法人化における節税方法

節税・経費

法人化における節税方法には、いくつか有効な手段があります。各種見ていきましょう。

1. 創立費

「創立費」についてですが、会社設立前にかかった費用は、後から経費として計上できます。この費用は、会社設立後1年目でも5年目でも自由に計上可能で、利益が出た年に計上すれば税金の負担を軽減することができます。また、設立前に必要な備品を購入し、経費計上のタイミングを調整するのが有効です。

創立費の節税の仕組み

  1. 全額を損金算入できる
    • 創立費は、原則として資産に計上されますが、法人税法上は設立初年度に一括して損金として計上することも可能です。これにより、初年度の課税所得を減らし、法人税の負担を軽減できます。
  2. 任意償却による利益調整
    • 一括で損金計上する代わりに、数年間にわたって任意に償却することも可能です。例えば、利益が多く出た年に償却を進めることで、法人税を抑えることができます。これにより、経営状況に応じた利益調整ができ、税負担の平準化が可能です。
  3. 初期費用の負担を軽減
    • 創立費を経費計上することで、会社設立直後の資金負担を和らげ、運転資金を温存する効果もあります。

創立費に含まれる代表的な費用

  • 会社設立のための登記手続き費用
  • 定款認証費用(公証役場での手続き)
  • 司法書士・行政書士の報酬
  • 事務用品費、通信費、交通費(設立準備の活動に関するもの)

注意点

  1. 設立後の支出は創立費にならない
    • 会社設立後に発生した費用は「開業費」として扱われ、別管理となります。創立費として損金算入するためには、設立登記前の支出であることが条件です。
  2. 適切な証拠書類の保管が必要
    • 創立費として経費計上するためには、領収書や支払記録をきちんと保管し、税務調査に対応できるようにしておくことが重要です。
  3. 償却計画の策定
    • 任意償却する場合は、経営計画に合わせてどの年にどれだけの金額を償却するか、計画的に管理する必要があります。
  • 定義と重要性: 会社設立前にかかった費用を経費として計上でき、後から自由に計上が可能。
  • 経費計上のタイミング: 設立後1年目でも5年目でも利益が出た年に計上し、税負担を軽減。
  • 活用方法: 設立前に必要な備品を購入し、経費計上のタイミングを調整することが推奨される。

2. 旅費規定

「旅費規定」を作成することで、出張費を会社規定で定め、宿泊手当などを追加することで、個人の収入に転化できる仕組みがあります。出張が多い場合には、この規定を活用することで節税効果を大きくすることができ、税務調査でも適正な規定を作ることで否認を防ぐことが重要です。

節税の仕組みとメリット

  1. 旅費・日当の経費処理がしやすくなる
    • 適切な旅費規程に基づいて支給される交通費や宿泊費、日当は全額を経費(損金)として計上でき、法人税の課税所得を減らすことが可能です。
  2. 日当の所得税・社会保険料非課税
    • 規程に基づく日当は従業員や役員の給与には含まれないため、所得税や社会保険料の対象外になります。これにより、企業と従業員双方の負担が軽減されます。
  3. 旅費規程による支給額の安定化
    • 社内で旅費規程を設けることで、従業員間の不公平を防ぎ、一律の支給基準を守ることができます。税務署からも、規程に基づく支給であれば不当な経費と見なされにくくなります。

具体的な旅費規程の内容例

  • 交通費:新幹線や飛行機のチケット代、タクシー代など
  • 宿泊費:出張先での宿泊費(上限額を設定することも可能)
  • 日当:1日あたりの出張手当として支給(出張地や日数によって変動)

運用時の注意点

  1. 規程の内容を明確に定めること
    • 旅費規程には、支給対象の出張条件や交通手段、支給額の基準を詳細に記載し、不明確な支出がないようにしましょう。
  2. 実際の運用と規程の一致が重要
    • 規程に沿った運用を徹底しなければ、税務調査で否認され、給与扱いになるリスクがあります。
  3. 役員に支給する場合の注意
    • 役員への日当が高額すぎると税務上認められないことがあるため、常識的な範囲の支給を心がけましょう。
  • 作成: 出張に関する旅費を会社の規定で定め、宿泊手当などを設定可能。
  • メリット: 出張が多い場合、旅費規定を活用して節税が可能。
  • 税務調査への対応: 税務調査で否認されないよう、規定を設定することが重要。

3. 役員社宅

「役員社宅」を利用する場合、会社名義でマンションを契約すれば、経費の大部分を削減できます。特に99㎡以下の物件では、約8割から9割が経費として計上でき、役員の生活費の節約にもつながります。

節税のメリット

  1. 法人税の圧縮
    • 役員社宅の家賃や管理費、修繕費などは法人の経費(損金)として計上できるため、法人税の負担を軽減できます。
  2. 役員の個人負担が軽減
    • 役員は、住宅の賃貸料として税務上決められた一定の負担額を支払えば済み、通常の賃貸物件を借りるよりも大幅に支出を抑えられます。この負担額は一般的に時価よりも低く設定されており、節税効果が高まります。
  3. 給与増額と異なるメリット
    • 役員報酬の増額は所得税や社会保険料の負担増に直結しますが、役員社宅は実質的な報酬アップ効果を持ちながらも、給与としての課税対象にならないため、所得税や社会保険料を節約できます。
  • 経費計上: 会社契約のマンションに住むことで、経費を削減できる。
  • 経済的メリット: 給与からの税金や社会保険を軽減できる。
  • 活用法: 生活水準を維持しつつ節税が可能な物件を選ぶことが重要。

4. 家事関連費

「家事関連費」は、仕事とプライベートで共有する費用、例えば携帯代や光熱費などを経費として計上する方法です。法人化することで、個人事業主よりも経費計上が簡単になり、プライベートな費用もより自由に経費として扱うことができます。

節税の仕組みとメリット

  1. 一部を経費として計上できる
    • 自宅兼事務所などのケースでは、家賃、電気代、インターネット料金の一部を業務に関わる費用として計上できます。これにより、課税所得を減らし法人税や所得税の負担を軽減できます。
  2. 按分の活用
    • 家事関連費を経費として認めてもらうためには、業務とプライベートの使用割合を按分しなければなりません。たとえば、自宅面積の一部を事務所として使う場合、その使用割合に応じて家賃や光熱費を按分します。業務の利用時間や面積の記録を残すことで、税務調査でも適正な経費処理が証明できます。
  3. 通信費や交通費の一部活用
    • スマートフォンやインターネットの料金も、業務に使用した分だけ経費として計上できます。たとえば、プライベートと業務で50%ずつ利用する場合、50%を経費として処理することで節税効果が期待できます。

注意点とリスク

  • 過度な経費計上は否認される可能性
    • プライベートな費用を不自然に経費化すると、税務署に否認され、ペナルティを課されるリスクがあります。あくまで業務に関わる部分のみを経費計上することが求められます。
  • 適切な記録が必要
    • 按分率の根拠を明確に示すため、業務に使用した日数、面積、時間などの記録を残しておくことが大切です。
  • 個人事業主や法人のルールの違い
    • 個人事業主では按分の対象が広く認められやすい一方、法人では経費計上の基準が厳しくなるため、適正な処理が必要です。
  • 定義: プライベートと仕事の両方に使用する費用を経費として計上できる。
  • 法人化のメリット: プライベート要素を含む費用も全額経費として計上可能。
  • 経費計上のルール: 法人化により経費計上が簡素化される。

5. 親族の非常勤役員

「親族の非常勤役員」として家族を雇用することで、給与を分散し、所得税の負担を軽減する方法もあります。特に法人化により、家族を役員にすることが簡単になるため、節税効果を高めることが可能です。

節税の仕組みとメリット

  1. 所得分散効果
    • 非常勤役員に親族を登用し、給与を支払うことで所得を分散できます。法人から役員報酬を支給することで、個人としての所得を配分し、所得税の累進課税の影響を抑えられます。高所得者1人に集中するよりも、親族に分散することで税率の低い範囲で課税が可能になります。
  2. 社会保険料の軽減
    • 非常勤役員の場合、報酬額が抑えられることが多く、一定の条件下では社会保険の対象外になることもあります。これにより、法人と個人の社会保険料負担を軽減することができます。
  3. 法人税の圧縮
    • 親族に支払った役員報酬は、法人の経費(損金)として計上することができるため、法人税の負担を軽減します。適切な報酬額の設定により、税務署からの否認を避けつつ、節税効果を高めることができます。

注意点とリスク

  • 不相当に高い報酬は否認される可能性
    • 税務署は、親族への報酬が相場を超える場合や業務内容と見合っていない場合、経費として認めないことがあります。非常勤役員の業務内容と支給額が適正であることを示すために、職務内容や勤務実績の記録が重要です。
  • 役員報酬の適切な設定が必要
    • 税務調査で「不自然な報酬」とみなされないよう、他の役員とのバランスや市場相場に基づいて報酬額を決定する必要があります。
  • 利益相反行為に注意
    • 親族を役員に登用する場合、利益相反のリスクがあるため、ガバナンスの観点からも透明性を確保することが重要です。
  • 活用: 家族を非常勤役員として雇用し、給与を支払うことが可能。
  • 所得税の軽減: 給与を分散させることで所得税率を下げられる。
  • 法人化の利点: 株式会社設立は1人でも可能で、家族を役員にするのが容易。

6. 役員賞与の事前確定届出

「役員賞与の事前確定届出」では、事前に税務署に届け出をすることで、役員への賞与も経費として計上できます。これにより、利益が出た年に賞与を支払うことで、利益を圧縮し、税負担を減らすことができます。

節税の仕組み

  1. 損金算入の効果
    • 事前に税務署へ役員賞与の支給額と支給時期を届け出し、その計画に従って支給することで、支給額を全額経費(損金)に計上できます。これにより、課税所得を減らし、法人税の負担を軽減します。
  2. 利益調整の活用
    • 事業年度末に利益が大きく出た場合、その一部を役員賞与として支給することで、法人税を圧縮することができます。計画的に利益を調整するために有効な手段です。
  3. 社会保険料の負担軽減
    • 給与や賞与を分けて支給することで、社会保険料の調整も可能です。特に、役員報酬を一部賞与として振り分けると、報酬部分にかかる社会保険料を減らすことができます。

手続きと注意点

  • 届け出期限:決算期の1か月以内に、所管の税務署へ「事前確定届出書」を提出する必要があります。
  • 支給時期の厳守:届け出た金額と支給日を正確に守らないと、全額が損金不算入(経費にできない)となるため、計画通りに実行することが重要です。
  • 届出後の変更不可:一度届け出た内容は変更ができません。そのため、支給額や支給日を慎重に検討する必要があります。
  • 経費計上: 事前届出で役員賞与を経費として計上できる。
  • メリット: 利益が出た年に役員賞与を支払い、利益圧縮が可能。
  • 手続きの重要性: 届出がないと賞与を経費に計上できない。

7. 欠損金の繰戻し還付

「欠損金の繰戻し還付」制度では、前年度に黒字で法人税を支払ったが、今年度が赤字になった場合、その支払った法人税を還付してもらうことができます。還付手続きは黒字決算から1年以内に行う必要があります。

仕組みと適用条件

  • 企業がある期に赤字を出した場合、その欠損金を前期の黒字と相殺することができます。
  • これにより、前期の法人税額の一部または全額が還付されます
  • 中小企業(資本金1億円以下の法人)に適用される制度であり、設立から一定年数以内の企業でも条件を満たせば利用可能です。

節税のメリット

  1. 資金繰りの改善
    • 赤字が発生したタイミングで、前期に納めた法人税が戻るため、資金不足を早期に解消できます。特に経営が厳しい時期には、還付された資金を運転資金に充てることで、企業の存続に大きく貢献します。
  2. 繰戻し還付と繰越控除の選択
    • 赤字の処理には、繰戻し還付繰越控除の2つの方法があります。
      • 繰戻し還付:今すぐ資金を確保したい場合に有効です。
      • 繰越控除:翌期以降の黒字と相殺し、法人税負担を軽減します。
        企業の状況に応じてどちらを選択するかが重要です。
  3. 納税負担の最適化
    • 赤字発生時の法人税還付により、必要以上の納税を防ぐことができ、将来の経営戦略に余裕を持たせられます。

注意点

  • 適用できる期間が限られており、欠損金を前期にさかのぼって還付を受けるためには、申告期限内に手続きを行う必要があります。
  • 一度繰戻し還付を選択すると繰越控除は適用できなくなるため、どちらが有利か慎重に検討しましょう。
  • 制度: 昨年黒字で今年赤字の場合、前年の法人税を還付できる。
  • 還付の具体例: 前年3000万の利益で1000万の法人税を支払った場合、今年の赤字で還付可能。
  • 手続きの注意点: 還付手続きは黒字決算から1年以内に行う必要がある。

8. 倒産防止共済(経営セーフティ共済)

倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、中小企業や個人事業主が取引先の倒産リスクに備えるための制度です。取引先が倒産した場合に、共済金の貸付を受けられることで資金繰りを安定させる効果があります。この制度は独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営しています。

「倒産防止共済」への加入により、月額20万円まで、年間240万円を経費として計上することができ、将来の資金としても安心して活用できます。

節税の観点からのメリット

掛金が全額損金算入できる

  • 倒産防止共済の掛金は月額5,000円から20万円の範囲で自由に設定でき、年間では最大240万円まで拠出可能です。この拠出金は、全額が経費(損金)として計上できるため、課税所得を減らすことができます。
  • 事業年度の利益が多い場合に、掛金を増額して経費計上することで、法人税や所得税の負担を軽減することができます。

利益の繰り延べ効果

  • 掛金を支払った時点で損金処理されますが、共済解約時に受け取る解約手当金は課税対象となります。これにより、今期の利益を次期以降に繰り延べでき、資金繰りを調整しやすくなります。

一定期間後の資金回収が可能

  • 40か月以上加入すると解約手当金を元本超過で受け取れるため、長期的な資金管理の一環としても効果的です。

注意点

  • 解約時には受け取った金額が益金として課税されるため、解約のタイミングには注意が必要です。利益が少ない年度に解約すると税負担を抑えられます。
  • 取引先が倒産しなかった場合、制度をうまく活用し続けるために長期的な資金計画を立てることが重要です。
  • 概要: 法人化後に加入し、税金の繰延べが可能。
  • 経済的メリット: 月20万まで年間240万を経費として計上できる。
  • 活用方法: 倒産防止共済を利用し、税負担を軽減しつつ資産を守る。

まとめ

法人化による節税は、事業規模や収益の状況に応じて大きな効果をもたらします。給与所得控除の活用や社会保険料の調整、利益の分散など、法人化することで個人事業にはない税制のメリットを享受できます。

ただし、法人化には設立コストや経理業務の増加も伴うため、慎重な判断が求められます。最適な節税策を実践するには、専門家の助言が有効です。

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