「売上はそこそこあるのに、なぜか手元にお金が残らない…」
「長年赤字が続いていて、どうすれば黒字化できるのか分からない…」
「経費を削減したいけど、どこから手をつけていいのか見当もつかない…」
会社の経営者であれば、一度はこうした悩みに直面したことがあるのではないでしょうか。赤字経営が続くと、資金繰りは苦しくなり、社員の士気も下がり、会社の未来に暗い影を落としてしまいます。
では、なぜ多くの会社が赤字に陥ってしまうのでしょうか。その原因は様々ですが、実は赤字会社のほとんどは、「売上不足」よりも「無駄な経費の多さ」に根本的な原因があります。
つまり、蛇口から水(売上)がしっかり出ていても、バケツの底にたくさんの穴(無駄な経費)が開いていては、いつまで経っても水は溜まらないのです。逆に言えば、この「無駄な経費」という穴を的確に塞ぐことができれば、多くの会社は驚くほど簡単に黒字化できるのです。
しかし、問題なのは、多くの経営者が「自社のどこに無駄な経費が潜んでいるか」を正しく把握できていないことです。
この記事では、数多くの企業の財務改善を支援してきた専門家の視点から、あなたの会社の利益を蝕んでいる「無駄な固定費」を見つけ出し、劇的に削減するための具体的な10のチェックリストを徹底解説します。
この記事を最後までお読みいただくことで、あなたは以下の知識とアクションプランを手に入れることができます。
- 人件費の最大の聖域「残業代」と「社会保険料」を賢く削減する方法がわかります。
- オフィスの「コピー代」や「家賃」に隠された、驚くべきコスト削減の余地を知ることができます。
- 出張や移動が多い会社必見の、交通費を劇的に安くする裏技がわかります。
- 「なんとなく」で続けている広告や保険が、いかに無駄なコストになっているかを理解できます。
- 毎月支払っている顧問税理士への費用を、コストから「最強の投資」に変える方法を学べます。
固定費の削減は、一度手をつければその効果が永続的に続く、非常にレバレッジの高い経営改善策です。この記事を参考に、自社の経費を一つひとつ見直し、筋肉質で収益性の高い「黒字体質の会社」へと生まれ変わりましょう。
なぜ「固定費」を見直すべきなのか?
経費には、売上の増減に連動して変わる「変動費(材料費や仕入費など)」と、売上に関わらず毎月一定額かかってくる「固定費(人件費や家賃など)」があります。
赤字改善のためにまず着手すべきなのが、この「固定費」です。なぜなら、固定費は 「毎月、当たり前のように払い続けている」 ため、その必要性や妥当性が見直される機会が少なく、無駄が潜んでいる可能性が非常に高いからです。
一度見直して削減に成功すれば、その効果は翌月以降もずっと続きます。売上を10万円上げるのは大変ですが、固定費を10万円削減するのは、知識と行動力さえあれば決して難しくありません。そして、そのインパクトは同じなのです。
それでは、具体的にどの固定費から見直すべきか、10のチェックリストを見ていきましょう。
【固定費削減チェックリスト10選】
1. 残業代:「事前申請制」でダラダラ残業を一掃する
まずメスを入れるべきは、人件費の中でも特に無駄が発生しやすい「残業代」です。
多くの会社では、残業に対する明確なルールがなく、社員が自己判断で残業し、その分の残業代が支払われています。しかし、これでは「ダラダラ残業」が蔓延する温床となってしまいます。
ここで有効なのが、心理学の法則である 「パーキンソンの法則」です。これは、「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」 という法則です。
例えば、本来30分で終わる仕事であっても、「1時間でやっておいて」と指示されれば、人は無意識に1時間かけてその仕事を終わらせようとしてしまうのです。残業もこれと同じで、終業時間の制約がなければ、人はつい時間をかけて仕事をしてしまいがちです。
この問題を解決する最も効果的な方法は、 「残業の事前申請制」 を徹底することです。
- 終業時刻(例:18時)以降に業務を行う場合は、必ず事前に上長(役員など)に申請書を提出する。
- 申請書には、「残業する理由」「具体的な業務内容」「終了予定時刻」を明確に記載する。
- 上長は、その内容を精査し、「その仕事は本当に今日中にやる必要があるのか?」「明日ではダメなのか?」を判断し、承認した場合にのみ残業を許可する。
このルールを徹底するだけで、社員の意識は「時間内に仕事を終わらせよう」という方向に劇的に変わります。不要な残業は激減し、残業代という大きな固定費を大幅に削減することができるのです。
2. 人件費(社会保険料):見えないコストを削減する
人件費の中で、給料と同じくらい大きなウェイトを占めるのが「社会保険料」です。これは、会社と社員が折半で負担しており、会社の経営を重く圧迫しています。
この社会保険料を、合法的に削減できる方法はいくつか存在します。例えば、給与体系を見直し、賞与の比率を高めることで年間の社会保険料をコントロールする方法や、後述する選択制DC(iDeCo+)のような制度を活用する方法などです。
人件費は最大の固定費であり、その中の社会保険料は「見えないコスト」として経営を圧迫します。この部分にメスを入れることは、財務体質改善に直結します。詳細な削減方法については、専門的な知識が必要となるため、社会保険労務士や税理士などの専門家に相談してみることをお勧めします。
3. コピー代(複合機):メーカーと契約内容の見直しで半額以下も夢じゃない
オフィスの片隅にある大きな複合機。毎月、リース料とカウンター料金(印刷枚数に応じた料金)を支払っているかと思いますが、その金額を「こんなものだろう」と諦めていませんか?
実は、このコピー代は、見直しによって劇的に削減できる可能性を秘めたコストの代表格です。
- ポイント①:メーカーを変える
一般的に、富士フイルム(旧富士ゼロックス)やリコーといった大手メーカーの複合機は、品質が高い分、コストも高めに設定されています。一方で、キヤノンや京セラといったメーカーは、品質も十分でありながら、比較的リーズナナブルな価格設定で知られています。メーカーを乗り換えるだけで、月々のコストが大幅に下がるケースは少なくありません。 - ポイント②:カウンター料金を交渉する
「モノクロ1枚あたり〇円」「カラー1枚あたり〇円」というカウンター料金は、交渉によって引き下げることが可能です。販売代理店は、当然ながら少しでも高い料金で契約したいと考えています。複数の代理店から相見積もりを取り、料金を比較検討し、粘り強く交渉することで、驚くほど料金が下がることもあります。
あなたの会社が今支払っているカウンター料金は、他社と比較して本当に適正な価格でしょうか?一度、契約書を見直し、相見積もりを取ってみることを強くお勧めします。
4. 家賃:交渉すれば下がるのが当たり前
事務所や店舗の「家賃」も、聖域ではありません。特に、長年同じ場所で事業を続けている場合、家賃交渉の余地は十分にあります。
なぜなら、建物の価値は、年月の経過とともに古くなり、下がっていくのが自然の摂理だからです。周辺の新しい物件の家賃相場と比較して、「もう少し下げてもらえませんか?」と交渉するのは、決して不当な要求ではありません。
「大家さんとの関係が悪くなるのが心配…」という方もいますが、オフィスの賃貸契約であれば、大家さんと顔を合わせる機会はほとんどないはずです。また、家賃交渉を代行してくれる専門のプロフェッショナル業者も存在します。彼らは成功報酬で動くことが多く、それはつまり「家賃は下げられるのが当たり前」だと知っているからです。
毎月支払う大きな固定費である家賃。数パーセントでも下がれば、年間のインパクトは絶大です。
5. 交通費:「福利厚生サービス」の活用で経費を大幅カット
出張や営業での移動が多い会社にとって、新幹線代、飛行機代、高速代、ガソリン代といった交通費は、悩みの種の一つです。この交通費を、あるサービスを使うことで劇的に安くすることができます。
それが、法人向けの福利厚生サービスです。
月々の会費を支払うことで、社員が様々なサービスを割引価格で利用できる仕組みですが、中には交通費や宿泊費の割引に特化した強力なサービスが存在します。(例:「めちゃ得」など)
これらのサービスを活用すると、
- 新幹線や飛行機のチケットが割引になる
- 全国のホテルやレンタカーが格安で利用できる
- レジャー施設の割引など、社員のプライベートも充実する
といったメリットがあります。月々の会費を払っても、交通費の削減額ですぐに元が取れてしまうケースがほとんどです。出張が多い会社は、導入しない手はありません。
6. 支払利息:銀行も競争相手。交渉で金利は下がる
銀行からの借入金の「支払利息」。これも、銀行から提示された利率をそのまま受け入れてはいませんか?
銀行もまた、利益を追求し、他の銀行と競争している一企業です。金利は交渉によって下げることが可能です。
最も効果的な方法は、コピー代と同様に 「相見積もり」 です。複数の銀行に融資の相談を持ちかけ、最も良い条件を提示してきた銀行の金利を、他の銀行に伝えて交渉するのです。
「A銀行さんからは〇〇%という条件が出ていますが、御行ではいかがでしょうか?」
こうすることで、銀行間に競争原理が働き、より低い金利を引き出せる可能性が高まります。
「お世話になっている銀行にそんなことは言えない…」と思うかもしれませんが、銀行側もこうした交渉には慣れています。会社の財務を守るため、臆することなく交渉に臨みましょう。
7. 生命保険料:「貯蓄性保険」は本当に必要か?
会社の節税対策として、経営者を被保険者とする「養老保険」や「長期平準定期保険」といった、貯蓄性の高い生命保険に加入している会社は多いです。
確かに、支払った保険料の一部または全額を損金に算入でき、将来の退職金の原資になるというメリットはあります。
しかし、冷静に考えてみてください。その保険は、本当に「保障」として必要でしょうか?それとも、「節税」という目的のためだけに、効果の薄い金融商品にお金を払い続けているだけではないでしょうか?
多くの場合、これらの貯蓄性保険は、保障内容に対して保険料が割高であり、運用利回りも決して高くありません。節税効果があるように見えても、解約時の返戻金は雑収入として課税されるため、税金の「繰り延べ」に過ぎないケースがほとんどです。
もし、明確な目的(退職金準備など)がなく、「なんとなく」で加入しているのであれば、思い切って解約し、その分の資金を事業投資や他のコスト削減効果の高い施策に回した方が、よほど会社の成長に繋がります。
8. 広告宣伝費:効果測定なき広告は「ドブにお金」
電柱広告、駅の看板、地方の情報誌への掲載…。長年、惰性で続けている広告はありませんか?
広告宣伝費は、使い方を間違えれば、最も無駄になりやすい経費の一つです。特に、効果測定が難しいオフラインの広告は要注意です。
- 「その広告を見て、何件の問い合わせがありましたか?」
- 「その広告をやめたら、本当に売上は下がりますか?」
これらの問いに、明確なデータをもって答えられない広告は、即刻見直すべきです。
多くの会社が、長年続けていた広告をやめても、売上には全く影響がなかった、というケースは後を絶ちません。経営者は「うちの会社の看板が街にある」という自己満足に陥りがちですが、一般の人はその広告をほとんど見ていません。
すべての広告は、必ず費用対効果(ROI)を検証し、効果のないものからは勇気をもって撤退しましょう。
9. 各種団体会費:その「付き合い」は本当に仕事に繋がっているか?
経営者は孤独な存在です。情報交換や人脈作りのため、商工会議所、法人会、ロータリークラブ、ライオンズクラブなど、様々な経営者団体に所属している方は多いでしょう。
もちろん、そこでの出会いが本当に大きなビジネスに繋がっているのなら、その会費は有効な投資です。しかし、実際にはどうでしょうか。
- 「ほとんど会合に参加できていないのに、会費だけ払い続けている」
- 「人脈は広がったが、具体的な仕事には全く繋がっていない」
- 「脱退するのが気まずくて、惰性で続けている」
もし、このような状態であれば、その会費は無駄なコスト以外の何物でもありません。本当に価値のある付き合いだけを残し、効果の薄い団体からは脱退する勇気も必要です。
10. 税理士費用:コストを「投資」に変える活用術
最後のチェック項目は、毎月支払っている「税理士の顧問料」です。
税理士は、使い方次第で、経営における最強のパートナーになり得ます。財務分析、資金繰り改善、節税対策、融資支援など、会社の成長に直結する様々なアドバイスを提供してくれる存在です。
しかし、日本の経営者の8割以上が、税理士を全く活用できていないのが実情です。
- 「年に一度、決算申告の時しか会わない」
- 「毎月顧問料は払っているが、何もアドバイスをもらったことがない」
- 「試算表を依頼しても、出てくるまでに1ヶ月もかかる」
このような状態であれば、その顧問料は非常にもったいないと言わざるを得ません。月2万円の安い顧問料でも、何も活用できなければ、それは年間24万円をドブに捨てているのと同じです。それならば、月5万円を払ってでも、親身に相談に乗ってくれ、会社の成長に貢献してくれる税理士と付き合った方が、はるかに高いリターンを得られます。
今、契約している税理士に、この記事で紹介したような固定費削減の相談をしてみてください。もし、親身になって一緒に考えてくれないのであれば、それは税理士の変更を検討すべきサインかもしれません。
まとめ:無駄をなくし、筋肉質な「黒字体質」の会社へ
今回は、赤字経営から脱却し、利益を最大化するための「固定費削減10のチェックリスト」を解説しました。
赤字のほとんどは、売上不足ではなく、気づかぬうちに膨れ上がった「無駄な経費」が原因です。毎月当たり前のように支払っているコストの中にこそ、改善のヒントは隠されています。
今日ご紹介した10の項目を一つひとつ見直し、自社に当てはまるものがないかを確認してみてください。
- 残業代
- 人件費(社会保険料)
- コピー代
- 家賃
- 交通費
- 支払利息
- 生命保険料
- 広告宣伝費
- 各種団体会費
- 税理士費用
これらの「穴」を一つずつ塞いでいくことで、あなたの会社のバケツには着実に水が溜まり始め、盤石な財務基盤を持つ「黒字体質の会社」へと生まれ変わることができるはずです。まずは、できるところから、今日から行動を始めてみましょう。
最後までお読みいただくありがとうございました。この記事があなたの経営の一助になれば幸いです。