「もっと手取り収入を増やしたい…」
「毎月の給与明細を見るたびに、税金や社会保険料の高さにため息が出てしまう…」
会社員として働く多くの方、そして日々奮闘する個人事業主の皆さん。このように感じたことは一度や二度ではないでしょう。昇給や売上アップを目指して努力するのはもちろん大切ですが、実は、 今すぐ取り組める、合法的な「裏ワザ」 を使って、手取り収入を増やす方法が存在することをご存知でしょうか。
この記事では、
- 会社員向け: 交通費や出張が「お小遣い」に変わる?税金がかからない 「非課税手当」 の驚くべき仕組み
- 個人事業主向け: 所得が増えてきたら絶対に検討すべき! 「マイクロ法人」 を活用した究極の所得分散・節税術
といった、あなたの手取り額に直接インパクトを与える、2つの強力な戦略について、誰にでも分かるように徹底的に解説していきます。
この記事を最後まで読めば、あなたは税金の仕組みを賢く利用し、自身の可処分所得を最大化するための、具体的で実践的な知識を身につけることができるはずです。
第1章:【会社員向け】その通勤・出張、もっとお得にできる!「非課税手当」活用術
会社員の方が、今すぐ実践できる手取りアップ術。その鍵は、会社から支給される 「手当」 にあります。給与(基本給)を上げるのは簡単ではありませんが、特定の「手当」を活用することで、所得税も社会保険料もかからない、まるまる手元に残る収入を得ることが可能なのです。
① 通勤手当(マイカー通勤):距離に応じて非課税枠を最大限活用しよう
電車通勤の場合、通勤手当は実費が支給されるため、手取りが増えることはありません。しかし、マイカー(自家用車)で通勤している方は、大きなチャンスがあります。
マイカー通勤の交通費は、所得税法で、自宅から会社までの距離に応じて「非課税」となる上限額が定められています。
片道の通勤距離 | 非課税となる上限額(月額) |
2km未満 | (全額課税) |
2km以上 10km未満 | 4,200円 |
10km以上 15km未満 | 7,100円 |
15km以上 25km未満 | 12,900円 |
(中略) | |
55km以上 | 31,600円 |
もし、あなたの会社がガソリン代の実費精算しか行っていない場合、それは非常にもったいない状態かもしれません。会社の給与規程を変更し、この非課税上限額を「通勤手当」として支給してもらうように交渉するのです。
例えば、通勤距離が12kmの方であれば、月々7,100円、年間で85,200円もの非課税収入を得ることができます。これは、給与を月1万円近く上げるのと同等のインパクトがあります。
② 出張手当(旅費規程):出張が「ボーナス」に変わる魔法
出張が多い方にとって、これほど強力な裏ワザはありません。会社に 「旅費規程(りょひきてい)」 という社内ルールを作成してもらうことで、出張が実質的なボーナスに変わる可能性があるのです。
【旅費規程とは?】
出張の際の交通費や宿泊費、日当などの支給ルールを定めたものです。この規程に基づいて支給される「手当」は、経費精算の手間を省くという目的から、税務上、非常に有利な扱いを受けます。
旅費規程で、「1泊の出張につき、宿泊手当として15,000円を支給する」と定めたとします。
あなたが名古屋に出張し、実際に宿泊したビジネスホテルの料金が5,000円だった場合、どうなるでしょうか。
- 会社から、宿泊手当として15,000円が支給されます。
- あなたは、実際に支払ったホテル代5,000円を自腹で支払います。
- 差額の10,000円は、あなたのポケットに入ります。
そして、この 差額の10,000円には、所得税も社会保険料も一切かかりません。 まるまる手取りとなる、非課税のお小遣いが生まれるのです。
もし、月に10日間の出張があれば、それだけで毎月10万円、年間で120万円もの非課税収入を得ることも、理論上は可能です。
この仕組みは、宿泊費だけでなく、交通費(日帰り出張の日当など)にも適用できます。会社が定めた手当の範囲内で、あなたがヒッチハイクをしようが、夜行バスを使おうが、それはあなたの自由です。交通費や宿泊費を節約すればするほど、あなたの非課税収入は増えていきます。
もちろん、この制度の本来の目的は「経費精算の簡略化」です。しかし、そのルールを賢く活用することで、従業員の手取りを合法的に増やすことができる、まさにWin-Winの制度なのです。
もし、あなたの会社にこの制度がなければ、社長や経理担当者に「旅費規程という便利なものがあるらしいですよ」と、提案してみてはいかがでしょうか。
第2章:【個人事業主向け】究極の節税・手取りアップ術「マイクロ法人」
次に、個人事業主・フリーランスの方が、手取りを最大化するための究極の戦略をご紹介します。それは、 「マイクロ法人」 の設立です。
なぜ「マイクロ法人」が有効なのか?
個人事業で所得(利益)が順調に増えてくると、多くの人が法人化(法人成り)を検討します。しかし、ここでよくある間違いが、個人事業を完全に廃業し、すべての事業を一つの法人に移してしまうことです。
最も賢い戦略は、個人事業はそのまま残しつつ、事業の一部を切り出して、社長一人だけの小さな会社「マイクロ法人」を設立し、個人と法人を並行して運営することです。
この「個人事業主+マイクロ法人」という二刀流の体制が、なぜこれほど強力な節税・手取りアップに繋がるのでしょうか。その理由は、 「所得の分散」と「社会保険料の最適化」 にあります。
① 所得分散による「税率コントロール」
日本の所得税は、所得が増えれば増えるほど税率が高くなる 「累進課税」 です。所得が1,000万円を超えると、税率は住民税と合わせて40%を超え、最高で55%にも達します。
- 個人事業主一本の場合:
1,000万円の所得があれば、その1,000万円に対して高い累進税率が適用されます。 - 「個人+マイクロ法人」の場合:
例えば、1,000万円の所得を、個人事業の所得500万円と、マイクロ法人からの役員報酬500万円に分散させます。- 個人事業: 500万円の所得に対して、比較的低い税率が適用される。
- マイクロ法人: 役員報酬500万円は法人の経費となり、法人税の対象となる利益を圧縮。個人としては、こちらも比較的低い税率が適用される。
このように、所得を二つに分散させることで、それぞれに低い税率が適用されるため、トータルで支払う税金の額を大幅に引き下げることができるのです。
② 社会保険料の劇的な削減
個人事業主が支払う国民健康保険料は、所得に応じて上限なく上がっていき、年間100万円を超えることも珍しくありません。
しかし、マイクロ法人を設立し、そこからの役員報酬を 社会保険料が最も安くなる水準(月額6万円程度) に設定します。そして、そのマイクロ法人で社会保険に加入するのです。
その結果、個人事業でどれだけ大きな所得があっても、あなたが支払う社会保険料は、マイクロ法人で設定した低い役員報酬に基づく、最低限の金額で済むようになります。
これにより、年間100万円を超えていた社会保険料の負担が、年間30万円程度まで劇的に削減されるケースも少なくありません。年間で70万円以上ものキャッシュが、手元に残ることになるのです。
マイクロ法人設立のデメリットとタイミング
もちろん、マイクロ法人の設立にはデメリットもあります。
- コスト: 法人設立費用(10万円~30万円程度)や、税理士への決算申告費用(年間20万円~)がかかる。
- 管理の手間: 個人と法人の2つの経理を、明確に分けて管理する必要がある。
これらのコストや手間を考慮しても、メリットが上回るようになるのが、一般的に個人事業の所得(利益)が800万円~1,000万円を超えたあたりと言われています。ご自身の事業がそのステージに達したのであれば、マイクロ法人の設立を本格的に検討する価値は、大いにあるでしょう。
まとめ:知識が、あなたの手取りを増やす最強の武器になる
今回は、会社員と個人事業主、それぞれの立場で手取り収入を増やすための、具体的で強力な戦略をご紹介しました。
- 会社員の方へ:
あなたの会社に 「マイカー通勤手当」や「旅費規程」 の制度はありますか?もしなければ、それは交渉の余地がある、手取りアップの大きなチャンスです。会社のルールを知り、賢く活用しましょう。 - 個人事業主の方へ:
あなたの所得は、800万円を超えていますか?もしそうなら、 「マイクロ法人」 という選択肢が、あなたの税金と社会保険料の負担を劇的に軽減し、手取りを大幅に増やす鍵となるかもしれません。
昇給や売上アップを待つだけが、収入を増やす方法ではありません。税金や社会保険の仕組みを正しく理解し、合法的な制度を戦略的に活用すること。それこそが、知識を行動に変え、自らの手で可処分所得を最大化するための、最も確実で賢明な方法なのです。
この記事があなたの経営の一助となれば幸いです。