年が明けて最初の給与の支払い日までに、マイクロ法人が行うべき重要な事務処理が存在します。それは、毎年11月頃に税務署から送られてくる、年末調整に関する書類の処理です。
「うちは役員報酬が低いから、源泉徴収も年末調整も関係ないはず」
そうお考えかもしれません。確かに、一般的な会社員のような税金の還付や追加徴収は発生しませんが、給与を支払う「会社」として、いくつかの書類を作成・保管する義務は免れません。
特に、ある重要な書類を提出していないと、役員報酬が低くても毎月源泉徴収が発生し、かえって面倒なことになりかねません。
今回は、この年末調整用の大きな茶封筒の中身、具体的には4枚の書類の処理について、優秀なSEOライターとして、ですます口調で徹底的に解説していきます。見るだけで気が遠くなるような印刷物ですが、一つずつ片付けて、マイクロ法人の運営をすっきりさせましょう。
セクション1:マイクロ法人における年末調整の「建前」と「本音」
まず、マイクロ法人における年末調整の位置づけを理解することが重要です。
1. 年末調整とは何か?
年末調整とは、会社がその年に従業員の給与から天引きした「源泉徴収額」の総額が、本来納めるべき所得税・復興特別所得税の年額に対して多すぎたのか、少なすぎたのかを確認し、精算する手続きです。
- 払いすぎていたら:税金が還付されます。
- 不足していたら:追加で徴収されます。
2. マイクロ法人で「調整の仕様がない」理由
マイクロ法人では、社会保険料控除後の月額給与額を8万8000円未満に設定しているケースがほとんどです。この金額未満であれば、前回の記事でも解説した通り、源泉徴収税額は毎月「0円」となります。
月々の源泉徴収がゼロなのですから、そもそも精算するお金が存在しないため、「年末調整の使用がない」という状況になるわけです。
3. 【最重要】提出必須の「ある書類」とは?
年末調整の精算は不要だとしても、法人として 給与所得者の扶養控除等申告書(通称:マル扶) を会社側が受け取っているかどうかが極めて重要になります。
もし、この「マル扶」が会社に提出されていない場合、月額給与が8万8000円未満であっても、所得税の源泉徴収税額表の 「乙(おつ)欄」 が適用されてしまいます。
乙欄が適用されると、原則として給与額の約3%(復興特別所得税込みで3.063%など)が毎月源泉徴収される決まりになっています。この場合、マイクロ法人の社長でも、毎月源泉徴収が発生し、実際に年末に精算(調整)せざるを得なくなります。
僕たちマイクロ法人経営者は、給与所得以外に個人事業の確定申告(事業所得)を行う場合が多いです。年末調整は確定申告の情報に上書きされ、確定申告のデータが優先されますが、手間を増やさないためにも、乙欄の適用は絶対に避けるべきです。
結論として、年末調整は「調整の仕様がない」としても、「マル扶」を提出することで乙欄の適用を回避し、「甲(こう)欄」の適用を受け続けることが、マイクロ法人の事務処理の基本戦略となります。
セクション2:茶封筒の中身を分類し、処理する
税務署から送られてくる書類は、大きく分けて「今年の控除のための書類」と「来年の給与計算のための書類」に分類できます。
通常、年末調整の茶封筒には、以下の4枚の書類が含まれています。
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書
- 給与所得者の扶養控除等申告書(マル扶)
- 給与所得に対する源泉徴収簿
これらの書類を、処理の必要性に基づいて分類していきましょう。
セクション3:提出が「不要」な書類の判断理由
まず、今年の所得税に関する控除を受けるために必要な、以下の書類について解説します。マイクロ法人では、原則としてこれらの書類を提出する必要はありません。
1. 給与所得者の保険料控除申告書
この書類は、以下の4つの控除を年末調整で受けるために必要なものです。
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 社会保険料控除(国民健康保険料など、会社で天引きしていないもの)
- 小規模企業共済等掛金控除(iDeCoなど)
マイクロ法人における判断:
マイクロ法人経営者は、通常、これらの控除を年末調整では行わず、確定申告で行います。
特に、給与所得(役員報酬)以外に大きな事業所得がある場合、確定申告でまとめて控除を申告した方が有利かつ確実です。したがって、この書類は提出不要と判断して問題ありません。
2. 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書
息が切れてしまいそうなほど長いタイトルですが、令和6年分からは「定額減税のための申告書」が加わり、さらに長くなっています。この書類は、以下の4つの控除・減税を年末調整で受けるために必要なものです。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 定額減税
- 所得金額調整控除
マイクロ法人における判断:
これも上記と同様に、基礎控除、配偶者控除といった各種控除についても、マイクロ法人では年末調整ではなく確定申告で行うのが一般的です。
特に所得金額調整控除は、給与所得が850万円超で扶養親族などがいる場合に適用される控除であり、マイクロ法人の役員報酬戦略とはほとんど関係ありません。定額減税についても、確定申告で精算されます。
したがって、この書類も提出不要と判断して問題ありません。
セクション4:提出・管理が「必須」な書類の処理手順
年末調整そのものは行わなくても、会社として次年度の給与計算と適正な税務管理のために、以下の2つの書類の作成と保管は必須となります。
3. 給与所得者の扶養控除等申告書(令和7年分など)
これが、前述した「乙欄適用を回避し、甲欄適用を受け続けるため」に、会社に提出しなければならない最重要書類です。
3-1. 提出期限と義務
提出期限は、その年の最初の給与支払い日の前日までです。つまり、年が明けてから最初に役員報酬を支払う日までに、社長ご自身がこの書類を作成し、会社に提出する必要があります。
扶養親族や源泉控除対象配偶者がいない人でも、原則として提出しなければならないとされています。これこそが、甲欄適用を受けるための唯一の手段です。
3-2. 記入のポイントと簡易版の利用
この書類は、次年度(例:令和7年分)の給与計算のために提出します。
- 提出者(僕):自身の住所、氏名、生年月日を記入します。
- 扶養親族等:16歳以上の扶養親族がいる場合に記入します。
- 住民税に関する事項:16歳未満の扶養親族がいる場合は、こちらに記入します。
【朗報】令和7年分からの簡易版の導入
法改正により、令和7年分からは、前年の申告内容(扶養親族や住所など)に変更がない場合に限り、 「簡易版」 での提出が可能となりました。
簡易版では、変更がない旨のチェック欄(前年の申告内容からの異動の欄の「なし」)と、自身の基本情報のみの記入で済むため、事務負担が軽減されます。ただし、前年に住所変更など「異動」があった場合は、簡易版ではなく一般の書式で記入し直す必要があります。
僕のケースでも、法人設立後に自宅の引っ越しがあったため、その際に「異動申告書」として提出を済ませていました。そのため、今回は簡易版で処理を完了させることができました。
3-3. デジタル処理と保管義務
国税庁のウェブサイトから、この「マル扶」の入力用PDFをダウンロードして、デジタルで作成することが可能です。紙の書類を破棄し、データで管理することで、ペーパーレスを推進できます。
保管義務: 税務署や市区町村から提出を求められた場合を除き、会社側で7年間保管する必要があります。
4. 給与所得に対する源泉徴収簿(令和7年分など)
源泉徴収簿は、給与の支払いと源泉徴収の実態を月ごとに記録しておくための書類です。これも会社内部の書類であり、税務署への提出は不要ですが、7年間の保管義務があります。
4-1. 記入内容
源泉徴収簿には、以下の内容を月ごとに記録していきます。
| 項目 | 記載内容 |
| 支給月日 | 役員報酬を支払った日付 |
| 総支給金額 | 役員報酬の総額 |
| 社会保険料等控除額 | 健康保険料、厚生年金保険料など(変更に注意) |
| 社会保険料等控除後の給与額 | 所得税の計算基準となる金額 |
| 算出税額 | 0円(甲欄適用かつ8.8万円未満のため) |
4-2. 社会保険料の変更に注意
源泉徴収簿は、年間を通して管理する必要がありますが、特に毎年4月に社会保険料(標準報酬月額)が変更されることがあるため、このタイミングで控除額の欄を更新し忘れないように注意が必要です。
4-3. デジタル処理と保管義務
これも国税庁のウェブサイトからダウンロードできる入力用のPDFを活用し、デジタルで作成・管理しましょう。紙の書類は破棄し、データファイルを安全に保管することで、7年間の保管義務を効率的に果たせます。
セクション5:設立初年度の教訓とペーパーレス化
ここまでの内容をまとめると、マイクロ法人の年末調整に関する事務処理は、以下の2点に集約されます。
- 個人として「マル扶」(扶養控除等申告書)を記入し、会社に提出する。(甲欄適用のため)
- 会社として「マル扶」と「源泉徴収簿」を7年間管理・保管する。(毎月の給与管理のため)
設立初年度は封筒が届かない場合がある
余談ですが、僕の会社の場合、法人設立届を8月に行ったためか、本来11月に送られてくるはずの年末調整の茶封筒が届きませんでした。
税務署に問い合わせたところ、発送作業を業者に委託している関係で、設立直後の法人がリストから漏れてしまうケースがあるとのことでした。
もし、マイクロ法人設立初年度で、夏の終わり以降に届け出をされた方は、年末調整の書類が届かない可能性を考慮し、ご自身で国税庁のウェブサイトから必要な書類をダウンロードする準備が必要です。
僕自身、バーチャルオフィスで法人登記していることもあり、郵送の手間を省くためにも、税務署にやるべきことを確認し、全てデジタルで処理できることが判明したおかげで、スムーズにペーパーレスでの事務処理体制をスタートさせることができました。
法人を持ったからには、行政からの指示を待つ「受け身」ではなく、自分から積極的に情報を学び、確認しに行く姿勢が非常に重要だと痛感した出来事でした。
確定申告に向けて
もうすぐ、マイクロ法人設立後初めての確定申告の時期を迎えます。これまでの個人事業だけの確定申告とは異なり、法人税の申告書や法人事業概況説明書など、多くの書類が必要となります。
これらの事務処理を着実に進め、マイクロ法人の運営を盤石なものにしていきましょう。