マイクロ法人は、個人事業主が節税や社会保険料の削減を目的に設立する小規模な法人のことを指します。通常、1人で運営する法人で、個人事業と併用するケースが一般的です。その最大の目的は、社会保険料の削減や税金の節約、そして資金繰りの改善です。
まず、マイクロ法人の大きなメリットとして挙げられるのが「社会保険料の削減」です。個人事業主の場合、国民健康保険と国民年金を支払わなければなりませんが、所得が上がるとその負担額も増えてしまいます。これに対して、法人を設立し、役員報酬を自分に支払うことで、健康保険と厚生年金の負担額を調整できます。つまり、役員報酬の額を調節することで、社会保険料の削減が可能になるわけです。
次に、「税金の節約」についてです。個人事業主の場合、青色申告をすれば最大65万円の控除が受けられます。一方で、法人には給与所得控除があり、最低でも55万円の控除が適用されます。また、法人に売上や経費を分散することで、所得税の負担を軽減することもできます。これは法人税の節税効果も期待できるので、トータルで見て税負担を軽くできるというメリットがあります。
さらに、「経費の取り扱い」もマイクロ法人の魅力の一つです。法人では、個人事業主では計上できないような経費も計上可能です。たとえば、一人での食事代や生命保険料の全額を経費にすることができたり、法人名義で支払う家賃を経費化したりすることが可能です。特に、99㎡以下の物件であれば、家賃の8割以上を経費として計上できるため、家賃負担が大きい場合には大きな節税効果が期待できます。
また、「補助金の活用」も法人化のメリットです。たとえば、持続化補助金は個人事業主と法人の両方で申請でき、販路拡大に役立つ補助金です。また、IT補助金やものづくり補助金などは、法人で複数申請が可能なため、事業の発展に活用できる機会が広がります。
一方で、マイクロ法人にはデメリットもあります。一つ目は、「管理の手間」です。法人を設立すると、税務申告などの管理業務が増えるため、個人事業主のときよりも事務作業が煩雑になります。法人税の申告は個人の確定申告よりも複雑で、税理士に依頼しなければならない場合も多いです。これは手間だけでなく、コスト面でも負担になります。
二つ目は、「将来の年金への影響」です。社会保険料を削減することで、その分、将来の年金額が減少するリスクがあります。年金をあてにせず、自分で資産運用をして老後に備える必要があるため、資産運用のスキルや知識も求められます。
三つ目は、「小規模企業共済の制限」です。小規模企業共済は個人事業主だけに適用されるもので、法人では利用できません。つまり、法人化すると退職金の積み立てとしてこの共済を使うことができなくなります。法人での退職金積立の仕組みを別途考える必要が出てきます。
それでは詳しく見ていきましょう。
マイクロ法人とは
- 定義: 個人事業主が社会保険料や税金の節税を目的に設立する小規模な法人を指します。通常、1人法人として個人事業と併用されます。
- 目的: 主な目的は社会保険料の削減や税金の節約、資金繰りの改善です。
マイクロ法人のメリット
社会保険料の削減
個人事業主の場合: 国民健康保険と国民年金を支払う必要があり、所得が上がると国民健康保険の負担も増加します。
法人設立によるメリット: 法人を設立し、役員報酬を受け取ることで、社会保険料の負担を大幅に削減可能です。役員報酬の額により健康保険と厚生年金の負担が変わります。
税金の節約
青色申告特別控除: 個人事業主の場合、最大65万円の控除が受けられます。法人の場合、給与所得控除があり、最低でも55万円の控除が可能です。
所得の分散: 売上や経費を法人に分散させることで、所得税の負担を軽減できます。また、法人税の節税効果も期待できます。
経費の取り扱い
法人での経費計上: 法人では、個人事業主が計上できない経費を計上することができます。例えば、1人での食事代や生命保険料の全額控除が可能です。
家賃の経費化: 法人名義での家賃支払いにより、経費として計上できる額が増えます。99㎡以下の物件の場合、家賃の8割以上を経費にすることが可能です。
補助金の活用
持続化補助金: 個人事業主と法人の両方で申請可能です。採択率が高く、販路開拓に役立ちます。
事業再構築補助金: 個人と法人で1つのみ申請可能ですが、IT補助金やものづくり補助金は複数申請が可能です。
マイクロ法人のデメリット
- 管理の手間: 法人を設立することで、管理業務が増えます。また、法人税の申告は個人の申告よりも複雑で、税理士に依頼する必要がある場合があります。
- 将来の年金への影響: 社会保険料を削減することで、将来受け取る年金が減少する可能性があります。年金に依存せず、資産運用を重視する考え方が必要です。
- 小規模企業共済の制限: 小規模企業共済は個人にのみ適用されるため、法人では利用できません。そのため、法人では退職金の積立として利用できません。
このように、マイクロ法人の設立にはさまざまなメリットとデメリットがあるため、個々の状況に応じて慎重に判断する必要があります。