【社長必見】決算書は会社の「健康診断書」!倒産を回避し、会社を成長させるための財務分析と改善策を徹底解説

節税・経費

「決算書を見ても、数字が並んでいるだけで何が重要なのか分からない…」
「自社の経営状態が良いのか悪いのか、客観的な判断基準が欲しい…」
「倒産しないためには、決算書のどこに注目すれば良いのだろうか?」

多くの経営者にとって、決算書は税務申告のために作成する、年に一度の義務的な書類という認識かもしれません。しかし、決算書(特に貸借対照表と損益計算書)は、単なる数字の羅列ではなく、会社の財産状況、収益力、そして将来のリスクまでをも映し出す、まさに「会社の健康診断書」なのです。

この健康診断書を正しく読み解き、自社の弱点や課題を早期に発見し、適切な対策を講じることができれば、倒産という最悪の事態を回避し、会社を持続的な成長軌道に乗せることが可能です。

この記事では、経営者が自社の決算書を見る際に、最低限どこに注目し、どのように分析すれば、会社の真の姿が見えてくるのか、その具体的なポイントと、分析結果から導き出される経営改善のアクションについて、分かりやすく徹底的に解説していきます。

経営者がまず見るべき2つの決算書:BSとPLの役割

決算書には様々な書類がありますが、経営者が特に重要視すべきなのは、以下の2つです。

  1. 貸借対照表(B/S:バランスシート):
    • 何が分かるか? 決算日という「一時点」における、会社の財政状態(健康状態)を示します。
    • 構成要素:
      • 資産の部(左側): 会社が保有する財産(現金、売掛金、商品、土地、建物など)
      • 負債の部(右上): 将来支払わなければならない義務(買掛金、借入金など)。他人資本とも呼ばれます。
      • 純資産の部(右下): 資産から負債を差し引いた、会社の「正味の財産」。自己資本とも呼ばれます。
    • 見るべきポイント: 会社の「安全性」「体力」を測ります。
  2. 損益計算書(P/L:プロフィット&ロスステートメント):
    • 何が分かるか? 一定期間(通常は1年間)における、会社の経営成績(儲けの状況)を示します。
    • 構成要素:
      • 収益(売上高など): 会社がどれだけ稼いだか。
      • 費用(売上原価、販売費及び一般管理費など): 稼ぐためにどれだけのお金を使ったか。
      • 利益(収益-費用): 最終的にどれだけ儲かったか。
    • 見るべきポイント: 会社の「収益性」「稼ぐ力」を測ります。

この2つの書類を、それぞれの役割を理解した上で、関連付けながら分析していくことが重要です。

【BS分析編】会社の安全性を測る最重要指標:「現金預金」と「借入金」のバランス

経営者が決算書を手に取った際に、まず真っ先に確認すべき項目、それは貸借対照表(B/S)の資産の部に記載されている「現金及び預金」の残高です。

なぜ「現金預金」が最も重要なのか?

会社は、たとえ会計上は黒字であっても、支払いに必要な現金がなくなれば倒産します(黒字倒産)。現金預金は、会社の生命線であり、あらゆる事業活動の源泉です。この残高が十分にあるかどうかが、会社の安全性を測る上での最初の、そして最も重要なチェックポイントとなります。

現金預金の理想的な水準は?「固定費の6ヶ月分」が一つの目安

では、どれくらいの現金預金があれば安心なのでしょうか。会社の規模によって必要な金額は異なりますが、一つの重要な目安として「固定費の6ヶ月分」という基準があります。

  • 固定費とは?
    • 売上の増減にかかわらず、毎月一定額発生する費用のことです。損益計算書(P/L)では、主に「販売費及び一般管理費(販管費)」がこれに該当します(人件費、地代家賃、減価償却費、水道光熱費など)。
  • なぜ6ヶ月分か?
    • もし、予期せぬ事態(経済危機、災害、主要取引先の倒産など)で売上がゼロになったとしても、6ヶ月分の固定費を賄える現金があれば、その間に事業を立て直したり、新たな収益源を確保したりするための時間を稼ぐことができます。
  • 自社の状況を確認する方法:
    1. 直近の損益計算書から、年間の「販売費及び一般管理費」の合計額を確認します。
    2. その金額を12で割り、1ヶ月あたりの平均固定費を算出します。
    3. その6倍の金額が、自社が目指すべき現金預金の目標水準となります。

多くの企業が、この水準に達していないのが実情です。もし、自社の現金預金残高がこの基準を大きく下回っている場合は、資金繰りに問題を抱えている可能性があり、早急な対策が必要です。

「借入金」とのバランスを見る

現金預金の額と併せて確認したいのが、負債の部に記載されている「借入金」の残高です。
現金預金が3,000万円あっても、借入金が1億円あれば、純粋な手元資金は潤沢とは言えません。
「現金預金残高 > 借入金残高」という状態が、財務的には非常に健全で望ましい状態です。

【P/L分析編】会社の収益性を測る最重要指標:「経常利益」と「粗利」の関係

次に、会社の「稼ぐ力」を測るために、損益計算書(P/L)を見ていきましょう。P/Lには様々な利益がありますが、経営者が特に重視すべきは「経常利益」です。

なぜ「経常利益」が重要なのか?

  • 経常利益とは?
    • 本業の儲けを示す「営業利益」に、営業外の収益(受取利息など)と費用(支払利息など)を加減したもので、会社の経常的な(=毎期繰り返し発生する)収益力を最もよく表す利益です。
  • 金融機関も重視する指標:
    金融機関が融資審査を行う際にも、この経常利益を非常に重視します。一時的な特別利益や特別損失を含まない、会社の「普段の実力」を測る指標だからです。

経常利益の理想的な水準は?「粗利の10%以上」が一つの目安

では、経常利益はどれくらいあれば良いのでしょうか。売上高に対する経常利益率(経常利益÷売上高)も一つの指標ですが、これは業種によって大きく異なるため、一概に比較するのは困難です。

そこで、業種にかかわらず応用できる、より本質的な指標として「売上総利益(粗利)に対する経常利益の割合」を見ることをお勧めします。

  • 売上総利益(粗利)とは?
    • 売上高から、売上原価(商品の仕入れ代金や製造原価など)を差し引いた利益です。
  • 目標とすべき水準:
    • 粗利の10%以上を経常利益として確保することを、一つの目標としましょう。15%~20%に達すれば、非常に収益性の高い優良企業と言えます。
  • 自社の状況を確認する方法:
    1. 損益計算書から、「経常利益」と「売上総利益」の金額を確認します。
    2. 「経常利益 ÷ 売上総利益」を計算し、10%を超えているかを確認します。

もし、この割合が10%を大きく下回っている場合は、固定費(販管費)が過大であるなど、コスト構造に問題を抱えている可能性があります。

役員報酬との関係も考慮する

経常利益の額は、社長や役員が受け取る「役員報酬」の額によっても大きく変動します。例えば、経常利益が目標の「粗利の10%」に達していなくても、その分、役員報酬を多く取っているのであれば、一概に収益性が低いとは言えません。分析の際には、「役員報酬+経常利益」の合計額が、粗利に対してどれくらいの割合になるのか、という視点も持つと、より実態に近い収益力を評価できます。

決算書分析から導く、具体的な経営改善アクション

自社の決算書を分析し、現金預金の水準や経常利益の水準に課題が見つかった場合、具体的にどのような対策を講じれば良いのでしょうか。

1. 現金預金が不足している場合の対策

  • 借入(資金調達)の活用:
    • これが最も直接的かつ即効性のある方法です。現在の収益力や財務内容が一定水準以上であれば、金融機関から追加の融資を受けることで、手元の現金を厚くすることができます。
    • 金融機関は、月商の3ヶ月~6ヶ月分程度の借入であれば、比較的許容範囲内と見なすことが多いです。また、後述する「債務償還年数」が10年以内であれば、返済能力ありと判断されやすくなります。
    • これらの基準を基に、自社の借入余力を把握し、目標とする現金預金水準(固定費の6ヶ月分など)を達成するための資金調達計画を立てましょう。

2. 収益性(経常利益)が低い場合の対策

  • 固定費(販管費)の削減:
    • まずは、無駄なコストがないか、徹底的に見直します。家賃、人件費、広告宣伝費、交際費など、聖域を設けずに全ての項目を精査し、削減努力を行いましょう。
    • 固定費を削減できれば、その分だけ直接的に経常利益が増加します。
  • 粗利の改善:
    • 売上原価の低減(仕入れ交渉など)や、商品・サービスの価格見直し(値上げ)によって、粗利率そのものを向上させる努力も不可欠です。
  • 売上増加策:
    • もちろん、売上高そのものを増やすことも重要です。新規顧客開拓、既存顧客へのアップセル・クロスセル、新商品開発など、営業・マーケティング活動を強化します。

3. 利益が出すぎている場合の対策(節税・利益調整)

  • 経常利益が目標を大きく上回り、かつ法人税の負担が重くなってきた場合には、戦略的な利益調整を検討します。
  • 決算賞与の支給:
    • 利益の一部を従業員や役員に決算賞与として還元します。これにより、従業員のモチベーションを高めつつ、法人の利益を圧縮し、法人税を節税することができます。
    • 金融機関は、営業利益や経常利益を重視するため、決算賞与を「特別損失」として経常利益の下で計上することで、銀行評価を維持したまま節税を図るというテクニックもあります。
  • 節税商品の活用:
    • 経営セーフティ共済(倒産防止共済)などを活用し、将来への備えと当期の利益繰り延べを両立させます。

決算書分析は「単年」ではなく「複数年」で見る

決算書を分析する上で非常に重要なのが、単年の数字だけでなく、過去2期分、3期分と並べて、その「推移」を見ることです。

  • 現金預金は増加傾向にあるか、減少傾向にあるか?
  • 売上高、粗利、経常利益は伸びているか、停滞しているか?
  • 自己資本比率や債務償還年数は、改善しているか、悪化しているか?

単年の数字だけでは見えてこない、会社の「トレンド」や「変化の兆し」を捉えることで、より的確な将来予測と、早期の課題発見が可能になります。

まとめ:決算書は未来を切り拓くための「宝の地図」。正しい読み解き方で、会社を成長させよう!

決算書は、過去の結果を示すだけの書類ではありません。それは、自社の強みと弱点を明らかにし、将来進むべき方向を示してくれる「宝の地図」なのです。

決算書分析から始める経営改善サイクル

  1. B/Sを見る: まずは「現金預金」残高を確認し、「固定費の6ヶ月分」という目標と比較して、自社の安全性を評価する。
  2. P/Lを見る: 次に「経常利益」を確認し、「粗利の10%」という目標と比較して、自社の収益性を評価する。
  3. 課題の特定: 現金預金が不足しているのか、収益性が低いのか、あるいは両方か、自社の課題を明確にする。
  4. 対策の立案:
    • 現金不足なら → 借入の活用
    • 収益性不足なら → 固定費の削減、粗利の改善
  5. 実行とモニタリング: 対策を実行し、その結果がどのように決算書に反映されていくのか、月次決算などで継続的にモニタリングする。

このサイクルを回し続けることで、会社は着実に体力をつけ、倒産リスクの低い、筋肉質な経営体質へと変貌を遂げていくことができます。

もし、あなたが「決算書の見方がよく分からない」「自社の課題をどこから手をつければ良いか分からない」と感じているのであれば、ぜひ一度、顧問税理士に相談してみてください。「うちの決算書、どう見えますか?」「どこを改善すれば、もっと良い会社になりますか?」と問いかけることから、新たな成長への道が開けるはずです。

決算書と向き合うことは、経営者としての自分自身と向き合うことです。数字から目を背けず、それを未来を切り拓くための武器として活用していきましょう。この記事が、その第一歩となれば幸いです。