「税理士の顧問料って、一体何をしてくれているのかよく分からない…」
「毎月顧問料を支払っているけど、料金に見合ったサービスを受けられているのだろうか?」
「もう少し顧問料を安くできないものか…」
多くの経営者や個人事業主の方が、税理士との顧問契約において、このような疑問や不満を抱えているのではないでしょうか。税理士の顧問料は、決して安いものではなく、その金額設定の根拠やサービス内容が不透明に感じられることも少なくありません。
しかし、税理士は、単に税務申告を代行するだけの存在ではありません。経営者の最も身近な相談相手として、資金繰り改善、節税対策、経営戦略の立案など、会社の成長を多角的にサポートしてくれる、かけがえのないパートナーとなり得るのです。
この記事では、税理士の顧問料の相場から、料金を適正化するための交渉術、そして支払っている顧問料以上の価値を引き出し、税理士を自社の成長エンジンとして最大限に活用するための具体的な方法について、分かりやすく徹底的に解説していきます。
税理士の顧問料、その相場と内訳は?
まず、税理士の顧問料がどの程度の金額で、どのようなサービス内容で構成されているのか、その一般的な相場観を理解しておきましょう。
一般的な顧問料の相場(目安)
税理士の顧問料は、事業の規模(売上高)、業種、訪問頻度、依頼する業務範囲などによって大きく変動しますが、おおよその目安は以下の通りです。
- 個人事業主の場合:
- 月次顧問契約: 月額1万円~3万円程度+決算・申告料10万円~20万円程度。年間で20万円~50万円程度が一般的です。
- 確定申告のみの依頼: 記帳代行の有無などによりますが、5万円~15万円程度。
- 法人の場合:
- 月次顧問契約: 月額3万円~5万円程度+決算・申告料15万円~30万円程度。年間で50万円~100万円程度が一般的な中小企業の相場と言えるでしょう。
顧問料に含まれる一般的なサービス内容
- 記帳代行または会計帳簿のチェック: 領収書や請求書などの資料を基に、会計ソフトへの入力を行う、あるいは自社で入力した内容をチェックする業務。
- 月次試算表の作成と報告: 毎月の業績をまとめた試算表を作成し、経営状況を報告。
- 税務相談: 日常的に発生する税務に関する相談への対応。
- 決算業務と税務申告書の作成・提出: 法人税、消費税、地方税などの決算・申告手続き。
- 年末調整・法定調書の作成: 従業員の年末調整や、源泉徴収票、支払調書などの作成・提出。
しかし、この「顧問」という言葉は非常に曖昧であり、どこまでのサービスが含まれているのかは、税理士事務所によって大きく異なります。 何かあった時に相談に乗るだけ、というスタンスの事務所もあれば、積極的に経営改善の提案まで行ってくれる事務所もあります。このサービス範囲の不明確さが、顧問料に対する不満や疑問の一因となっているのです。
顧問料を適正化する!税理士との料金交渉術
「顧問料が高い」と感じた場合、諦めてしまう必要はありません。税理士の顧問料も、他のサービスと同様に「交渉」の余地があります。
1. 契約時にサービス内容を明確にし、要望を伝える
- 交渉の最適なタイミングは「契約時」:
契約を結ぶ前に、「自社が税理士に何を求めているのか」を具体的に伝え、それが顧問料の範囲内で対応可能なのか、あるいは別途料金が発生するのかを明確にすることが最も重要です。 - 伝えるべき要望の例:
- 「毎月、試算表を基にした業績報告と経営分析をお願いしたい」
- 「資金繰り表の作成をサポートし、定期的に改善提案をしてほしい」
- 「銀行融資の際に、事業計画書の作成支援や面談への同席をお願いしたい」
- 「活用できる節税策や、補助金・助成金の情報を積極的に提供してほしい」
- 「言わなければ伝わらない」が基本:
税理士業界は、伝統的に「受け身」の姿勢の事務所も少なくありません。経営者側から具体的な要望を伝えなければ、最低限の申告業務しか行ってくれない可能性もあります。「言ったもん勝ち」という側面があることを認識し、遠慮せずに自社のニーズを伝えましょう。
2. 業務の切り分けによる料金削減交渉
- 顧問料を少しでも抑えたい場合、税理士の業務負担を軽減することで、料金交渉がしやすくなる場合があります。
- 最も一般的なのが「記帳の自社化」です。
- 領収書の整理や会計ソフトへの入力を自社で行うことで、税理士の作業量を減らし、その分の顧問料を減額してもらう交渉です。
- 近年は、クラウド会計ソフト(freee、マネーフォワードクラウドなど)の普及により、自社での記帳のハードルも下がっています。
- 注意点: 自社で記帳を行う場合は、正確な知識が必要です。誤った処理をしてしまうと、かえって税理士の修正作業が増え、結果的にコスト増に繋がる可能性もあるため、注意が必要です。
3. 交渉で料金が下がらなくても、サービス内容の拡充を求める
- 料金の引き下げが難しい場合でも、「その料金の範囲内で、もう少し〇〇のサポートを手厚くしてもらえませんか?」といったように、サービス内容の質や量を向上させる交渉も有効です。
- これにより、費用対効果が高まり、顧問料に対する納得感も増すでしょう。
顧問税理士を120%活用し、会社を成長させる秘訣
支払っている顧問料以上の価値を引き出し、税理士を単なる「申告代行業者」から「経営の最強パートナー」へと変えるためには、経営者側の積極的な活用姿勢が不可欠です。
1. プロの知識と経験を徹底的に活用する
- 「自分でやらない」という選択:
- 税務申告や各種届出、補助金の申請など、専門的な知識が必要で、かつ間違いが許されない手続きは、無理に自分でやろうとせず、プロである税理士に任せましょう。
- 経営者の時間は有限です。専門家に任せられることは任せ、経営者自身は、事業の成長に直結する、経営者にしかできない仕事(経営戦略の立案、営業活動、人材育成など)に集中することが、結果として最大の費用対効果を生み出します。
- 「無知はコスト」と心得る:
知らないが故に、活用できるはずの節税策や優遇制度を見逃したり、誤った手続きでペナルティを受けたりすることは、非常にもったいないことです。プロの知識を積極的に活用し、不要なコストを避けましょう。
2. セカンドオピニオンを恐れない
- 医療の世界で、主治医以外の医師に意見を求める「セカンドオピニオン」があるように、税理士の世界でもセカンドオピニオンは非常に有効です。
- なぜセカンドオピニオンが必要か?
- 顧問税理士が全ての分野に精通しているとは限りません。
- 顧問税理士が、必ずしも最新の情報や、自社にとって最適な提案をしてくれているとは限りません。
- 別の税理士の意見を聞くことで、新たな視点や、これまで気づかなかった問題点・改善策を発見できることがあります。
- セカンドオピニオンの活用方法:
- スポット相談: 特定のテーマ(事業承継、M&A、国際税務など)について、その分野に強い税理士に一度だけ相談する。
- セカンド顧問契約: 既存の顧問税理士との契約は維持しつつ、別の税理士とも顧問契約を結び、多角的なアドバイスを受ける。例えば、日常的な記帳や申告は料金の安い税理士に任せ、経営戦略や資金繰りに関する高度なコンサルティングは、別の専門性の高い税理士に依頼するといった使い分けも可能です。
- これからの時代は「税理士複数顧問」が当たり前に?
税務・経営環境が複雑化する中で、一人の税理士に全てを依存するのではなく、それぞれの専門性に応じて複数の税理士を使い分けるという考え方は、今後ますます重要になっていくでしょう。
3. 税理士を「人脈のハブ」として活用する
- 税理士は、多くの企業経営者や、弁護士、司法書士、社会保険労務士、金融機関の担当者など、様々な専門家とのネットワークを持っています。
- 具体的な要望を伝える:
- 「〇〇業界の経営者と繋がりたいのですが、どなたかご紹介いただけませんか?」
- 「融資に積極的な銀行の担当者を紹介してほしい」
- 「優秀なウェブデザイナーを探している」
といったように、事業発展に必要な人脈の紹介を積極的に依頼してみましょう。
- 税理士にとって、顧問先の事業が発展することは、自身の評価や喜びにも繋がります。多くの税理士は、顧問先の成長に繋がることであれば、喜んで人脈を紹介してくれるはずです。「言わなければ損」の精神で、積極的に活用しましょう。
4. 経営の「壁打ち相手」として活用する
- 経営者は、重要な意思決定を一人で行わなければならない「孤独な存在」でもあります。
- 税理士は、多くの企業の成功事例や失敗事例を見てきており、客観的な第三者の視点を持っています。
- 新たな事業計画や経営戦略について、税理士に話してみることで、自分では気づかなかったリスクや、新たな可能性を発見できることがあります。経営の「壁打ち相手」として、定期的にディスカッションの時間を持つことも非常に有効です。
5. 依頼する側の「姿勢」も重要
税理士を最大限に活用するためには、経営者側の姿勢も重要です。
- 資料は整理して、期日通りに提出する: 税理士の業務を円滑に進めるための基本的な協力姿勢です。
- 丸投げしない: 「あとはよろしく」と全てを丸投げするのではなく、自社の経営状況に関心を持ち、共に考えるパートナーとしての姿勢を示しましょう。
- 感謝の気持ちを伝える: 日頃のサポートに対して、感謝の気持ちを伝えることも、良好な人間関係を築く上で大切です。
顧問税理士とのミスマッチを感じたら?変更を検討する際のポイント
もし、現在の顧問税理士に対して、「相談しにくい」「提案がない」「レスポンスが遅い」といった不満を感じているのであれば、税理士の変更を検討することも一つの選択肢です。
- 変更のタイミング: 決算・申告業務が終わった直後などが、引き継ぎをスムーズに行いやすいため、一つの目安となります。
- 引き継ぎ: 新旧の税理士間で、過去の申告書や総勘定元帳などの資料の引き継ぎが必要となります。円満な関係で契約を終了できるよう、配慮が必要です。
- 新たな税理士選び: 次の税理士を選ぶ際には、今回解説したポイントを踏まえ、複数の候補と面談し、慎重に決定しましょう。
税理士の変更は勇気がいることかもしれませんが、会社を成長させるための前向きな経営判断と捉えるべきです。
まとめ:税理士は「コスト」ではなく「投資」。最強のパートナーシップで、会社の未来を切り拓こう!
税理士の顧問料を、単なる「コスト(経費)」として捉えるか、あるいは会社の未来を創るための「投資」として捉えるかで、その価値は大きく変わってきます。
税理士を最大限に活用するための鉄則
- 契約時に、自社の要望を具体的に伝え、サービス内容と料金を明確にする。
- 料金交渉を恐れない。料金引き下げが難しくても、サービス内容の拡充を求める。
- 専門的な手続きはプロに任せ、経営者は本業に集中する。
- セカンドオピニオンを積極的に活用し、多角的な視点を取り入れる。
- 税理士を「人脈のハブ」として、事業拡大に繋げる。
- 経営の「壁打ち相手」として、良質なアドバイスを引き出す。
- 経営者自身が、共に会社を成長させるパートナーとしての姿勢を示す。
受け身の姿勢で、年に一度、決算申告の時だけ連絡を取り合うような関係では、支払っている顧問料の価値を十分に引き出すことはできません。経営者自身が、税理士を「使い倒す」くらいの積極的な姿勢で関わっていくことで、税理士はあなたの会社にとって、かけがえのない最強のビジネスパートナーとなるはずです。
この記事が、皆様の税理士との関係を見直し、より良いパートナーシップを築くための一助となれば幸いです。