信用金庫の「良い担当者・悪い担当者」の見分け方|会社の資金繰りを改善する賢い付き合い方

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「信用金庫とは絶対に付き合った方がいいと聞いたけど、本当だろうか?」
「担当者によって、融資の条件や対応が全然違う気がする…」
「融資をちらつかせて、不要な商品を勧めてくる担当者にどう対処すればいい?」

地域に根差した中小企業の経営者にとって、「信用金庫」は非常に重要なパートナーです。メガバンクや地方銀行に比べて、より親身に、そしてフットワーク軽く相談に乗ってくれる信用金庫は、会社の資金繰りを支える上で、まさに「切っても切れない存在」と言えるでしょう。

しかし、その一方で、 「どの信用金庫と、そしてどの担当者と付き合うか」 によって、あなたの会社の未来が大きく左右される可能性があることをご存知でしょうか。

担当者の中には、心からあなたの会社の成長を願ってくれる素晴らしいパートナーがいる一方で、自らの営業成績のために、あなたの会社にとって不利益な提案をしてくる担当者が存在するのも、また事実です。

この記事では、数多くの企業の金融機関対応を支援してきた専門家の視点から、あなたの会社を真に応援してくれる「良い信用金庫の担当者」と、注意すべき「悪い担当者」を明確に見極めるための具体的なチェックポイントを徹底解説します。

この記事を最後までお読みいただくことで、あなたは以下の知識とスキルを手に入れることができます。

  • 銀行と信用金庫の基本的な違いと、両方と付き合うべき理由がわかります。
  • 融資提案の「中身」を見抜き、担当者の本質を見極める方法を学べます。(プロパー融資 vs 保証協会付き融資)
  • 融資とセットで提案されがちな「定期預金」や「金融商品」の危険な罠を理解できます。
  • 会社の成長を本気で考えてくれる「超一流の担当者」が行う、融資以外のサポート内容を知ることができます。
  • もし「悪い担当者」に当たってしまった場合の、賢い対処法と関係性の構築術を学べます。

金融機関との付き合い方は、会社の命運を握る重要な経営スキルです。正しい知識を身につけ、信頼できるパートナーと共に、あなたの会社をより強固な財務体質へと導いていきましょう。

なぜ中小企業は信用金庫と付き合うべきなのか?

本題に入る前に、なぜ信用金庫との付き合いが中小企業にとって重要なのかを再確認しておきましょう。

銀行(特にメガバンクや地方銀行)と信用金庫の最も大きな違いは、その組織の目的営業エリアにあります。

  • 銀行:株主の利益を最大化することを目的とする株式会社。営業エリアに制限はなく、全国・全世界で活動できます。
  • 信用金庫:地域の繁栄を目的とする協同組織の金融機関。営業エリアが法律で定められた一定の地域内に限定されています。

この違いから、信用金庫には以下のような特徴が生まれます。

  • 地域密着型:地域の中小企業や個人の発展を第一に考えてくれる傾向が強く、より親身な対応が期待できます。
  • フットワークが軽い:地域に根差しているため、担当者が頻繁に足を運んでくれ、相談しやすい雰囲気があります。
  • 小規模な融資にも柔軟:銀行が扱いにくいような小口の融資にも、柔軟に対応してくれることが多いです。

もちろん、銀行には大規模な融資に対応できるといったメリットがあります。重要なのは、どちらか一方を選ぶのではなく、銀行と信用金庫の両方と取引関係を持っておくことです。銀行が「ノー」と言った案件でも、信用金庫が「イエス」と言ってくれることもあれば、その逆もまた然りです。複数の選択肢を持つことが、資金繰りの安定化に繋がるのです。

見せかけの「良い人」に騙されるな!担当者の本質を見抜く5つのチェックポイント

信用金庫の担当者は、フットワークが軽く、親身に相談に乗ってくれるため、「良い人」に見えがちです。しかし、その「良い人」という印象だけで、本当にあなたの会社のためを思ってくれている担当者だと判断するのは非常に危険です。

ここでは、「悪い担当者」がよく使う手口と、その本質を見抜くための5つのチェックポイントを解説します。

チェックポイント①:融資提案は「プロパー融資」か「保証協会付き」か?

担当者が「社長のためなら、喜んで融資しますよ!」と、積極的に融資を提案してくれたとします。一見すると、これ以上ない「良い担当者」に思えます。

しかし、重要なのはその 融資の「中身」 です。

  • A担当者:3,000万円の融資を提案。ただし、信用保証協会の保証付き(保証協会付き融資)
  • B担当者:2,000万円の融資を提案。こちらは、信用金庫が100%リスクを負う(プロパー融資)

融資額だけ見ればA担当者の方が魅力的に見えますが、どちらが本当にあなたの会社を信用している担当者でしょうか。答えは、間違いなくB担当者です。

「保証協会付き融資」は、万が一返済できなくなった際に保証協会が肩代わりしてくれるため、金融機関にとってはリスクがありません。つまり、「あなたの会社のことはまだ完全には信用できないので、保証人を付けてくださいね」と言っているのと同じなのです。

一方で、「プロパー融資」は、金融機関が自らの審査で「この会社なら大丈夫だ」と判断し、100%のリスクを背負って実行する融資です。これは、 あなたの会社に対する最大の「信頼の証」 と言えます。

担当者が提案してくる融資が、安易に保証協会付きのものばかりではないか。あなたの会社の信用力を正当に評価し、プロパー融資を引き出す努力をしてくれるか。これが、担当者の力量と本気度を測る最初の試金石です。

チェックポイント②:保証協会の「保証枠」を無駄遣いしていないか?

信用保証協会が保証してくれる金額には、会社ごとに上限(保証枠)が定められています。この保証枠は、本当に会社の経営が厳しくなったときの「最後の切り札」として、できるだけ温存しておくべきものです。

しかし、自分の営業成績のことしか考えていない担当者は、この 貴重な保証枠を、安易な融資でどんどん使わせようとします。 プロパー融資の審査努力をせず、手っ取り早く実績になる保証協会付き融資を連発し、気づいたときにはあなたの会社の保証枠が上限に達してしまっている…。これでは、いざという時に本当に必要な融資が受けられなくなってしまいます。

会社の将来のリスク管理まで考えて、保証枠の使い方を提案してくれるかどうかも、重要な見極めポイントです。

チェックポイント③:融資とセットで「定期預金」を要求してこないか?

これは、特に注意が必要な手口です。融資を実行する見返りとして、 「融資額の一部を、当金庫の定期預金に入れていただけませんか?」 と提案してくる担当者がいます。これを「歩積(ぶづみ)預金」や「両建て預金」と呼び、金融業界では長年の悪習とされています。

例えば、3,000万円の融資をする代わりに、1,000万円の定期預金を組まされたとします。一見、問題ないように思えますが、これは実質的に、金融機関があなたの会社から1,000万円を人質に取っているのと同じことです。

定期預金は、満期が来るまで自由に引き出すことができません。つまり、あなたの会社が実際に使えるお金は、3,000万円 – 1,000万円 = 2,000万円だけ。それなのに、利息は3,000万円分支払わなければならないのです。

さらに厄介なのは、いざ資金繰りが苦しくなってこの定期預金を解約しようとすると、「この定期預金を担保に融資させていただいた経緯がありますので…」などと理由をつけ、なかなか解約に応じてくれないケースがあることです。

融資と引き換えに定期預金を提案してくる担当者は、あなたの会社のことを全く信用しておらず、ただ自分の成績とリスクヘッジしか考えていない、と判断して間違いありません。

チェックポイント④:手数料稼ぎの「金融商品」を強引に勧めてこないか?

近年、金融機関の収益源は、融資の利息収入から、投資信託や保険といった金融商品の販売手数料へとシフトしています。そのため、担当者がこれらの商品を熱心に勧めてくることがあります。

もちろん、本当にあなたの会社のためになる商品を提案してくれるのであれば問題ありません。しかし、中には、金融機関側が儲かるだけで、顧客にとってはメリットの少ない、手数料の高い商品を強引に売りつけようとするケースも少なくありません。

特に、窓口で販売されている投資信託は、ネット証券で自分で購入できる同種の商品に比べて、販売手数料が非常に高く設定されていることがほとんどです。

融資の相談に行った際に、「融資の件も頑張りますので、ぜひこちらの投資信託もご検討ください」といった形で、半ば強引に金融商品の購入を迫ってくる担当者には、警戒が必要です。

チェックポイント⑤:「経営者保証」を安易に求めてこないか?

融資の際に、会社だけでなく経営者個人も連帯保証人となる「経営者保証」を付けるのが、長年の慣行でした。これは、「会社が倒産しても、社長個人の財産で返済してくださいね」という、非常に厳しい契約です。

しかし、近年、国の方針としてこの経営者保証に依存しない融資が推進されており、「経営者保証なし」が今後のスタンダードになりつつあります。

あなたの会社の財務内容が健全であるにもかかわらず、何の検討もせずに「経営者保証は必須です」と言ってくる担当者は、最新の金融行政の流れを理解していないか、あるいはあなたの会社のリスクをすべてあなた個人に押し付けようとしている、と言えるでしょう。

この人こそパートナー!「超一流の担当者」の3つの特徴

では、逆に、心から信頼できる「良い担当者」とは、どのような人物なのでしょうか。融資条件の交渉に真摯に応じてくれるのはもちろんのこと、超一流の担当者は、融資以外の面でもあなたの会社を力強くサポートしてくれます。

特徴①:支店長を連れてくる

担当者だけでなく、その上司である支店長が、あなたの会社に挨拶や訪問に来てくれるかどうかは、一つの重要なバロメーターです。

支店長がわざわざ足を運ぶということは、その信用金庫が、あなたの会社を 「将来性のある重要な取引先」 として認識している証拠です。担当者レベルだけでなく、支店全体であなたの会社を応援しようという姿勢の表れであり、今後の融資においても、より前向きな判断が期待できます。

特徴②:積極的な「ビジネスマッチング」をしてくれる

超一流の担当者は、単にお金を貸すだけではありません。あなたの会社の事業そのものの成長を支援しようとしてくれます。その最も代表的なものが 「ビジネスマッチング」 です。

金融機関は、地域内の非常に多くの企業と取引があります。その膨大なネットワークを活かし、

  • あなたの会社の経営課題をヒアリングし、その解決に繋がるサービスを提供している別の取引先を紹介してくれる。
  • あなたの会社の商品やサービスの、新たな販路となり得る見込み客を紹介してくれる。

といった、企業と企業を繋ぐ「ハブ」の役割を果たしてくれるのです。

もちろん、ビジネスマッチングが成立した際には、成功報酬として手数料が発生することもあります。しかし、それによって新たな売上や事業の発展に繋がるのであれば、それは非常に価値のある「投資」と言えるでしょう。

特徴③:会社の未来まで見据えた提案ができる

良い担当者は、目先の融資だけでなく、あなたの会社の5年後、10年後まで見据えた提案をしてくれます。事業計画の策定をサポートしてくれたり、将来の事業承継に関する情報を提供してくれたりと、長期的な視点で会社の成長に寄り添ってくれます。

もし「悪い担当者」に当たってしまったら?賢い対処法

では、もし自分の会社の担当者が、先ほど挙げた「悪い担当者」の特徴に当てはまってしまった場合、どうすればよいのでしょうか。

対処法①:すぐに縁を切らず、一旦「フェードアウト」する

「担当者を変えてください!」と直接言うのは、角が立ち、関係性を悪化させるだけです。おすすめは、 少しずつ距離を置き、深い付き合いを避ける「フェードアウト」 という方法です。

融資の相談はせず、入金用の口座として使うなど、最低限の取引関係は維持しておきます。金融機関の担当者は、通常2~3年で転勤などにより交代します。次の担当者が優秀な人物である可能性もあるため、完全に縁を切ってしまうのは得策ではありません。

その担当者がいる間は、他の金融機関の「良い担当者」と深く付き合い、メインの取引をそちらに移しておくのが賢明です。

対処法②:こちらから「育てる」くらいの気持ちで接する

担当者も人間です。特に、経験の浅い若い担当者の場合、まだ知識やスキルが不足していることもあります。

最初から「この担当者はダメだ」と決めつけるのではなく、経営者であるあなたの方から積極的にコミュニケーションを取り、 「自分の会社のことを理解してもらい、一緒に成長していくパートナーとして育てる」 くらいの気持ちで接することも大切です。

  • 自社の事業内容や強みを、分かりやすく説明してあげる。
  • 定期的に業績の報告や、今後の事業計画を共有する。
  • 「こんなことで困っているんだけど、何か良い情報はない?」と、積極的に相談を持ちかける。

こうしたコミュニケーションを通じて、担当者の知識が増え、あなたの会社への理解が深まれば、やがて素晴らしいパートナーへと成長してくれる可能性もあります。

もちろん、いくらこちらが歩み寄っても、能力が低かったり、やる気がなかったりする担当者もいます。その場合は、見切りをつけて対処法①に移行するのがよいでしょう。

まとめ:信頼できるパートナーを見つけ、共に成長する

今回は、中小企業の経営者にとって非常に重要な、信用金庫との付き合い方について、担当者の見極め方を中心に解説しました。

最後に、本日の重要なポイントをまとめます。

  • 信用金庫は中小企業の重要なパートナー。ただし、担当者選びがすべてを決める。
  • 融資提案は「額面」に騙されず、「プロパー融資」かどうかなど「中身」を精査する。
  • 「定期預金」や「手数料の高い金融商品」を勧めてくる担当者には要注意。
  • 本当に良い担当者は、融資だけでなく「ビジネスマッチング」など、事業の成長そのものを支援してくれる。
  • 悪い担当者に当たったら、直接対立せず、他の金融機関と関係を深めながら、担当者が代わるのを待つのが賢明。

金融機関との関係は、どちらかが一方的にへりくだるものではありません。お互いを尊重し、共に成長していく対等なパートナーシップを築くことが理想です。

ぜひ、今日ご紹介したチェックポイントを参考に、ご自身の会社の担当者が本当に信頼できるパートナーかどうかを見極めてみてください。そして、もし「この人だ!」と思える担当者に出会えたなら、その関係を大切に育んでいきましょう。その出会いが、あなたの会社の未来を大きく切り拓くことになるはずです。