【社長必見!】大儲けしたはずのお金が消える7つの理由とは?知らないと危険な「勘定合って銭足らず」の罠

節税・経費

「今期は過去最高の利益が出た!なのに、なぜか手元にお金がない…」多くの経営者が一度は経験するこの不可解な現象。

「勘定合って銭足らず」とはよく言ったもので、損益計算書(PL)上は黒字でも、実際に使える現金(キャッシュ)が増えていない、むしろ減っているという事態は、なぜ起こるのでしょうか?

本記事では、大儲けしたはずのお金が会社から消えてしまう7つの本当の理由を、貸借対照表(BS)の仕組みと絡めながら徹底解説します。このカラクリを理解しなければ、あなたの会社も「利益は出ているのに資金繰りが苦しい」という貧乏企業から抜け出せないかもしれません。

なぜ「黒字なのに金がない」現象が起きるのか?BSの基本構造を理解する

まず、なぜPL上は利益が出ているのにお金が増えないのか、その根本的な理由をBSの構造から理解しましょう。

  • PL上の利益とBSの関係
    税金を支払った後のPL上の利益(当期純利益)は、BSの「純資産の部」にある「利益剰余金」として積み上がっていきます。つまり、利益が出れば出るほど、BSの右側(純資産)は増加します。
  • BSのバランス
    BSは、左側の「資産の部(お金の運用方法)」と、右側の「負債の部(他人資本)+純資産の部(自己資本)(お金の調達方法)」の合計額が必ず一致するようにできています。
  • 利益増=資産増の原則
    純資産が増えれば(BSの右側が増えれば)、それに応じて資産も増える(BSの左側も増える)はずです。つまり、原則として、利益が出ればキャッシュ(資産の一部)も増えるはずなのです。

では、なぜこの原則通りにいかないのでしょうか?それは、「キャッシュ以外の資産が増加する」「負債が減少する」という2つの大きな要因があるからです。

  • キャッシュ以外の資産の増加
    BSの左側の総額が変わらないまま、キャッシュ以外の資産(土地、建物、在庫など)が増えれば、相対的にキャッシュは減少します。
  • 負債の減少
    BSの右側の負債が減少すると(例:借金の返済)、BS全体のサイズが小さくなります。この時、キャッシュ以外の資産が減らなければ、キャッシュが減少することになります。

この2つの視点を持ちながら、お金が消える具体的な7つの理由を見ていきましょう。

大儲けしたお金が消える7つの本当の理由

1. 投資(株式、保険積立、会員権など)の増加

「会社に余裕資金ができたから、運用しよう」と、株式投資をしたり、節税目的で保険に加入して積立金を増やしたり、あるいはゴルフ会員権などを購入したりするケースです。これらはBS上では「投資その他の資産」として計上されますが、キャッシュがこれらの投資資産に形を変えただけであり、手元のキャッシュは減少します。
利益が1,000万円出ても、投資に2,000万円使えば、他の要因がなければキャッシュは1,000万円減ってしまいます。資金繰りに余裕のない会社が安易に手を出すべきではありません。本当に余裕資金があり、明確な目的がある場合に限り検討すべきです。

2. 前払費用(デポジット、年間契約料など)の増加

サービスを受ける前に代金を支払う「前払費用」も、キャッシュを減少させる要因です。例えば、広告代理店に年間の広告費をデポジットとして一括で支払ったり、ソフトウェアの年間ライセンス料を前払いしたりするケースです。
支払った時点ではまだサービスを受けていないため、PL上は経費として計上されず、BS上では「前払費用」という資産として計上されます。しかし、お金は確実に会社から出て行っているため、キャッシュは減少します。

3. 設備投資(機械、車両、建物など)の増加

事業に必要な機械や車両、建物を購入する「設備投資」も、当然ながらキャッシュを減少させます。これらの固定資産は、購入時に多額のキャッシュアウトを伴います。
もちろん、事業成長のために必要な投資であれば問題ありませんが、その投資が本当に収益に繋がるのか、資金調達(借入など)とのバランスは取れているのかを慎重に検討する必要があります。手元のキャッシュだけで賄おうとすると、一気に資金繰りが悪化する可能性があります。

4. 在庫の増加

「機会損失を防ぎたい」「品揃えを豊富にしたい」という思いから、必要以上に在庫を抱えてしまうケースです。在庫はBS上では「棚卸資産」として計上されますが、仕入れのためにお金は出て行っています。
過剰な在庫は、

  • 資金の固定化:売れるまで現金化されません。
  • 保管コストの発生:倉庫代や管理費用がかかります。
  • 陳腐化リスク:流行遅れになったり、品質が劣化したりする可能性があります。
  • 借入金の増加(金利負担):在庫を抱えるために追加の資金調達が必要になることもあります。
    「在庫は少ないほど良い」を原則とし、適正在庫を維持するための徹底した管理が求められます。

5. 売上債権(売掛金、受取手形など)の増加

商品やサービスを販売しても、その代金がすぐに入金されるとは限りません。ツケで販売した場合の「売掛金」や、手形で受け取った場合の「受取手形」といった「売上債権」が増加すると、PL上は売上が計上されて利益が出ていても、実際のお金はまだ会社に入ってきていない状態です。
売上を上げることに注力するあまり、回収がおろそかになっている会社は少なくありません。売上は、回収して初めてキャッシュになります。1日でも入金が遅れたらすぐに督促するなど、徹底した債権管理が必要です。回収できない売掛金は、会社にとって大きな損失となります。

6. 消費税の納税

消費税は、会計処理方法(税抜経理が一般的)によっては、PL上の利益計算には直接影響しません。しかし、納税時にはまとまったキャッシュが出ていきます。
決算時に「未払消費税」としてBSの負債の部に計上され、その後納付することでキャッシュが減少します。特に、売上が大きい会社や、中間納付が必要な会社は、納税資金をあらかじめ確保しておかないと、いざ納付というタイミングで資金ショートを起こす可能性があります。税金の中で最も滞納が多いのが消費税と言われており、注意が必要です。税金を滞納すると、金融機関からの信用を失い、新規融資が受けられなくなるリスクもあります。

7. 借金の元本返済

金融機関からの借入金の元本返済も、PL上の経費にはなりませんが、確実にキャッシュが出ていく項目です。利息部分は経費になりますが、元本部分はBSの負債の部が減少するだけです。
多くの経営者がこの点を理解しておらず、「利益が出ているから大丈夫」と安易に考えてしまいがちです。しかし、借入金の返済額以上の利益(税引後)を出せていなければ、キャッシュはどんどん減っていきます。
借金は、将来の利益を前借りしているようなものです。借りたお金を使って事業を成長させ、生み出した利益で返済していくという健全なサイクルを確立しなければ、いずれ返済に行き詰まってしまいます。

まとめ:お金の流れを正しく把握し、キャッシュリッチな企業へ

大儲けしたはずのお金が消えてしまう7つの理由、ご理解いただけたでしょうか。これらの多くは、BS上の資産の増加や負債の減少といった形で現れます。
PL上の利益だけを見て一喜一憂するのではなく、BSとキャッシュフロー計算書(お金の実際の流れを示す計算書)をしっかりと確認し、会社のお金の動き全体を把握することが重要です。

「利益は出ているのにお金がない」という状態から脱却するためには、

  • 不要な投資をしない
  • 前払費用を抑える
  • 過剰な設備投資をしない
  • 適正在庫を維持する
  • 売掛金の回収を徹底する
  • 納税資金を確保する
  • 借金返済以上の利益を出す
    といった基本的なことを徹底する必要があります。

そして、これらの状況を日々正確に把握するために最も有効なのが「資金繰り表」の作成と活用です。資金繰り表を作成することで、いつ、どこからお金が入り、どこへ、どのように出ていくのかが一目瞭然となり、「なぜかお金がない」という状態から抜け出すことができます。

30年経営してきて初めてこれらの事実に気づいた、という社長もいらっしゃいます。しかし、それでは遅すぎます。できれば起業する前から、お金の流れに関する正しい知識を身につけ、一直線に目標達成に向けて進んでいただきたいと願っています。

この記事が貴社の事業の一助になれば幸いです。