【経営者必見】損益分岐点と収支分岐点の徹底解説!知らないとまずい、会社を黒字化しお金を残すための最重要指標

節税・経費

「うちの会社、一体いくら売り上げれば赤字から抜け出せるんだろう?」
「利益は出ているはずなのに、なぜか手元にお金が残らない…」

多くの経営者が抱えるこのような悩みは、会社の「損益分岐点」と「収支分岐点」を正確に把握・管理できていないことに起因するケースが少なくありません。これらは、単なる会計用語ではなく、会社の存続と成長を左右する、経営の羅針盤とも言える極めて重要な指標です。

この記事では、損益分岐点と収支分岐点とは何か、なぜこれらを理解することが経営にとって不可欠なのか、そしてそれぞれの計算方法や、これらを改善し、会社を真の黒字化(会計上の利益だけでなく、手元にお金が残る状態)へと導くための具体的なアクションプランについて、分かりやすく徹底的に解説していきます。

損益分岐点とは?「赤字」と「黒字」の境界線を知る

まず、損益分岐点(そんえきぶんきてん)について理解を深めましょう。

損益分岐点の定義

損益分岐点とは、売上高と費用の総額がちょうど等しくなり、利益も損失も出ない(プラマイゼロ)状態になる売上高のことです。この損益分岐点売上高を上回れば黒字となり、下回れば赤字となります。つまり、会社が最低限達成しなければならない売上目標の基準点と言えます。

なぜ損益分岐点の把握が重要なのか?

  1. 目標設定の明確化:
    損益分岐点を知ることで、「最低でもこれだけは売り上げなければならない」という具体的な目標が明確になります。これに基づき、より現実的で達成可能な売上計画や利益計画を立てることができます。
  2. 経営判断の質の向上:
    例えば、値下げを検討する際に、どれだけ販売数量を増やせば損益分岐点をクリアできるのか、あるいはコスト削減策が損益分岐点にどの程度影響を与えるのかなどをシミュレーションでき、より合理的な経営判断が可能になります。
  3. 赤字脱却への道筋:
    赤字経営に陥っている場合、損益分岐点を把握することで、黒字化までにあとどれくらいの売上が必要なのか、あるいはどれくらいのコスト削減が必要なのかが具体的に見えてきます。

損益分岐点を理解せずに経営計画を立てることは、目的地も海図も持たずに航海に出るようなものです。根拠のない売上目標は、たとえ達成できたとしても、結果的に赤字を招く(例えば、過度な値引きによる達成など)可能性すらあります。

損益分岐点の計算方法:固定費と変動費、限界利益を理解する

損益分岐点売上高を計算するためには、まず会社の費用を「固定費」と「変動費」に分け、そして「限界利益(率)」を理解する必要があります。

  • 固定費: 売上の増減にかかわらず、毎月一定額発生する費用。
    • 例:事務所家賃、正社員の人件費(基本給部分)、減価償却費、リース料、水道光熱費の基本料金部分など。
  • 変動費: 売上の増減に比例して変動する費用。
    • 例:商品の仕入れ原価、原材料費、外注費、販売手数料、運送費など。
  • 限界利益: 売上高から変動費を差し引いたもの。商品やサービスを1単位追加で販売したときに得られる利益であり、固定費を回収し、最終的な利益を生み出すための源泉となります。
    • 限界利益 = 売上高 - 変動費
  • 限界利益率: 売上高に占める限界利益の割合。
    • 限界利益率 (%) = 限界利益 ÷ 売上高 × 100

これらの要素を使って、損益分岐点売上高は以下の計算式で求められます。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率

【図解で理解する損益分岐点】

[ここに、横軸に売上高、縦軸に費用・利益を取り、売上高線、固定費線、総費用線(固定費+変動費)が交差する点を損益分岐点として示すような簡単なグラフをイメージしてください。損益分岐点より左側が赤字領域、右側が黒字領域となります。]

この計算式が意味するのは、「限界利益で、どれだけの固定費をカバーできるか」ということです。限界利益でちょうど固定費を全額賄える売上高が、損益分岐点売上高となるのです。

収支分岐点とは?「利益」だけでなく「お金」が残るラインを知る

損益分岐点をクリアし、会計上は黒字になっていても、「なぜか手元にお金がない…」という状況は、多くの中小企業で発生しがちです。これは、会計上の利益と、実際の現金の動き(キャッシュフロー)が必ずしも一致しないためです。

そこで重要になるのが、収支分岐点(しゅうしぶんきてん)という考え方です。

収支分岐点の定義

収支分岐点とは、現金の収入と現金の支出がちょうど等しくなり、手元の現金が増えも減りもしない(キャッシュフローがプラマイゼロ)状態になる売上高のことです。この収支分岐点売上高を上回れば手元の現金が増加し、下回れば現金が減少していきます。

なぜ収支分岐点の把握が重要なのか?~黒字倒産の回避~

  • 黒字倒産の防止: 会計上は利益が出ていても、現金の支払いが先行したり、売掛金の回収が遅れたりすると、手元資金が不足し、支払いができなくなって倒産してしまう「黒字倒産」のリスクがあります。収支分岐点を把握することで、このリスクを回避しやすくなります。
  • 真の経営安定: 会社を継続的に運営していくためには、会計上の利益だけでなく、実際に自由に使える現金を手元に残していくことが不可欠です。収支分岐点は、そのための真の目標売上高を示してくれます。

多くの中小企業の倒産原因を調査すると、その半数以上が「黒字倒産」であるというデータもあります。損益分岐点だけでなく、収支分岐点も併せて管理することが、いかに重要であるかが分かります。

収支分岐点の計算方法:損益分岐点との違いは「現金の動かない費用・収益」と「経費にならない現金支出」

収支分岐点売上高の計算は、損益分岐点売上高の計算よりも少し複雑になります。なぜなら、損益計算書(PL)上の費用・収益と、実際の現金の動きには以下のようなズレがあるからです。

  • 現金の支出を伴わない費用:
    • 減価償却費: 会計上は費用として計上されますが、その計上時点では現金の支出はありません(現金支出は資産購入時)。
  • 経費にはならないが現金の支出を伴うもの:
    • 借入金の元本返斎: 損益計算書上は経費になりませんが、確実に現金は減少します(利息部分は経費)。
  • その他、PL上の利益と現金の動きをズラす要因:
    • 売掛金・買掛金の増減: 売掛金が増えれば現金は減り、買掛金が増えれば現金は増えます(逆も然り)。
    • 在庫の増減: 在庫が増えれば現金は減り、在庫が減れば現金は増えます。
    • 設備投資: 大きな現金支出を伴いますが、全額がその期の経費になるわけではありません(減価償却)。

収支分岐点売上高を正確に計算するためには、これらの現金の動きを考慮する必要があります。
簡易的な計算方法としては、まず損益分岐点と同様に固定費を把握し、そこから「現金の支出を伴わない固定費(主に減価償却費)」を差し引き、逆に「経費にはならないが固定的に現金支出があるもの(主に借入金の元本返済額)」を加算して、「現金ベースの固定費」を算出します。そして、これを限界利益率で割り戻します。

収支分岐点売上高(簡易計算) ≒ (固定費 - 減価償却費 + 借入金元本返済額) ÷ 限界利益率

【図解で理解する収支分岐点】

[ここに、損益分岐点のグラフに加えて、減価償却費の影響で総費用線が下がり、借入金元本返済の影響で総費用線が上がる様子を示し、新たな交差点を収支分岐点として示すグラフをイメージしてください。]

  • 減価償却費 > 借入金元本返済額 の場合: 収支分岐点売上高は損益分岐点売上高よりも低くなる傾向があります。つまり、会計上は赤字でも、手元の現金はプラスになる可能性があります。これは、多額の設備投資を行った直後などで、減価償却費が大きい企業に見られます。
  • 減価償却費 < 借入金元本返済額 の場合: 収支分岐点売上高は損益分岐点売上高よりも高くなる傾向があります。つまり、会計上は黒字でも、手元の現金はマイナスになる(黒字倒産のリスクがある)可能性があります。これは、借入金の返済負担が重い企業に見られます。

実際には、設備投資のタイミングや税金の支払いなどもキャッシュフローに影響するため、より正確な収支分岐点の把握には、詳細な資金繰り表の作成が不可欠です。しかし、上記の簡易計算式は、自社の収支構造の傾向を掴む上で役立ちます。

(※詳細な計算式や、税金支払いを考慮した収支分岐点の計算は非常に複雑になるため、専門家である税理士に相談することを強くお勧めします。多くの税理士事務所では、このような分析をサポートするツールやノウハウを持っています。)

損益分岐点・収支分岐点を改善し、会社を強くする!今日からできる5つのアクション

損益分岐点と収支分岐点を把握したら、次はいかにしてこれらを改善し、より低い売上高でも利益とキャッシュを生み出せる「強い会社」にしていくかを考えなければなりません。ここでは、今日からでも取り組める5つの具体的な改善アクションをご紹介します。

アクション1:固定費の徹底的な削減

固定費は、売上の有無にかかわらず発生するため、これが高いと損益分岐点・収支分岐点を押し上げる大きな要因となります。聖域を設けず、あらゆる固定費を見直しましょう。

  • 事務所家賃: より賃料の安い場所への移転、オフィススペースの縮小、シェアオフィスの活用、リモートワークの導入などを検討。
  • 人件費: 単なる人員削減ではなく、業務効率化による残業代削減、生産性向上、適材適所の人員配置、アウトソーシングの活用、役員報酬の適正化などを検討。
  • リース料・保険料: 契約内容を精査し、不要な契約の解約や、より有利な条件への切り替えを交渉。
  • その他固定経費: 定期購入しているサービスや備品など、本当に必要なものか、もっと安く済ませられないかを見直す。

アクション2:変動費率の改善(限界利益率の向上)

変動費率が高い(=限界利益率が低い)と、売上を増やしてもなかなか利益が出ません。変動費率を改善し、限界利益率を高める努力が必要です。

  • 仕入れコストの削減: 複数の仕入れ先との価格交渉、大量購入による割引、共同購入、仕入れルートの見直し、内製化の検討など。
  • 製造原価の低減(製造業の場合): 生産プロセスの効率化、歩留まりの改善、不良品の削減、原材料の代替検討など。
  • 外注費の見直し: 内製化できる業務はないか、よりコストパフォーマンスの高い外注先はないか検討。

アクション3:利益構造の改善(高付加価値化・高利益率商品へのシフト)

単にコストを下げるだけでなく、より少ない売上でより多くの利益を生み出せるような「利益構造」へと転換していくことが重要です。

  • 商品・サービスポートフォリオの見直し:
    • 利益率の高い商品・サービス、成長性の高い分野に経営資源を集中します。
    • 不採算商品や利益率の低い商品からは、勇気を持って撤退または縮小を検討します。
  • 高付加価値化:
    • 商品やサービスの品質向上、独自性の強化、ブランド価値の向上などにより、顧客にとっての提供価値を高め、価格競争から脱却します。
  • アップセル・クロスセルの推進:
    • 既存顧客に対して、より高単価な商品(アップセル)や関連商品(クロスセル)を提案し、顧客単価を引き上げます。
  • フロントエンド商品とバックエンド商品の設計:
    • 集客を目的とした低価格・高魅力の「フロントエンド商品」と、そこで信頼を得た顧客に対して高利益率の「バックエンド商品」を販売するという戦略的な商品構成を考えます。

アクション4:値上げの断行(勇気と戦略が必要)

多くの経営者が躊躇するのが「値上げ」ですが、昨今の物価上昇や人件費高騰を考慮すると、避けては通れない選択肢です。

  • 提供価値に見合った価格設定: 自社の商品・サービスの価値を正しく評価し、それに見合うだけの価格を設定します。安売りは、自社の価値を自ら貶める行為です。
  • 顧客への丁寧な説明と理解: 値上げの理由(原材料費の高騰、品質向上のための投資など)を顧客に丁寧に説明し、理解と納得を得る努力が必要です。
  • 付加価値の向上とセットで行う: 単なる値上げではなく、それに伴う品質向上やサービス改善を同時に行うことで、顧客の離反を防ぎやすくなります。
  • 段階的な値上げ: 急激な値上げではなく、段階的に行うことで、顧客への影響を緩和することも検討しましょう。

アクション5:売上アップへの飽くなき挑戦(量と質の両輪)

コスト削減や利益率改善も重要ですが、最終的に会社の成長と利益・キャッシュの最大化を実現するためには、「売上アップ」への継続的な挑戦が不可欠です。

  • 新規顧客開拓: 既存の市場だけでなく、新たなターゲット顧客層や未開拓の市場へのアプローチを検討します。Webマーケティング、SNS活用、展示会出展、紹介制度の導入など、多様な手段を駆使します。
  • 既存顧客のリピート率向上: 顧客満足度を高め、長期的な関係を築くことで、安定的なリピート購入を促します。CRM(顧客関係管理)システムの活用も有効です。
  • 「プラスワン戦略」の実践: 既存の顧客に対して、もう一品追加で購入してもらう、あるいはワンランク上の商品を提案するといった、客単価を上げるための「プラスワン」の働きかけを日常的に行います。
  • 営業力強化と販売チャネルの多様化: 営業担当者のスキルアップ、営業プロセスの効率化、そして実店舗、ECサイト、代理店など、複数の販売チャネルを効果的に組み合わせます。

これらの改善アクションは、一つひとつは地道なものかもしれませんが、継続的に取り組むことで、確実に会社の体質を強化し、損益分岐点・収支分岐点を引き下げ、より少ない売上でも利益とキャッシュを生み出せる経営へと繋がっていきます。

まとめ:損益分岐点・収支分岐点は経営の健康診断!根拠ある目標で、お金の残る会社へ!

損益分岐点と収支分岐点は、あなたの会社の経営状態を客観的に把握し、具体的な改善目標を設定するための、まさに「健康診断」のようなものです。これらの指標を理解し、常に意識して経営を行うことで、

  • 根拠のある売上目標・利益目標を設定できる
  • コスト削減や価格戦略の判断基準が明確になる
  • 資金繰りの安定化と黒字倒産のリスク回避に繋がる
  • より利益の出やすい、キャッシュの残りやすい経営体質へと改善できる

といった多くのメリットが得られます。

本日の黒字学園:「根拠のある目標がない成り行き経営では、会社にお金を残していくことはできない。しっかりキャッシュを残したければ、数字の根拠を把握しろ!」

もし、「うちの会社の損益分岐点や収支分岐点が分からない…」「どうやって計算・分析すればいいのか自信がない…」という場合は、遠慮なく顧問税理士などの専門家に相談しましょう。専門家は、あなたの会社の状況に合わせて、これらの指標を算出し、具体的な改善策を共に考え、黒字化への道をサポートしてくれるはずです。

損益分岐点と収支分岐点を道しるべとし、データに基づいた意思決定を重ねることで、あなたの会社を、単に利益が出るだけでなく、「しっかりとお金が残り、持続的に成長できる企業」へと導いていきましょう。この記事が、そのための一助となれば幸いです。