【経営者必見】コピー機・オフィス家具は購入?ローン?リース?節税と財務を最適化する、賢い設備導入術を徹底解説

節税・経費

会社のオフィス環境を整え、業務効率を向上させるために不可欠なコピー機(複合機)やオフィス家具。これらの設備を導入する際、あなたはどのような方法を選択していますか?「現金での一括購入」「分割払いのローン」「月々の使用料を支払うリース」という、主に3つの選択肢がありますが、それぞれの方法が会社の財務状況、税負担、そして金融機関からの評価に与える影響は大きく異なります。

「どの方法が一番コストを抑えられるの?」
「節税効果が高いのはどれ?」
「銀行からの見た目が良くなるのは?」

この記事では、多くの経営者が悩むこの問題について、一括購入、ローン、リースの3つの方法を、会計処理、節税効果、資金繰り、銀行評価といった多角的な視点から徹底的に比較・解説します。自社の経営戦略に最も適した選択をするための一助となれば幸いです。

比較の前提:会計処理の基本「減価償却」を理解する

3つの選択肢を比較する前に、まず、設備導入における会計処理の基本である「減価償却」について理解しておく必要があります。

  • 減価償却とは?
    取得価額が10万円以上の、長期間にわたって使用される固定資産(コピー機、オフィス家具、車両など)の購入費用を、一度に経費として計上するのではなく、その資産が使用できる期間(法定耐用年数)にわたって、分割して費用計上していく会計処理のことです。
  • なぜ必要?
    高価な資産の購入費用を一括で経費にしてしまうと、その年の利益が極端に少なくなり、会社の正しい経営成績を把握できなくなるためです。資産が事業に貢献する期間に合わせて費用を配分することで、より実態に即した損益計算を行います。
  • 法定耐用年数の例:
    • コピー機(複合機):5年
    • 金属製のオフィス家具(机、キャビネットなど):15年
    • 木製のオフィス家具:8年

この減価償却の考え方が、特に「購入(一括・ローン)」と「リース」の会計処理や節税効果の違いを生み出す重要なポイントとなります。

選択肢1:現金での「一括購入」

最もシンプルな方法である現金での一括購入について見ていきましょう。

一括購入のメリット

  • 総支払額が最も安い:
    これが一括購入の最大のメリットです。ローンやリースのように、金利や手数料といった追加コストが発生しないため、トータルの支払額を最も安く抑えることができます。
  • 完全な所有権の獲得:
    購入した設備は、完全に自社の資産となります。そのため、処分や売却などを自由に行うことができます。
  • 減価償却による節税効果:
    購入した設備は固定資産として計上され、減価償却によって数年間にわたり経費化されます。後述するリースと比較して、早期に費用計上できる可能性があるため、短期的な節税効果が期待できる場合があります。

一括購入のデメリット

  • 手元資金の大幅な減少:
    これが一括購入の最大のデメリットであり、経営上の大きなリスクとなり得ます。多額の現金を一度に支出するため、手元の運転資金が大幅に減少し、資金繰りが悪化する可能性があります。
  • 事業機会の損失:
    設備購入に充てた資金を、もし他の事業投資(新商品開発、マーケティングなど)に回していれば、より大きなリターンを生み出せたかもしれません。
  • 推奨されるケース:
    手元資金が極めて潤沢であり、一括で購入しても、なお会社の資金繰りに全く影響がないと断言できる、財務的に非常に安定した企業に限られるでしょう。そうでなければ、手元資金を温存し、他の選択肢を検討する方が賢明です。

選択肢2:分割払いの「ローン」

次に、多くの企業で利用されているローンでの購入について見ていきましょう。

ローンのメリット

  • 手元資金を温存できる:
    一括購入と異なり、初期費用を抑え、月々の分割払いで済むため、手元の運転資金を温存することができます。これにより、資金繰りの安定化と、他の事業投資への資金投入が可能になります。
  • 一括購入と同様の所有権と減価償却:
    ローン完済後は完全に自社の所有物となります。会計処理上も、一括購入と同様に資産として計上し、減価償却によって費用化していくため、リースよりも早期に費用計上できる可能性があります。

ローンのデメリット

  • 金利負担による総支払額の増加:
    ローンには必ず金利が発生するため、一括購入と比較して総支払額は高くなります。
  • 銀行評価への影響(貸借対照表上の負債計上):
    • ローンで購入した場合、会計処理上、貸借対照表(BS)の「資産の部」に器具備品などが計上されると同時に、「負債の部」に長期未払金や借入金といった負債が計上されます。
    • これにより、自己資本比率が低下したり、負債総額が増加したりするため、金融機関からの見た目(決算書の評価)が悪くなる可能性があります。銀行は、借入金の総額を重視するため、他の融資審査に影響を与えることも考えられます。

選択肢3:月々払いの「リース」

最後に、近年、特にコピー機(複合機)などで主流となっているリース契約について見ていきましょう。

リースのメリット

  • 初期費用を抑え、月々の支払いが平準化される:
    頭金などの初期費用が不要で、月々一定のリース料を支払うだけで設備を利用できます。これにより、資金計画が非常に立てやすくなります。
  • 会計処理・管理の手間が簡便:
    • 多くの場合、リース料にはメンテナンス費用や保険料などが含まれています(契約内容による)。
    • 毎月支払うリース料を費用(賃借料など)として処理するだけなので、減価償却計算や固定資産税の申告といった煩雑な事務作業から解放されます。
  • 銀行評価への影響が少ない(オフバランス化):
    • リース契約(特にファイナンス・リース以外の所有権移転外リース)の場合、会計処理上、設備を資産として計上せず、毎月のリース料を費用として処理することが認められています(中小企業の場合)。
    • これにより、ローンと違って貸借対照表(BS)に資産や負債が計上されない(オフバランス)ため、自己資本比率などの財務指標を悪化させることがなく、銀行からの見た目が良くなるという大きなメリットがあります。
  • 陳腐化リスクへの対応:
    技術革新の速いIT機器などは、数年で陳腐化してしまいます。リースであれば、契約期間が終了すれば最新機種に入れ替えることが容易です。

リースのデメリット

  • 総支払額が最も高くなる傾向:
    リース料には、設備価格に加えて、リース会社の利益、固定資産税相当額、保険料、金利相当額などが含まれるため、一般的に、一括購入やローンと比較して総支払額は最も割高になります。
  • 所有権がない:
    リースはあくまで「借りる」契約なので、設備の所有権はリース会社にあります。契約期間が終了しても、自分のものにはなりません(再リースや買取オプションがある場合を除く)。
  • 中途解約が困難:
    原則として、契約期間中の解約はできません。やむを得ず解約する場合は、高額な違約金が発生することがあります。

【重要】節税効果の比較:購入(減価償却) vs リース

節税という観点から、購入(一括・ローン)とリースを比較すると、費用計上のタイミングと金額に大きな違いが生まれます。

購入の場合(減価償却)

  • 費用計上の特徴:
    • 購入した設備は、減価償却によって法定耐用年数(例:コピー機なら5年)にわたって費用化されます。
    • 法人の場合、原則として「定率法」が適用され、購入初期に多くの減価償却費を計上できます。
  • 個人事業主の場合:
    • 原則「定額法」となり、毎年均等額を費用計上します。この場合、5年リースと5年定額法の年間の費用計上額は、ほぼ同じになります。

リースの場合

  • 費用計上の特徴:
    • 原則として、毎月支払うリース料が、そのまま費用として計上されます。 費用額は契約期間中、一定です。

【法人における比較のポイント】

  • 短期的な節税効果を重視するなら → 購入(定率法)が有利
    • 定率法では、購入初期に多くの経費を計上できるため、直近の利益を圧縮し、税負担を軽減する効果はリースよりも大きくなります。創業期や、利益が大きく出そうな年度の節税対策として有効です。
  • 毎年の費用を平準化し、長期的な計画を立てやすくしたいなら → リースが有利
    • 減価償却のように年々費用額が変動することがなく、管理がシンプルです。

リースの裏ワザ的活用法:リース期間の短縮による早期費用化

リースには、さらに強力な節税テクニックが存在します。それが、「リース期間の短縮」です。

税法上、リース期間は、その設備の法定耐用年数よりも短い期間で設定することが認められています。

  • リース期間短縮のルール:
    • 法定耐用年数が10年未満の資産の場合:
      法定耐用年数 × 70% = 最短リース期間 (1年未満の端数は切り捨て)
    • 法定耐用年数が10年以上の資産の場合:
      法定耐用年数 × 60% = 最短リース期間

【具体例:コピー機(法定耐用年数5年)の場合】

  • 法定耐用年数5年 × 70% = 3.5年
  • 端数を切り捨てるため、最短で3年のリース期間を設定できます。

【効果】
本来5年かけて費用化するはずのコピー機の取得費用を、わずか3年間で費用計上できることになります。

  • 5年リースの場合: 仮に総額100万円なら、年間の費用計上額は20万円。
  • 3年リースの場合: 仮に総額100万円なら、年間の費用計上額は約33万円。

このように、リース期間を短縮することで、定率法による減価償却よりもさらに早いペースで費用化を進め、より大きな短期的な節税効果を得ることが可能になるのです。
ただし、リース期間を短くすると、その分、月々のリース料の支払額は高くなるため、資金繰りへの影響を十分に考慮する必要があります。

結論:あなたの会社に最適な選択は?購入・ローン・リースの選び方

ここまで見てきたメリット・デメリットを踏まえ、あなたの会社にとって最適な選択肢を考えてみましょう。

【こんな会社には「購入(一括またはローン)」がおすすめ】

  • 法人で、短期的な節税効果を最大化したい場合:
    • 定率法による初期の大きな減価償却費は、利益圧縮に有効です。
  • 個人事業主で、会計処理の手間を厭わない場合:
    • 定額法とリースの費用計上額は似ていますが、購入すれば最終的に資産が手元に残ります。
  • 設備を長期的に保有・使用したい場合:
    • 所有権を得たい、自由にカスタマイズしたい場合に適しています。
  • 資金繰りに余裕がある場合(特に一括購入):
    • 総支払額を最も安く抑えられます。

【こんな会社には「リース」がおすすめ】

  • 銀行評価を重視し、貸借対照表(BS)をスリムに保ちたい場合:
    • 負債として計上されない「オフバランス」のメリットは非常に大きいです。
  • 会計処理や設備管理の手間をできるだけ省きたい場合:
    • 減価償却計算や固定資産税申告、メンテナンス管理などが不要で、業務が簡素化されます。
  • 初期費用を抑え、月々の支払いを平準化したい場合:
    • 資金計画が立てやすく、キャッシュフローの安定に繋がります。
  • 技術革新の速い設備を導入し、定期的に最新機種に入れ替えたい場合。
  • (法人で)法定耐用年数よりも短い期間で費用化し、節税効果を高めたい場合:
    • リース期間短縮のテクニックは、リースならではの強力なメリットです。

最終的な判断は、以下の要素を総合的に考慮して行うべきです。

  • 財務状況と資金繰り: 手元資金は十分か、月々の支払いに耐えられるか。
  • 節税への考え方: 短期的な節税を重視するか、長期的な費用平準化を重視するか。
  • 銀行評価への意識: 貸借対照表(BS)の見た目を重視するかどうか。
  • 設備の利用計画: 何年くらい使う予定か、所有権は必要か。
  • 管理の手間: 会計処理や管理業務にどれだけ手間をかけられるか。

これらの選択は、会社の経営戦略そのものです。一つの正解があるわけではなく、それぞれの会社の状況や目指す方向性によって、最適解は異なります。判断に迷う場合は、必ず顧問税理士などの専門家に相談し、それぞれの選択肢が自社の財務や税務にどのような影響を与えるのか、具体的なシミュレーションを交えながら検討することをお勧めします。

この記事が、あなたの会社にとって最も賢明な設備導入の意思決定を行うための一助となれば幸いです。