仕組み(定額法と定率法)がわかります。
  • 新車と中古車で、減価償却のスピードがどのように違うのかを具体的に理解できます。
  • なぜ「4年落ちの中古車」が節税に有利と言われるのか、そのカラクリが明確になります。
  • 「一括」と「ローン」の買い方が、減価償却に与える影響(与えない影響)を知ることができます。
  • 最新の購入方法である「残価設定ローン」の驚くべき節税メリットと、注意すべきデメリットを学べます。

社用車の購入は、単なる移動手段の確保ではありません。それは、会社の未来を見据えた重要な「財務戦略」の一つです。正しい知識を武器に、あなたの会社にとって最も賢い選択をしていきましょう。

すべての基本!節税の鍵を握る「減価償却」の仕組みとは?

新車と中古車の比較をする前に、まず大前提として、節税の鍵となる 「減価償却(げんかしょうきゃく)」 という会計ルールについて理解しておく必要があります。

減価償却とは?

会社が車やパソコン、機械設備といった、長期間にわたって使用する高額な資産(一般的に30万円以上)を購入した場合、その購入費用を購入した年に一括で経費にすることはできません。

その代わりに、その資産が使用できると想定される年数(これを 「法定耐用年数」といいます)にわたって、購入費用を分割して少しずつ経費として計上していくことになります。この会計処理のことを「減価償却」と呼び、その際に経費として計上される費用のことを「減価償却費」 と呼びます。

例えば、法定耐用年数が6年の車を購入した場合、その購入費用を6年間にわたって経費化していく、というイメージです。

なぜ減価償却が必要なのか?

なぜこのような面倒な手続きが必要なのでしょうか。それは、「費用の計上を、その資産が収益を生み出す期間に対応させる」という会計の基本的な考え方(費用収益対応の原則)に基づいているからです。

もし1,000万円の機械を導入した年に全額経費にしてしまうと、その年だけ大赤字になり、翌年以降はその機械が生み出す売上だけが計上されて大きな黒字になってしまいます。これでは、会社の正しい業績を期間ごとに比較することができません。そのため、機械が価値を生み出す期間(耐用年数)に合わせて、費用も分割して計上することで、より正確な経営成績を把握しよう、というのが減価償却の目的です。

減価償却の2つの計算方法:「定額法」と「定率法」

減価償却費の計算方法には、主に2つの方法があります。

  1. 定額法:毎年、均等な額を減価償却費として計上する方法。
    (例:600万円の車を耐用年数6年で償却 → 毎年100万円ずつ経費計上)
    ※主に個人事業主の車両などで用いられます。
  2. 定率法:購入した初期の段階で多くの金額を減価償却費として計上し、年々その額が減少していく方法。
    法人が車両を購入した場合は、原則としてこの定率法で計算します。

定率法は、まだ価値が残っている未償却の残高に対して、一定の償却率を掛けて計算するため、最初の年の償却額が最も大きくなります。

【600万円の新車(耐用年数6年)を定率法で償却する場合のイメージ】

  • 1年目:600万円 × 償却率 → 約200万円を費用計上
  • 2年目:(600万円 – 200万円)× 償却率 → 約133万円を費用計上
  • 3年目:さらに残った金額 × 償却率 → 償却額はさらに減少
  • …と続き、6年間で合計600万円が費用計上されます。

節税という観点から見ると、より早く、より多くの金額を経費として計上できる「定率法」の方が有利です。法人にとっては、この定率法が原則となっていることをまず覚えておきましょう。

【新車 vs 中古】減価償却スピードの違いが節税効果を決める

減価償却の基本を理解したところで、いよいよ本題である「新車」と「中古車」の違いについて見ていきましょう。この2つの最大の違いは、先ほど説明した 「法定耐用年数」 にあります。

新車の場合:耐用年数は「6年」

国税庁は、資産の種類ごとに法定耐用年数を定めています。一般的な乗用車(新車)の場合、その耐用年数は 「6年」 と定められています。(軽自動車は4年、トラックは5年など、車種によって異なります)

つまり、法人が新車を購入した場合、その購入費用を、原則として6年間かけて定率法で減価償却していくことになります。購入初年度に最も多くの経費を計上できますが、全額を経費にするまでには6年という長い時間が必要です。

中古車の場合:耐用年数が短縮される!

一方、中古車の場合は、すでに新車時からある程度の年数が経過しているため、残りの耐用年数を計算し直すことになります。その計算式は少し複雑ですが、結論として、中古車は新車よりも短い耐用年数で減価償却できるという大きなメリットがあります。

【中古車の耐用年数の計算方法(簡便法)】
耐用年数 = (法定耐用年数 − 経過年数) + (経過年数 × 20%)
※計算結果の1年未満の端数は切り捨てます。

この計算式を、巷でよく言われる「4年落ちの中古車」に当てはめてみましょう。

  • 法定耐用年数:6年
  • 経過年数:4年

耐用年数 = (6年 − 4年) + (4年 × 20%)
= 2年 + 0.8年
= 2.8年
→ 端数を切り捨てて「2年」

つまり、4年落ちの中古車は、耐用年数「2年」で減価償却できるのです。

なぜ「4年落ち」が最強なのか?1年で100%償却のカラクリ

耐用年数が「2年」になると、なぜこれほどまでに節税に有利なのでしょうか。その秘密は、先ほど解説した「定率法」の償却率にあります。

耐用年数2年の場合の定率法の償却率は、なんと 「1.000」、つまり100% です。

これは、どういうことかというと、4年落ちの中古車を購入した場合、その購入費用を、理論上は購入したその年に全額、100%費用として計上できるということなのです。

例えば、期首(事業年度の初め)に600万円の4年落ち中古車を購入した場合、その年の決算で 600万円全額を減価償却費として経費にできます。 新車であれば6年かかる費用計上を、たった1年で完了させることができる。これが、「4年落ちの中古車は節税に最強」と言われる最大の理由です。

中古車購入の注意点:購入タイミングが重要!

ただし、この100%償却には一つ、非常に重要な注意点があります。それは、 「月割計算」 の存在です。

減価償却費は、その資産を事業用として使用した月数に応じて計算されます。

  • 期首(例:1月)に購入した場合:12ヶ月間まるまる使用しているので、計算した減価償却費の12/12、つまり全額を計上できます。
  • 決算直前(例:12月)に購入した場合:使用したのは1ヶ月だけなので、減価償却費は1/12しか計上できません。

先ほどの600万円の4年落ち中古車の例で言えば、決算まで残り1ヶ月のタイミングで購入しても、その年に経費にできるのは600万円 × 1/12 = 50万円だけ、ということになってしまいます。

大きな節税効果を狙って中古車を購入する場合は、できるだけ事業年度の早い段階で購入することが絶対条件となります。

【一括 vs ローン】買い方が減価償却に与える影響は?

次に、購入代金の支払い方法、「一括」と「ローン」の違いについてです。これは、多くの方が誤解しているポイントかもしれません。

結論から言うと、車を一括で買おうが、ローンで買おうが、減価償却費の計算には一切影響しません。

減価償却費は、あくまで「車の購入価額」と「耐用年数」に基づいて計算されるものであり、その代金をどのように支払ったかは関係ないのです。

  • 一括払い:購入時に会社のキャッシュが大きく減少する。
  • ローン払い:購入時のキャッシュの減少は少ないが、毎月返済が発生し、金利という追加コストがかかる。

違いは、この 「キャッシュフロー(お金の流れ)」 だけです。利益計算や費用計上(減価償却費)の観点では、両者に違いはありません。

どちらの支払い方法がおすすめか?

よほど資金に余裕がある場合を除き、基本的には 「ローン」での購入をおすすめします。

会社の経営において、手元の現金をできるだけ厚く保っておくことは、何よりも重要です。一括払いでキャッシュを大きく減らしてしまうと、その後に急な業績悪化や不測の事態が起きた際に対応できなくなるリスクがあります。

借入ができるうちは、できるだけ借入を活用し、手元の現金を温存しておく。これが、安定した会社経営の鉄則です。

【最新トレンド】「残価設定ローン」の驚くべき節税メリット

最後に、近年主流となりつつある新しい購入方法、 「残価設定ローン(残クレ)」 について解説します。これは、法人の節税戦略において、非常に面白い効果をもたらします。

残価設定ローンとは?

残価設定ローンとは、数年後(例:5年後)の車の想定下取り価格(=残価)をあらかじめ設定し、その残価を車両本体価格から差し引いた金額を、分割で支払っていくローンの仕組みです。

【例:600万円の新車を5年ローンで購入する場合】

  1. 5年後の残価を200万円に設定します。
  2. 車両価格600万円から残価200万円を引いた、400万円を5年間で分割返済します。
  3. 5年後、車を返却するか、残価200万円を支払って買い取るか、新しい車に乗り換えるかを選択します。

この方法の最大のメリットは、月々の支払い額を低く抑えられることです。しかし、法人にとっては、それ以上に大きな「節税メリット」が隠されています。

支払額以上の経費計上が可能になる!

驚くべきことに、残価設定ローンを利用した場合でも、減価償却費は、残価を差し引く前の車両本体価格、つまり「600万円」をベースに計算できるのです。

つまり、

  • 実際に支払うローン元金:5年間で400万円
  • 経費として計上できる減価償却費:5年間で約500万円(6年耐用年数のうちの5年分)

という、 「支払った金額以上の経費を計上できる」 という、魔法のような現象が起こるのです。これは、手元のキャッシュアウトを最小限に抑えながら、節税効果を最大化できる、非常に強力な手法と言えます。

残価設定ローンの注意点

もちろん、この方法にも注意点はあります。

  • 最終的な処遇:5年後に残価を支払って買い取る場合や、車を返却する際に傷や過走行で追加の支払いが発生した場合など、最終的な処理が複雑になる可能性があります。
  • 金利:通常のローンよりも金利がやや高めに設定されている傾向があります。
  • リースとの比較:似たような仕組みとして「リース」がありますが、契約内容によってはリースの方が有利な場合もあります。総支払額や契約の自由度などを総合的に比較検討することが重要です。

まとめ:あなたの会社に最適な車の買い方とは?

今回は、法人が車を購入する際の、節税を軸とした最適な選択肢について解説しました。

最後に、本日の重要なポイントをまとめます。

  • 節税の基本は「減価償却」:法人の場合、初期に多くの経費を計上できる「定率法」が原則です。
  • 中古車は節税の王道:「4年落ち」の中古車であれば、耐用年数が2年となり、理論上1年で100%の減価償却が可能です。ただし、購入は期首に近いほど効果が高まります。
  • 買い方は減価償却に影響しない:「一括」でも「ローン」でも、経費計上額は同じです。資金繰りの観点からは、手元現金を温存できる「ローン」がおすすめです。
  • 「残価設定ローン」は強力な武器:支払う金額以上の減価償却費を計上できるため、キャッシュフローを改善しながら大きな節税効果を得られます。
  • リースも有効な選択肢:所有にこだわらず、「残価設定リース」などを活用するのも、管理の手間や出口戦略を考えると非常に賢い選択です。

「できるだけ早く、多くの経費を計上して、今期の利益を圧縮したい」と考えるのであれば、期首に4年落ちの中古車を一括またはローンで購入するのが最も効果的です。

一方、「毎月のキャッシュアウトを抑えつつ、継続的に節税効果を得たい」と考えるのであれば、新車または中古車を「残価設定ローン」や「リース」で導入するのが最適な選択となるでしょう。

あなたの会社の現在の財務状況、利益計画、そして資金繰りの状況を総合的に判断し、どの方法が最もフィットするのかを検討してみてください。正しい車の買い方は、あなたの会社の経営をより強く、よりスマートにしてくれるはずです。