会社の決算月は3月が常識?知らないと大損する、税金と資金繰りを最適化する「決算月」の戦略的選び方

確定申告をしないとどうなる?追徴課税や大きなデメリット 法人設立

「会社の決算月って、なんとなく3月にしているけど、それで本当に合っているのだろうか?」
「決算月を変えるだけで、税金が安くなったり、資金繰りが楽になったりするって本当?」
「うちの会社にとって、一番有利な決算月は、一体いつなんだろう?」

会社の経営者であれば、年に一度、必ず訪れる 「決算」。その締めくくりとなる「決算月」 を、あなたの会社では、いつに設定していますか?

日本の多くの企業は、国の会計年度に合わせて、 「3月決算」 を採用しています。「みんながそうしているから」「設立時に、特に何も考えずに決めたから」という理由で、3月決算を選択している経営者の方も、非常に多いのではないでしょうか。

しかし、もし、その 「なんとなく」で決めた決算月が、あなたの会社の利益を圧迫し、資金繰りを苦しめ、さらには税務調査のリスクを高めている としたら、あなたはその事実を知りたいと思いませんか?

この記事では、

  • なぜ、日本の会社に「3月決算」がこれほどまでに多いのか、その背景と、そこに潜む「デメリット」
  • 決算月を、利益が少ない「閑散期」に設定することで得られる、絶大な「節税」メリット
  • 納税や賞与のタイミングをずらし、会社の「資金繰り」を劇的に改善する、決算月の決め方
  • 銀行融資の審査を、有利に進めるための、戦略的な決算月の活用法
  • そして、税務調査のリスクを、少しでも軽減できる可能性がある、決算月の「裏技的」な考え方

について、徹底的に、そして分かりやすく解説します。

決算月の選択は、単なる事務的な日程調整ではありません。それは、あなたの会社の 税務、財務、そして経営戦略そのものを、根底から最適化するための、極めて重要で、かつ強力な「経営判断」 なのです。この記事を最後までお読みいただき、自社にとっての「黄金の決算月」を見つけ出し、会社の経営基盤を、より強固なものにしていきましょう。

なぜ、日本の会社は「3月決算」が圧倒的に多いのか?

まず、なぜ日本の企業社会では、これほどまでに「3月決算」が常識となっているのでしょうか。
その最大の理由は、国の会計年度(4月1日~翌年3月31日)と、地方公共団体の会計年度が、これに準じているからです。

  • 公共事業との連携:国や自治体からの仕事を受注する建設業などは、相手の予算執行のサイクルに合わせるため、3月決算が有利になります。
  • 金融機関の動向:銀行などの金融機関も、国の会計年度に合わせて3月期決算が多いため、融資の判断なども、このサイクルを基準に行われる傾向があります。
  • 人材採用のサイクル:新卒採用のスケジュールが、4月入社を前提に組まれているため、それに合わせる企業が多い。
  • 法改正のタイミング:税制改正などの多くは、4月1日から施行されるため、期の途中でのルール変更を避けることができます。

このように、日本の社会システム全体が、 「4月始まり、3月終わり」 というサイクルで動いているため、多くの企業が、それに合わせる形で、慣習的に3月決算を選択しているのです。

しかし、これらの理由に、あなたの会社が直接的に当てはまらないのであれば、 無理に「常識」に合わせる必要は、全くありません。 むしろ、3月決算を避けることで、多くのメリットを享受できる可能性があるのです。

「繁忙期」を決算月にすると、なぜ危険なのか?

決算月を決める上で、最もやってはいけないこと。
それは、あなたの会社の 「繁忙期(最も売上が上がり、利益が出る時期)」 を、決算月に設定してしまうことです。

例えば、年末商戦で売上がピークになる小売業が、12月決算にしているようなケースです。
なぜ、これが危険なのでしょうか。

危険①:利益予測が困難になり、節税対策が間に合わない

決算が締まる直前になって、 「思った以上に、利益が出てしまった!」 という事態は、経営者にとって、嬉しい悲鳴であると同時に、頭の痛い問題でもあります。
なぜなら、そこから慌てて節税対策を講じようとしても、打てる手は、非常に限られてしまうからです。

繁忙期の売上は、天候や景気、社会情勢など、様々な外部要因に左右され、正確に予測することは、極めて困難です。
決算月が繁忙期と重なっていると、期末ぎりぎりまで、最終的な利益の着地点が見えず、計画的な節税対策を行うための、時間的な余裕がなくなってしまうのです。

危険②:納税額が膨れ上がり、会社の体力を奪う

結果として、十分な節税対策ができないまま、大きな利益に対して、多額の法人税が課せられることになります。
これは、会社の貴重な内部留保(キャッシュ)を、大きく損なうことに繋がります。

節税を最大化する、決算月の「黄金ルール」

では、節税という観点から見た場合、最適な決算月は、いつなのでしょうか。
その答えは、繁忙期の逆。すなわち、

「会社の売上・利益が、最も少なくなる“閑散期”の、直後の月」

です。

例えば、夏のレジャー関連の事業で、8月が繁忙期、9月~10月が閑散期となる会社であれば、 「10月決算」「11月決算」 などが、理想的な選択肢となります。

なぜ、「閑散期の直後」が決算月だと、有利なのか?

  1. 年間の利益が、早い段階で予測できる
    決算月が閑散期にあれば、その時点での利益は、年間の最低ラインに近い状態です。その後の繁忙期で、どれだけ利益が上乗せされるかを、時間をかけて、じっくりと予測することができます。
  2. 計画的な節税対策を、余裕をもって実行できる
    年間の利益の着地点が予測できれば、そこから逆算して、最適な節税対策を、計画的に、そして余裕をもって実行することができます。
    「今年は利益が出そうだから、倒産防止共済の掛金を増やそう」
    「役員の退職金支払いのために、保険をうまく活用しよう」
    といった、効果的な対策を、決算が締まる何ヶ月も前から、準備することができるのです。
  3. 決算業務の負担が少ない
    閑散期は、日々の業務も落ち着いているため、経理担当者や社長が、決算書の作成や、税理士との打ち合わせといった、決算業務に、じっくりと時間を割くことができます。これにより、決算の精度も向上します。

このように、決算月を繁忙期からずらすだけで、税務戦略における自由度と確実性は、飛躍的に高まるのです。

「資金繰り」を劇的に改善する、決算月の選び方

決算月の選択は、税金だけでなく、会社の血液である 「キャッシュ」の流れ(資金繰り)」 にも、大きな影響を与えます。

納税と、大きな支出の「タイミング」をずらす

法人は、決算が締まってから、2ヶ月以内に、法人税や消費税といった、まとまった額の税金を、現金で納付しなければなりません。

もし、この 「納税のタイミング」と、会社にとって「他の大きな支出」 が重なってしまうと、資金繰りは一気に苦しくなります。

【資金繰りが悪化する、典型的なケース】

  • 3月決算の会社
    → 5月末に、法人税・消費税の納税。
    → 6月、7月には、従業員への 夏の賞与(ボーナス) の支払いと、 社会保険料の年度更新(労働保険料の支払い) が待ち構えている。

このように、春から夏にかけて、大きなキャッシュアウトが連続してしまうのです。

このリスクを回避するためには、会社の大きな支出(賞与の支払い時期など)から、納税のタイミングが、なるべく離れるように、決算月を設定するのが賢明です。

例えば、決算月を 「9月」に設定すれば、納税は11月末 になります。夏の賞与の支払い時期とは、数ヶ月のタイムラグが生まれるため、資金繰りには、大きな余裕が生まれるでしょう。

銀行融資と、税務調査のリスクをコントロールする、決算月の考え方

さらに、決算月の設定は、「銀行融資」と「税務調査」という、経営における2大重要テーマにも、影響を与える可能性があります。

銀行融資を有利に進める、決算月の設定

銀行は、融資の審査の際に、直近の決算書だけでなく、 決算を終えてからの、足元の業績(試算表) も、非常に重視します。

もし、あなたの会社が、事業年度の前半に売上が集中するビジネスモデルなのであれば、その繁忙期が終わった直後に、融資の申し込みができるように、決算月を設定する、という戦略も考えられます。

例えば、4月~6月が繁忙期の会社が、3月決算だったとします。
そうすると、7月頃には、「4-6月期は、これだけの好調なスタートを切りました」という、ピカピカの試算表を携えて、銀行に融資の相談に行くことができるのです。このポジティブな実績は、融資審査において、強力な追い風となるでしょう。

税務調査のリスクを、少しでも軽減する?

税務署の人員にも限りがあるため、税務調査は、年間を通じて、均等に行われているわけではありません。
一般的に、 確定申告の時期(2月~3月)や、人事異動の時期(7月) は、税務署内が非常に多忙となるため、実地調査の件数は、減少する傾向にあると言われています。

そして、税務調査は、通常、決算が確定した数ヶ月後に行われることが多いです。
このことから、逆算すると、

  • 12月決算 → 調査時期は、春先以降
  • 5月決算 → 調査時期は、秋以降

となり、税務署の繁忙期に、調査のタイミングが重なる可能性があります。
もちろん、これは、あくまで一般論であり、この決算月にすれば、絶対に調査が来ない、という保証はどこにもありません。しかし、少しでも調査のリスクを軽減したい、と考えるのであれば、こうした「アノマリー(経験則)」を、決算月選択の一つの参考にしてみるのも、面白いかもしれません。

決算月は、後からでも変更できる!

「もう、うちは会社を設立してしまったから、決算月は変えられない…」
そう思っていませんか?いいえ、そんなことはありません。

会社の決算月(事業年度)は、設立後であっても、比較的簡単な手続きで、自由に変更することが可能です。

【決算月変更の主な手続き】

  1. 株主総会での承認:定款の事業年度を変更するための、株主総会の決議を行います。(オーナー社長一人の会社であれば、議事録を作成するだけです)
  2. 税務署などへの届出:「異動届出書」を、管轄の税務署、都道府県税事務所、市区町村役場へ提出します。

経営環境の変化や、事業モデルの転換に合わせて、自社にとって、より最適な決算月へと、柔軟に見直していく。この 「変化への対応力」 もまた、これからの時代を生き抜く経営者に、求められる重要な資質です。

まとめ:決算月の選択は、経営者の「腕の見せ所」である

今回は、多くの経営者が見過ごしがちな、「決算月の選択」というテーマについて、それが、税務、財務、そして経営戦略全体に、いかに大きな影響を与えるかを、詳しく解説しました。

  • 日本の「3月決算」は、あくまで慣習。あなたの会社にとって、最適とは限りません。
  • 節税効果を最大化するなら、決算月は、売上が少ない「閑散期の直後」に設定し、計画的な対策を行う時間を確保しましょう。
  • 資金繰りを安定させるなら、納税と、賞与などの大きな支出のタイミングが、重ならないように、決算月を調整しましょう。
  • 銀行融資や税務調査のリスクも、決算月の戦略的な選択によって、ある程度コントロールすることが可能です。
  • 決算月は、後からでも変更できます。会社の成長ステージに合わせて、柔軟に見直していく視点が重要です。

決算月の選択は、あなたの会社の、1年間の経営サイクルの「設計図」を描く、極めてクリエイティブな作業です。
しかし、その最適な設計図を描くためには、自社の利益の変動パターン、税務のルール、資金繰りの波など、多くの要素を総合的に考慮する必要があり、専門的な知識が欠かせません。

もし、判断に迷う場合は、顧問税理士に相談してみましょう。
信頼できる税理士は、あなたの会社のビジネスモデルを深く理解し、様々なシミュレーションを通じて、あなたの会社にとって、最も有利な「黄金の決算月」を、共に導き出してくれる、最高のパートナーとなるはずです。

ぜひ、この記事をきっかけに、自社の決算月について、改めて見つめ直してみてください。その「日付」を一つ変えるだけで、あなたの会社の未来は、想像以上に、明るく、そして豊かなものになるかもしれません。

最後までお読みいただくありがとうございました。この記事があなたの経営の一助になれば幸いです。