【廃業支援の完全ガイド】会社を畳む時にもらえるお金とは?融資・補助金5選と計画的撤退のススメ

法人設立

「会社の業績が厳しく、このまま事業を続けるべきか悩んでいる…」
「もし廃業するとなったら、多額の費用がかかるのではないか不安だ…」
「会社を畳むときに、国から受けられる支援や補助金のようなものはないのだろうか?」

会社の経営者であれば、誰しもが事業の成功を夢見て起業します。しかし、経済状況の変化や競争の激化など、様々な要因によって、志半ばで 「廃業」 という厳しい決断を迫られるケースは、決して少なくありません。

多くの方は、「廃業=すべてを失うこと」というネガティブなイメージを持っているかもしれません。しかし、実は会社を畳む際にも、国や公的機関から受けられる様々な「支援制度」が存在することをご存知でしょうか。

これらの制度を正しく理解し、適切なタイミングで活用することで、廃業にかかる費用負担を軽減し、自己破産といった最悪の事態を回避して、次の人生への「再チャレンジ」の道を切り拓くことが可能になるのです。

この記事では、数多くの企業の再生や撤退戦略に携わってきた専門家の視点から、 廃業を検討している経営者が利用できる、具体的な「融資制度」や「補助金」 について、その内容から活用法までを徹底的に解説します。

この記事を最後までお読みいただくことで、あなたは以下の知識と具体的なアクションプランを手に入れることができます。

  • なぜ廃業にも「お金」が必要なのか、その具体的な理由がわかります。
  • 廃業時の「つなぎ資金」を確保するための2つの公的な融資制度を学べます。
  • 事業承継やM&Aに伴う廃業で活用できる、最大150万円の補助金の存在を知ることができます。
  • 廃業後の生活を守るための「住居確保給付金」というセーフティネットを理解できます。
  • 事業転換や業態変更で活用できる「事業再構築補助金」の廃業関連費用への適用について学べます。
  • 最も重要な「計画的な撤退判断」の考え方と、そのタイミングの重要性を理解できます。

廃業は、決して「終わり」ではありません。それは、次のステージへ進むための、勇気ある「経営判断」です。この記事が、万が一の時にあなたの会社とあなたの人生を守るための、確かな知識となることを願っています。

なぜ「廃業」にもお金がかかるのか?

まず、なぜ会社を畳むためにお金が必要になるのか、その理由から理解しましょう。
会社を清算する際には、以下のような様々な費用が発生します。

  • 原状回復費用:借りていた店舗や事務所を、契約前の状態に戻すための内装解体費用など。
  • 在庫・設備の処分費用:売れ残った在庫や、不要になった厨房機器、オフィス家具などを処分するための費用。
  • 解散・清算登記費用:法務局で会社をたたむための手続きにかかる登記費用や、専門家(司法書士など)への報酬。
  • 借入金の返済:銀行などからの借入金が残っている場合、それを返済するための資金。
  • 従業員の退職金や未払い給与:従業員を解雇する際に必要な費用。

これらの費用を支払うための現金が手元になければ、廃業手続きそのものを進めることができません。お金がないために、赤字を垂れ流しながら事業を続けざるを得ず、最終的には資金が完全にショートして自己破産に至ってしまう…という悲劇的なケースは、後を絶たないのです。

この 「廃業したくても、お金がなくてできない」 という最悪の状況を避けるために、国は様々な支援制度を用意しているのです。

廃業・再チャレンジを支援する公的制度5選

それでは、具体的にどのような支援制度があるのか、5つの代表的なものを「融資」と「補助金・給付金」に分けて見ていきましょう。

【融資制度】廃業のための「つなぎ資金」を確保する

まず、廃業手続きを進めるための「つなぎ資金」を調達するための、2つの公的な融資制度をご紹介します。

これは、全国の信用保証協会が提供している、廃業を支援するための保証制度です。

この制度を利用することで、事業者が金融機関(銀行や信用金庫)から、廃業に必要な資金を融資として借り入れる際に、信用保証協会がその「保証人」となってくれます。

  • 融資の目的
    • 借入金の返済資金
    • 店舗の原状回復費用
    • 在庫や設備の処分費用
    • その他、廃業手続きに必要な諸経費
  • 保証限度額:最大3,000万円

この融資の最大の目的は、計画的な廃業を可能にすることです。

例えば、価値のある不動産や設備を所有していても、それを売却して現金化するには時間がかかります。その間に目の前の借金返済が迫り、資金ショートしてしまっては、元も子もありません。

この制度を使って一時的な資金を借り入れ、そのお金で落ち着いて資産の売却や清算手続きを進める。そして、資産の売却代金で、元々の借金と、今回新たに借りた廃業支援の融資を返済する。このように、時間的な猶予を生み出し、自己破産を回避しながら、円滑に事業をたたむことを可能にするのが、この制度の役割です。

利用するためには、具体的な「廃業計画書」を作成し、金融機関に相談する必要があります。

こちらは、日本政策金融公庫が提供している、一度事業に失敗した方の「再チャレンジ」を応援するための融資制度です。

  • 融資の目的
    • 廃業した事業の清算に必要な資金
    • 新たに始める事業に必要な設備資金・運転資金
  • 融資限度額:最大7,200万円

この制度の大きな特徴は、「過去の事業の廃業費用」と「新しい事業の開業費用」を、セットで融資してくれる点です。

例えば、「今のラーメン屋はもう厳しいので廃業し、心機一転、うどん屋として再スタートしたい」と考えたとします。その際、ラーメン屋をたたむための費用と、うどん屋を開業するための費用の両方を、この制度でまとめて借り入れることができるのです。

これも、ただズルズルと赤字事業を続けるのではなく、早期に撤退判断をし、次の挑戦へと踏み出す経営者を後押しするための、非常に心強い制度と言えます。

【補助金・給付金】返済不要の「もらえるお金」を活用する

次に、融資とは異なり、原則として返済が不要な「補助金」や「給付金」についてご紹介します。

これは、事業承継やM&A(会社の売買)をきっかけとして、既存の事業を廃業する場合に、その廃業費用の一部を補助してくれる制度です。

  • 補助対象経費
    • 廃業登記の費用(登記免許税、司法書士への報酬など)
    • 在庫の処分費用
    • 建物の解体費用、原状回復費用
    • など
  • 補助上限額:最大150万円
  • 補助率:かかった経費の2/3

注意点として、これは 単独で廃業する場合には利用できません。 あくまで、後継者に事業を引き継いだり、会社を第三者に売却したりするプロセスの中で、不採算部門を整理・廃業するといったケースが対象となります。

例えば、「息子に会社を継がせるが、私が運営していたラーメン事業部だけは将来性がないので廃業する」といった場合に、そのラーメン事業部の廃業費用に対して、この補助金が活用できる、というイメージです。

これは、事業の廃業などによって収入が著しく減少し、住居を失うおそれのある方に対して、国が家賃相当額を支給してくれる、生活のセーフティネットとなる制度です。

  • 対象者:廃業から2年以内で、離職等と同程度の状況にあり、収入や資産が一定額以下の方
  • 支給額:市区町村ごとに定められた上限額の範囲内で、家賃相当額を支給(例:東京都特別区の単身世帯の場合、月額53,700円)
  • 支給期間:原則3ヶ月(状況により、最大9ヶ月まで延長の可能性あり)

廃業後、すぐに次の仕事が見つからず、生活に困窮してしまった場合に、最低限の暮らしを守り、再就職や再起業への準備期間を与えてくれる、非常に重要な制度です。

これは、コロナ禍などの影響で打撃を受けた事業者が、思い切った事業転換や業態変更に挑戦する際に、その設備投資費用などを補助してくれる、非常に規模の大きい補助金です。

この補助金の対象経費の中に、 「既存事業の縮小や廃止、撤去にかかる費用」 が含まれています。

例えば、「店舗でのラーメン提供は縮小し、空いたスペースを改装して、冷凍ラーメンの製造・オンライン販売という新しい事業を始める」といった計画を立てたとします。

この場合、新しい冷凍ラーメンの製造設備にかかる費用だけでなく、既存の店舗の客席を撤去したり、厨房の一部を解体したりする費用も、補助金の対象として認められる可能性があるのです。

これは、完全な廃業ではなく、事業の一部を「撤去」または「縮小」して、新しい事業へシフトする際の強力な後押しとなります。

最も重要なこと:計画的な「撤退判断」のタイミング

ここまで、様々な支援制度をご紹介してきましたが、これらの制度を最大限に有効活用するために、最も重要なことがあります。

それは、 「ご利用は計画的に」 という言葉に尽きます。

多くの経営者が陥りがちなのが、 「最後まで悪あがきをしてしまう」 ことです。
「もう少し頑張れば、状況は好転するはずだ」
「今やめたら、これまで投じてきたものがすべて無駄になる」
そんな思いから、赤字を垂れ流しながらズルズルと事業を続け、手元の資金が完全に底をつき、どうにもならなくなってから、初めて「廃業」という選択肢に気づくのです。

しかし、その時点では、もう手遅れです。廃業手続きを進めるためのお金もなく、支援制度を調べる時間的・精神的な余裕もなく、残されている道は自己破産だけ…という事態になりかねません。

本当に賢明な経営者は、事業の「始め方」だけでなく、 「やめ方」 についても、常に考えています。

  • この赤字が、あと何か月続いたら撤退する。
  • 会社の現金が、この金額を下回ったら、廃業の準備を始める。

というように、あらかじめ 「撤退基準」 を明確に定めておくことが、最悪の事態を避けるための、何よりのリスク管理なのです。

厳しい状況に陥った時こそ、感情的にならずに、冷静にこれらの支援制度の存在を思い出し、計画的に、そして戦略的に「撤退」という経営判断を下す。その勇気が、あなたの次の輝かしいキャリアへの扉を開くのです。

まとめ:廃業は「終わり」ではなく、次への「始まり」

今回は、会社の廃業という厳しい局面に際して、経営者を支えてくれる公的な支援制度について詳しく解説しました。

  • 廃業にもお金はかかる。 そのための資金がなければ、計画的な撤退はできません。
  • 公的な「融資制度」を活用しよう。 「自主廃業支援保証」や「再挑戦支援資金」は、廃業と再チャレンジのための強力な資金調達手段です。
  • 返済不要の「補助金・給付金」も存在する。 「事業承継・引継ぎ補助金」や「住居確保給付金」、「事業再構築補助金」など、条件に合うものがないか確認しましょう。
  • 最も重要なのは「タイミング」。 手遅れになる前に、計画的に撤退を判断する勇気が、自己破産という最悪の事態を回避します。

事業をたたむという決断は、非常につらく、勇気のいることだと思います。しかし、それは決して「敗北」ではありません。ここまで事業を続けてこられたあなた自身の経験と知識は、決して無駄にはなりません。

国が用意したこれらのセーフティネットを賢く活用し、一度きれいに事業を清算することで、また新しい道で、あなたの能力を存分に発揮することができるのです。

もしあなたが今、事業の将来に不安を感じているのであれば、ぜひこの記事でご紹介した制度を調べ、専門家にも相談しながら、ご自身の未来にとって最善の道は何かを、冷静に考えてみてください。

最後までお読みいただくありがとうございました。この記事があなたの経営の一助になれば幸いです。