「個人事業主として利益が出てきたけど、税金が高くて手元にお金が残らない…」
「法人化すれば、もっと効果的な節税ができるって本当?」
「会社と社長、両方の資産を最大化するための、具体的な節税方法が知りたい」
個人事業主として事業が軌道に乗り、利益が増えてくると、誰もが直面するのが 「税金」 という大きな壁です。所得が増えれば増えるほど、所得税の税率は上がり、手取り収入は伸び悩んでしまいます。
この壁を突破し、事業を次のステージへと進めるための、極めて強力な選択肢。それが、 「法人化(法人成り)」 です。
法人化することで、個人事業主では利用できなかった、数多くの 「税制上の優遇措置」 を活用できるようになり、支払う税金を、合法的に、そして劇的に、圧縮することが可能になるのです。
この記事では、
- 会社設立前の支出さえも経費に変える「創立費」の魔法
- 社長の「非課税のお小遣い」を生み出す「出張旅費規程」の活用術
- 自宅の家賃の9割を経費にする「役員社宅」という究極の節税策
- 親族への給与支払いで、世帯全体の手取りを増やす方法
- 会社の利益を、役員賞与として合法的に経費にする「事前確定届出給与」
- 赤字を、過去に払った税金を取り戻す「武器」に変える「欠損金の繰戻し還付」
- 節税しながら、万が一に備える「倒産防止共済」の賢い使い方
といった、法人だからこそできる、8つの最強節税スキームについて、その仕組みから、具体的な活用法、そして注意点までを、徹底的に、そして分かりやすく解説します。
この記事は、単なる節税テクニックの紹介ではありません。それは、あなたの会社の利益と、あなた自身の資産を、不必要な税金から守り抜き、事業の成長のために再投資していくための、「戦略的なタックスプランニング」の教科書です。この記事を最後までお読みいただき、法人という器を最大限に活用するための、知識の武器を手に入れてください。
法人化節税の基本戦略:なぜ、法人は節税に有利なのか?
まず、なぜ法人化することが、節税に繋がるのでしょうか。
その根本的な理由は、 「利益のコントロールのしやすさ」と「経費として認められる範囲の広さ」 にあります。
- 利益のコントロール:法人税は、利益が800万円を超えると税率がほぼ一定になるため、役員報酬などを活用して利益を調整することで、高い税率が適用されるのを避けることができます。
- 経費の範囲:個人事業主では生活費と見なされてしまうような支出も、法人であれば、会社の「経費」として、より柔軟に計上することが可能になります。
この2つの大きなメリットを、具体的な8つの節税スキームを通じて、見ていきましょう。
8つの最強節税スキーム
1. 創立費:開業前の支出を、未来の「節税カード」に変える
事業を始める前には、登記費用や、セミナー参加費、打ち合わせの飲食代など、様々な準備費用がかかります。これらの 「会社設立前にかかった費用」は、「創立費」 として、後から会社の経費にすることができます。
そして、この「創立費」の最大の魅力は、その経費計上のタイミングを、経営者が自由に決められる点にあります(任意償却)。
【戦略的な活用法】
創立費は、すぐに経費にする必要はありません。一旦、会社の「資産」として計上しておき、将来、会社の利益が大きく出た年に、満を持して経費として計上するのです。
- 設立1年目:まだ利益が少ないため、創立費の償却は0円。
- 5年目:事業が軌道に乗り、大きな利益が出た。ここで、溜めておいた創立費を一気に経費計上し、法人税を圧縮する。
このように、創立費は、 いつでも使える「節税の切り札」 として、会社の利益を調整するための、強力な武器となるのです。開業前の領収書は、1枚たりとも無駄にせず、必ず保管しておきましょう。
2. 出張旅費規程:社長に「非課税のお小遣い」を支給する
出張旅費規程は、正しく設計すれば、会社と社長の双方に、絶大なメリットをもたらす制度です。
この規程を設けることで、出張の際に、実費の交通費や宿泊費とは別に、 「日当」 を支給することができます。
【この制度の“魔法”】
- 会社側:支給した日当は、 全額、会社の経費(損金) になります。
- 社長(受け取る側):受け取った日当は、給与とは見なされず、所得税も社会保険料もかかりません。
そして、もし、出張中に実際に使った食事代などの雑費が、支給された日当よりも安かった場合、その 差額は、まるまる社長個人の「非課税のお小遣い」 となるのです。
税務調査で否認されない、社会通念上、妥当な範囲で、日当や宿泊手当の額を最大化する。これが、社長の手取りを、合法的に増やすための、極めて有効なテクニックです。
3. 役員社宅:自宅の家賃の「9割」を経費にする
個人事業主の場合、自宅兼事務所の家賃を経費にできますが、その割合(家事按分)には、厳しい制限があります。
しかし、法人であれば、この家賃の経費化を、劇的に、そして合法的に、拡大することができます。それが、 「役員社宅」 制度の活用です。
【役員社宅の仕組み】
- 社長が住むマンションや家を、個人ではなく、会社名義で賃貸契約します。
- 会社が、大家さんに家賃を全額支払います。
- 社長は、その社宅に住む対価として、会社に対して、税務上定められた、ごく僅かな家賃(賃料相当額)を支払います。
- 会社が支払った家賃と、社長から受け取った家賃との差額は、全額、会社の 経費(福利厚生費など) となります。
物件の広さなどの条件にもよりますが、この仕組みを使うことで、多くの場合、家賃の8割~9割以上を、会社の経費として計上することが可能になります。
社長は、実質的に、ごく僅かな自己負担で、良質な住環境を手に入れることができ、会社は、大きな節税効果を得ることができる。まさに、究極の節税スキームの一つです。
4. 家事関連費:プライベート支出との境界線を、有利に設定する
個人事業主にとって、最も頭を悩ませるのが、事業の経費と、プライベートな生活費との 「線引き(家事按分)」 です。
しかし、法人化することで、この線引きのハードルは、ぐっと下がります。
なぜなら、法人は、個人とは、明確に別人格だからです。
法人が契約し、法人が支払った費用は、原則として、すべて「会社の経費」として扱われます。
例えば、スマートフォンを法人名義で契約すれば、その通信費は、会社の経費です。(もちろん、それが事業活動のために使われている、という大前提は必要です)
個人事業主のように、「この通信費のうち、プライベートでの使用割合は何パーセントか?」といった、煩雑な按分計算の必要性が、大幅に軽減されるのです。
5. 親族の非常勤役員:所得を分散し、世帯の手取りを最大化する
あなたの事業を、陰で支えてくれている、配偶者や親、子供はいませんか?
法人化すれば、その 親族を、会社の「非常勤役員」として迎え入れ、その働きに見合った「役員報酬」 を支払うことができます。
【この戦略のメリット】
- 所得の分散:社長一人に所得が集中すると、高い累進税率が適用されます。親族に報酬を支払うことで、所得を分散させ、世帯全体で適用される税率を引き下げ、トータルの納税額を圧縮することができます。
- 法人税の軽減:親族に支払った役員報酬は、当然、会社の経費となり、法人税の負担を軽減します。
- 相続対策:親族に、計画的に資金を移転することで、将来の相続税対策にも繋がります。
もちろん、その親族が、役員として、名目だけでなく、実質的に会社の経営に関与していること、そして、その報酬額が、業務内容に見合った、社会通念上、妥当な金額であることが、大前提となります。
6. 役員賞与の事前確定届出:利益を「賞与」に変えて、賢く節税
役員への賞与(ボーナス)は、原則として、会社の経費にすることはできません。
しかし、 「事前確定届出給与」 という制度を活用すれば、この賞与を、合法的に経費化することが可能です。
【事前確定届出給与の仕組み】
- 事業年度が始まる前に、 「いつ、誰に、いくらの賞与を支払うか」 を、あらかじめ決定します。
- その内容を、「事前確定届出給与に関する届出書」として、税務署に提出します。
- そして、届け出た通りの日付に、届け出た通りの金額を、正確に支給します。
この手続きを踏むことで、役員賞与は、全額、会社の経費として認められます。
決算月の直前に、予想以上に利益が出そうになった際に、その利益を、役員賞与として支給し、法人税を圧縮する、という、非常に強力な利益調整弁として、活用することができるのです。
7. 欠損金の繰戻し還付:赤字を、過去の税金を取り戻す「武器」に
会社経営には、良い時もあれば、悪い時もあります。もし、あなたの会社が、今期、 赤字(欠損金) になってしまった場合、諦める必要はありません。その赤字は、 過去に支払った税金を取り戻すための「武器」 になり得るのです。
それが、 「欠損金の繰戻し還付」 制度です。
【繰戻し還付の仕組み】
- 前期:黒字で、1,000万円の法人税を納めていた。
- 今期:業績が悪化し、3,000万円の赤字(欠損金)が発生した。
この場合、今期の赤字を、前期の黒字にさかのぼって相殺し、前期に支払い過ぎていた法人税の一部(または全額)を、還付してもらうことができるのです。
これは、資金繰りが厳しい赤字のタイミングで、まとまった現金を、国から取り戻すことができる、非常に心強い制度です。利用するためには、確定申告書を、提出期限内に提出することが条件となります。
8. 倒産防止共済(経営セーフティ共済):節税しながら、未来のリスクに備える
倒産防止共済は、取引先が倒産した際の連鎖倒産を防ぐための、国の共済制度です。しかし、その真の魅力は、 最強クラスの「節税効果」 にあります。
- 掛金は、全額が会社の経費(損金)になる。(最大で月20万円、年間240万円)
- 加入から40ヶ月以上が経過すれば、解約時に、支払った掛金の全額が戻ってくる。
つまり、実質的にノーリスクで、最大で年間240万円もの利益を、将来に繰り延べることができるのです。
利益が多く出た年に加入し、役員の退職金支払いなど、大きな経費が必要となる年に解約して、利益を相殺する。このように、会社の利益を、平準化するための、極めて有効なツールとして活用できます。
まとめ:法人化は、経営者の知恵が試される、最強の節税ツール
今回は、法人化することで可能になる、8つの具体的な節税スキームについて、詳しく解説しました。
これらの制度は、それぞれが強力な効果を持つと同時に、組み合わせることで、その効果を、さらに何倍にも高めることができます。
しかし、その一方で、どの制度を、どのタイミングで、どのように活用するのが、自社にとって最適なのか。その判断には、会社の事業規模、利益水準、そして将来のビジョンを総合的に考慮する、高度な専門知識と、戦略的な視点が不可欠です。
法人化には、設立コストや、経理業務の複雑化といった、デメリットも確かに存在します。しかし、それを補って余りある、絶大な節税メリットが、そこには眠っているのです。
そのメリットを、最大限に引き出すための、最も信頼できるパートナー。それが、税理士です。
あなたの会社の状況を深く理解し、これらの制度を、最適に組み合わせた、オーダーメイドの節税戦略を、共に考え、実行してくれるでしょう。
ぜひ、この記事を参考に、あなたの会社を、より強く、より収益性の高い、そして、未来永劫、発展し続ける企業へと、進化させてください。
最後までお読みいただくありがとうございました。この記事があなたの経営の一助になれば幸いです。