【決算直前でも間に合う!】経営者のための駆け込み節税対策10選と、やってはいけないNG節税術

節税・経費

「今期の利益が予想以上に大きくなりそうだ…」
「決算まであとわずかだけど、今からでもできる節税対策はないだろうか?」

多くの経営者や個人事業主が、決算期が近づくにつれて、このような悩みに直面します。年間の利益が確定し、納税額が見えてくるこの時期に、少しでも税負担を軽減したいと考えるのは当然のことです。

「もう手遅れだ」と諦めるのはまだ早いです。実は、決算直前であっても、適切な知識を持って行動すれば、合法的に利益を圧縮し、納税額を抑えることが可能な節税対策は数多く存在します。

この記事では、決算間近でも間に合う、効果的な10個の節税対策を具体的に解説します。さらに、巷で「節税になる」と言われがちでも、実は資金繰りを悪化させるだけでお勧めできない「やってはいけないNG節税術」についても、その理由を詳しく紐解いていきます。

決算直前・節税対策の基本マインド:「投資」か「浪費」かを見極める

節税対策を考える上で、最も重要な心構えは、「その支出が、将来の事業成長に繋がる『投資』なのか、それとも単なる『浪費』なのか」を冷静に見極めることです。

節税の基本は、経費を計上して利益を圧縮することです。しかし、「税金を払うくらいなら、何か使ってしまおう」という安易な考えで、事業に必要のないものを購入するのは、単に会社の現金を減らすだけの浪費に他なりません。

この記事で紹介するのは、あくまで事業の将来を見据えた上で、支払いのタイミングを工夫したり、活用できる制度を漏れなく利用したりすることで、結果として当期の税負担を軽減するという、賢明な経営判断としての節税策です。

【決算直前でも間に合う!】駆け込み節税対策10選

では、具体的にどのような対策が決算直前でも有効なのでしょうか。10個の具体的な方法を見ていきましょう。

1. 来期のための「広告宣伝費」を前倒しで支出する

  • 内容: 来期の集客や売上増加を見込んで、広告の出稿や、パンフレット・チラシなどの販促物の制作・発注を決算期内に行います。
  • 効果: 来期以降の事業成長への「先行投資」でありながら、その費用を当期の経費として計上できるため、効果的な利益圧縮に繋がります。
  • 注意点: 広告の掲載期間やサービスの提供期間が決算期をまたぐ場合は、原則として当期に費用計上できるのは、当期に対応する期間分のみとなります(期間按分)。例えば、12月決算の会社が、12月~翌年2月までの3ヶ月間のWeb広告に300万円を支払った場合、当期の経費にできるのは12月分の100万円だけです。契約内容をよく確認しましょう。

2. 「未払費用」を漏れなく計上する

  • 内容: 決算日時点で、すでにサービスの提供は受けている(または労働が発生している)ものの、支払いが翌期以降になる費用を「未払費用」として、当期の経費に計上します。
  • 具体例(未払給与):
    • 多くの会社では、給与の締め日(例:毎月20日)と支払日(例:毎月25日)が設定されています。
    • 12月決算の会社で、12月20日締めの給与を12月25日に支払った後、12月21日から年末最終営業日までの期間に従業員が働いた分の給与は、支払いが翌年1月になります。
    • この「まだ支払っていないが、当期に労働が発生した分の給与」を、日割りなどで計算し、未払給与として当期の経費に計上することができます。
  • 効果: この処理を行うことで、本来翌期の経費となるはずだった人件費の一部を、当期の経費として前倒しで計上でき、利益を圧縮できます。多くの企業で見落とされがちなポイントです。

3. 「決算賞与」を支給する

  • 内容: 決算で確定した利益の一部を、従業員や役員に賞与として還元します。
  • 効果: 従業員のモチベーション向上に繋がると同時に、多額の賞与を当期の経費(損金)として計上できるため、非常に効果的な利益圧縮策となります。
  • 重要なポイント(未払計上のルール):
    • 決算賞与は、必ずしも決算月中に支払う必要はありません。
    • 決算日までに、支給対象となる全従業員に対して、支給額を個別に通知し、かつ決算日後1ヶ月以内に実際に支払えば、その全額を当期の経費として計上できます。
    • これにより、決算日時点での会社の現金預金残高を多く見せることができ、銀行評価の向上にも繋がるという副次的なメリットもあります。

4. 回収不能な「売掛金」を貸倒損失として処理する

  • 内容: 取引先の倒産や、長期間の支払い遅延などにより、回収が事実上不可能となった売掛金を「貸倒損失」として経費計上します。
  • 注意点:
    • 単に支払いが遅れているだけでは、貸倒損失として認められません。
    • 取引先の法的整理(破産、再生など)の事実や、1年以上取引が停止しており、支払い能力がないことが明らかであるなど、回収不能であることを客観的に証明できる必要があります。
    • 判断が難しいケースも多いため、税理士に相談し、適切な要件を満たしているかを確認することが重要です。

5. 「不良在庫」を廃棄・評価損として処理する

  • 内容: 商品の流行遅れや品質劣化などにより、今後通常の価格で販売することが見込めない在庫(不良在庫)を、廃棄処分したり、評価損を計上したりすることで、当期の経費(損失)として処理します。
  • 効果: 在庫は、会計上「資産」として計上されています。これを処分・評価損計上することで、資産価値の減少を損失として認識し、利益を圧縮できます。また、保管スペースの確保や、管理コストの削減にも繋がります。
  • 注意点: 廃棄した場合は、その事実を証明できる写真や廃棄証明書などを保管しておくことが重要です。

6. 不要な「固定資産」を除却・売却する

  • 内容: 事業で使用しなくなった古いパソコンや機械、使っていないソフトウェアなどを、廃棄(除却)または売却します。
  • 効果:
    • その資産の帳簿価額(未償却残高)を、「固定資産除却損」または「固定資産売却損」として、当期の経費(損失)に計上できます。
    • 使わない資産を処分することで、オフィスや倉庫のスペースを有効活用できます。

7. 「小規模企業共済」に加入・掛金を年払いする

  • 内容: 小規模企業の経営者や役員、個人事業主が加入できる「経営者のための退職金制度」です。
  • 効果:
    • 支払った掛金が全額「所得控除」の対象となり、個人の所得税・住民税を大幅に軽減できます。
    • 掛金は月額最高7万円ですが、決算・年末が近い時期でも、その年1年分の掛金(最大84万円)を前納(年払い)することが可能です。これにより、短期間で大きな所得控除額を確保できます。
  • 結論: 個人事業主や、法人から役員報酬を得ている経営者にとっては、節税と将来の退職金準備を両立できる、非常に有効な駆け込み対策です。

8. 「経営セーフティ共済(倒産防止共済)」に加入・掛金を年払いする

  • 内容: 取引先の倒産に備えるための共済制度です。
  • 効果:
    • 支払った掛金(月額最高20万円)は、その全額を法人の経費(損金)または個人事業の必要経費に算入できます。
    • この制度も年払いが可能で、決算直前に最大240万円を一括で経費計上することができます。
    • 掛金は40ヶ月以上納付すれば、解約時に全額が戻ってくる(その際は収益として課税)ため、将来の資金需要に備えつつ、当期の利益を繰り延べることができます。

9. 「オペレーティング・リース」を活用する

  • 内容: 航空機や船舶、コンテナなどを対象としたリース取引に出資する金融商品です。
  • 効果:
    • 出資した初年度に、出資額の大部分(70%~80%程度)を経費として計上できるため、多額の利益が出た場合の繰り延べ策として有効です。
    • リース期間満了後、出資金はリース物件の売却代金を原資として分配・返還されます(その際は収益として課税)。
  • 注意点: 最低出資単位が数百万~数千万円と高額になることが多く、流動性も低いため、資金に余裕のある企業向けの対策です。

10. 「ふるさと納税」を最大限に活用する

  • 内容: 個人としての節税策ですが、経営者・個人事業主は所得が高い傾向にあるため、その効果は絶大です。
  • 効果:
    • 自己負担2,000円で、控除上限額までの寄付金が、所得税・住民税から控除されます。
    • 返礼品として、食料品や日用品、家電製品などを受け取ることができます。
  • タイミング: 12月31日までに寄付を完了させれば、その年の所得に対する税金から控除されます。まさに、年末の駆け込み対策として最適です。

やってはいけない!資金繰りを悪化させる「NG節税術」

巷で「節税になる」と言われがちな手法の中には、実は資金繰りを悪化させるだけで、長期的に見るとメリットが乏しいものも存在します。

NG節税術1:決算直前の「駆け込みでの車購入」

  • なぜNGか?
    • 多くの方が、「車を買えば、その購入代金が全額経費になる」と勘違いしています。
    • しかし、車は「減価償却資産」であり、その費用は法定耐用年数(新車の普通乗用車なら6年)にわたって分割して経費計上されます。
    • 特に、決算月に車を購入した場合、その年に経費計上できるのは、月数按分された、わずか1ヶ月分の減価償却費だけです。
    • 例:720万円の車を12月決算の会社が12月に購入した場合、その年の経費にできるのは、わずか10万円(720万円÷6年÷12ヶ月)程度です。
  • 結論: 決算直前の車両購入は、多額のキャッシュアウトを伴う一方で、節税効果はほとんどありません。資金繰りを著しく悪化させるだけの、典型的な失敗パターンです。

NG節税術2:短期的な「家賃の年払い(短期前払費用の特例)」

  • 内容: 事務所の家賃など、継続的なサービスの対価を1年分前払いし、その全額を支払った期の経費として計上する手法です。
  • なぜNGか?
    • 節税効果は初年度だけ: 確かに、支払った初年度は、通常よりも多くの経費を計上でき、節税になります。しかし、翌年度は、前年に1年分を支払っているため、新たに経費計上できる家賃はほとんどありません。つまり、単に経費の計上時期を前倒ししているだけであり、2年目以降は節税効果が全くないのです。
    • 資金繰りの悪化: 節税効果(例:支払額の30%程度)以上に、多額の現金(支払額の100%)を前倒しで支出することになるため、手元資金が大幅に減少し、資金繰りを圧迫します。
  • 結論: 倒産防止共済のように「終わり」があり、将来資金が戻ってくるものとは異なり、家賃のような「終わりのない」継続的な費用を前払いしても、資金繰りを悪化させるだけで、長期的なメリットはありません。

まとめ:決算対策は「計画性」が命。賢い節税で、会社の未来を豊かにしよう!

決算直前であっても、打てる手は数多く残されています。重要なのは、パニックにならず、自社の状況を冷静に分析し、最も効果的で、かつ将来の成長に繋がる対策を選択することです。

決算直前 節税対策の成功の鍵

  1. 「投資」か「浪費」かを見極める: 節税のためだけの不要な支出は、単なる浪費。将来の利益に繋がる支出を選びましょう。
  2. キャッシュアウトを伴わない、または少ない対策を優先する: 未払費用の計上や、貸倒損失・除却損の計上など、手元資金を減らさずに利益を圧縮できる方法をまず検討しましょう。
  3. 活用できる制度は漏れなく利用する: 小規模企業共済や倒産防止共済、ふるさと納税など、有利な制度は最大限に活用しましょう。
  4. 資金繰りを悪化させるNG節税術には手を出さない: 決算直前の車購入や、短期的な家賃の年払いは避けましょう。
  5. 専門家(税理士)に相談する: 決算が近づき、利益の見込みが立ってきたら、すぐに顧問税理士に相談し、自社にとって最適な決算対策・節税策の組み合わせを検討してもらうことが、成功への最短ルートです。

節税は、単に税金を安くすることが目的ではありません。会社の資金繰りを良くし、手元に残った現金を、さらなる事業成長や、従業員への還元、そして経営者自身の豊かな未来のために活用していくことこそが、その本質的な目的なのです。

この記事が、決算を前にした経営者の皆様の不安を解消し、賢明な意思決定を行うための一助となれば幸いです。