【社長必見】定額減税、年末調整で終わりじゃない!確定申告で損しないための完全ガイド

確定申告・税務調査

「定額減税は、去年の給与計算や年末調整で対応したから、もう終わった話だよね?」

2024年、日本中の給与担当者や経営者を悩ませた「定額減税」。多くの会社では、従業員の月々の給与や賞与から所得税を減額し、年末調整で最終的な精算を終え、ほっと一息ついている頃かもしれません。

しかし、もしあなたが 「確定申告」 を行う必要がある経営者や個人事業主であるならば、その考えは非常に危険です。

実は、定額減税のプロセスはまだ終わっていません。これから迎える確定申告で、 ある「最後の仕上げ」 を正しく行わなければ、せっかくの減税メリットをみすみす手放してしまう可能性があるのです。

  • 「確定申告書に、定額減税のことを書く欄なんてあるの?」
  • 「すでに減税分は受け取っているのに、さらに何かする必要があるの?」
  • 「減税しきれなかった分って、どうなるの?」

この記事では、そんな社長の皆様が抱くであろう疑問に、真正面からお答えします。
2024年分の確定申告において、定額減税で損をしないための 「正しい申告書の記載方法」と、多くの人が知らない「不足額給付」 という、さらなる給付金の仕組みについて、誰にでも分かるように徹底的に解説していきます。

この記事を最後までお読みいただければ、今年限りの複雑な制度を完璧に理解し、あなた自身、そして大切なご家族の税金を1円たりとも無駄にしないための、確かな知識が身につくはずです。

結論:確定申告でやるべき重要ポイントは2つ

本題に入る前に、これから確定申告を行うすべての人が絶対に押さえておくべき、2つの重要ポイントを結論としてお伝えします。

  1. 確定申告書で「定額減税額」を正しく記載しないと、減税が受けられない。
    給与から天引き(源泉徴収)で減税された方も、個人事業主の方も、確定申告をする以上は、申告書上で改めて減税額を申告する手続きが必須です。これを忘れると、減税がなかったことになり、追徴課税のリスクすらあります。
  2. それでも減税しきれなかった分は、「不足額給付」としてお金がもらえる可能性がある。
    年間の納税額が定額減税の金額(1人4万円)に満たなかった場合、その差額が給付金として支給される可能性があります。これは、夏頃にあった「調整給付」とは別の、最終的な精算措置です。

この2点を頭に入れた上で、まずは確定申告と定額減税の基本からおさらいしていきましょう。

第1章:基本の確認 – 確定申告と定額減税とは?

専門的な話に入る前に、まずは基本となる知識を整理します。「そんなことは知っているよ」という方も、復習のつもりでお付き合いください。

そもそも確定申告とは?

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間の「所得(儲け)」を計算し、それに対する「所得税」の額を確定させて、国に報告・納税する一連の手続きのことです。

【確定申告が必要な人の代表例】

  • 個人事業主やフリーランスで、事業所得がある方
  • 給与所得者(会社員・役員)でも、年収が2,000万円を超える方
  • 副業の所得が年間20万円を超える方
  • 年金収入が400万円を超える方 など

一方で、確定申告をする 「義務」はないけれど、した方が「得」になる ケースもあります。

  • 多額の医療費を支払った(医療費控除)
  • マイホームを住宅ローンで購入した(住宅ローン控除)
  • ふるさと納税をした(寄附金控除)

このような方は、確定申告をすることで払いすぎた税金が戻ってくる 「還付申告」 が受けられます。義務はなくとも、自らの権利として申告すべきです。

今年の申告期限は、 2025年(令和7年)3月17日(月曜日) です。

定額減税制度の概要(おさらい)

次に、今回の主役である「定額減税」のルールを簡単におさらいします。

  • 減税額: 本人1人につき、所得税3万円 + 住民税1万円 = 合計4万円
  • 対象者:
    • 本人: 令和6年分の合計所得金額が1,805万円以下の方。(給与年収で言うと2,000万円以下に相当)
    • 同一生計配偶者・扶養親族: 本人と生計を一つにする配偶者や親族で、合計所得金額が48万円以下の方。(給与年収で言うと103万円以下)

【ポイント】

  • 家族も対象: 配偶者1人、子供2人の4人家族であれば、4人 × 4万円 = 16万円の減税が受けられます。
  • 16歳未満の子供も対象: 通常の扶養控除の対象にならない16歳未満のお子さんも、定額減税では1人としてカウントされます。
  • 配偶者の所得に注意: 年収が103万円を超えている配偶者は、たとえ配偶者特別控除の対象であっても、定額減税の扶養親族にはカウントされません。

すでに多くの方は、2024年6月以降の給与や賞与、あるいは年金の源泉徴収税額から、この減税額が差し引かれる形で恩恵を受けているはずです。しかし、それはあくまで 「前払い」的な措置 に過ぎません。最終的な減税額の確定と精算は、これから行う確定申告で完了するのです。

第2章:【最重要】確定申告書での正しい記載方法 – 損しないための必須作業

ここからが本題です。確定申告をするすべての方が対象となる、申告書への記載方法を具体的に見ていきましょう。これを忘れると、年間を通じて受けた減税がすべて無に帰す可能性があります。

申告書は、詳細を記入する「第二表」から先に埋めるとスムーズです。

STEP1:第二表「配偶者や親族に関する事項」の記入

まず、確定申告書第二表の下部にある 「配偶者や親族に関する事項」 の欄をご覧ください。
ここに、定額減税の対象となる家族の情報を記入します。

(画像はイメージです)

注目すべきは、一番右の 「その他」 の列です。
定額減税の対象となる配偶者や扶養親族に該当する方の行に、 区分として「2」 という数字を記入します。
(※住民税に関する事項で、16歳未満の扶養親族がいる場合は「1」と書きますが、定額減税の対象者であれば「2」も併記、あるいは「2」を優先して記載します)

この「2」という記載は、「この人は定額減税の人数にカウントしてください」という意思表示になります。これを書き忘れると、家族分の減税が受けられない可能性がありますので、必ず確認しましょう。

上記の例では、奥様(花子さん)、お母様(梅子さん)が定額減税の対象となるため、「2」が記載されています。一方、専従者給与を受け取っていて扶養親族ではない一郎さんは対象外なので、何も記載しません。

STEP2:第一表「定額減税額」の記入

次に、申告書第一表の右下、 「税金の計算」の欄をご覧ください。
2024年分(令和6年分)の申告書から、
(44)「定額減税額」 という新しい欄が設けられています。

(画像はイメージです)

ここに、所得税分の定額減税額を記入します。
計算方法は、「本人 + 第二表で区分”2″を記入した家族の人数」× 30,000円 です。

【絶対に間違えてはいけないポイント】

  • 所得税分(3万円)のみを記入する: 住民税分の1万円は含めません。合計4万円で計算しないように注意してください。
  • 本人分を忘れない: 家族の人数だけでなく、必ず申告者本人もカウントに含めます。

先ほどの例では、本人、配偶者、母親の合計3名が対象ですので、3人 × 3万円 = 9万円…ではありません。よく見ると、第二表には子供(ここでは図示されていませんが、いると仮定)もいるため、本人+対象の家族3名=合計4名となります。
したがって、4名 × 30,000円 = 120,000円 を、この(44)の欄に記入します。

この12万円という数字を書き忘れたり、間違えたりすると、定額減税が正しく適用されません。
最終的に計算された年間の所得税額から、この12万円が差し引かれることで、減税が完了します。もし、源泉徴収で前払い的に減税された額との間に差額があれば、この確定申告で還付または追加納税という形で精算されるのです。

年末調整の源泉徴収票には定額減税に関する明確な記載欄がありませんでしたが、確定申告書には専用の欄が設けられました。これは、国が「確定申告で最終的な意思表示をしてください」と求めている証拠です。くれぐれも記載漏れのないよう、ご注意ください。

第3章:減税しきれなかった方へ。「不足額給付」という最後のセーフティネット

「年間の所得税が、定額減税額(例:12万円)よりも少なかった場合はどうなるの?減税しきれない分は、損してしまうの?」

ご安心ください。そのために用意されているのが 「不足額給付」 という制度です。これは、定額減税の恩恵をすべての対象者が公平に受けられるようにするための、最終的な調整措置です。

この話を理解するには、まず2024年の夏頃に行われた 「調整給付」 について振り返る必要があります。

「調整給付」とは何だったのか?(夏頃の給付金)

定額減税が始まった2024年6月時点では、その年の最終的な年収や税額はまだ確定していませんでした。そこで、自治体は 「前年(令和5年)の所得情報」を基に 、「この人なら、おそらくこれくらい減税しきれないだろう」という金額を概算で計算し、先行して給付金を支給しました。これが「調整給付」です。

例えば、ある世帯の令和5年の情報から、令和6年の納税額が8万円程度と見込まれたとします。定額減税額が12万円の場合、差額の4万円が減税しきれないと予測されます。この場合、自治体は調整給付として4万円を支給した、という流れです。

「不足額給付」とは何か?(これからの給付金)

「調整給付」は、あくまで前年の情報に基づく 「概算」でした。
そして今、確定申告によって
「令和6年分の正確な税額」 が確定します。

この確定した税額を基に、改めて「本当に減税しきれなかった金額」を計算し直し、すでに支給した調整給付額との差額を、追加で給付してくれる。これが 「不足額給付」 です。

【具体例で見てみましょう】

  • 前提:
    • ある世帯の定額減税額(所得税+住民税):120,000円
    • 夏頃、前年の情報に基づき「調整給付」として20,000円をすでに受給済み。
  • 確定申告の結果:
    • 令和6年の業績が悪く、最終的な年税額(所得税+住民税)が81,000円だったことが確定した。
  • 計算プロセス:
    1. 本来の減税不足額を計算:
      120,000円(減税枠) – 81,000円(確定税額) = 39,000円
      この世帯は、本来39,000円分の減税がしきれなかったことになります。
    2. 不足額給付の金額を計算:
      39,000円(本来の不足額) – 20,000円(受給済の調整給付) = 19,000円
      差額の19,000円が不足額給付として、これから支給されることになります。

【驚きの「1万円単位切り上げ」ルール】
さらに、この給付制度には納税者にとって非常に有利なルールがあります。計算された給付額に1万円未満の端数がある場合、切り上げて支給されるのです。
先ほどの例では、不足額給付は19,000円でしたが、1万円未満を切り上げるため、実際に支給されるのは20,000円となります。

逆に、調整給付をもらいすぎていたら?

「もし、業績が絶好調で、確定申告の結果、年税額が増えて減税しきれることになったら?夏にもらった調整給付は返さなければいけないの?」

これも、驚きの結論ですが、返金は不要です。
国の方針として、給付しすぎた分については返還を求めない、とされています。これは、制度を簡素化し、自治体の事務負担を軽減するための措置と考えられます。

非常に大雑把な制度ではありますが、納税者にとっては有利な仕組みとなっています。

不足額給付の手続きはどうなる?

現時点では、不足額給付の具体的な申請方法や支給時期は、各自治体の判断に委ねられています。確定申告の情報が自治体に連携された後、対象者には通知が届き、申請手続きが必要になるのか、あるいは自動的に振り込まれるのか、といった詳細が決まっていくものと思われます。
お住まいの市区町村のウェブサイトなどで、今後の情報を注視していく必要があります。

まとめ:今年限りの特別ルール。正しい知識で損を防ごう

今回は、2024年分の確定申告における「定額減税」の取り扱いについて、その核心部分を詳しく解説しました。

最後に、重要なポイントをもう一度まとめます。

  1. 定額減税はまだ終わっていない。確定申告での「最終精算」が必須。
  2. 申告書第二表の親族欄に区分「2」を、第一表の(44)に「所得税分の減税額(3万円×人数)」を必ず記載する。
  3. この記載を忘れると、減税が適用されず、大きな損をする可能性がある。
  4. 年間の税額が減税額に満たず、減税しきれなかった場合は「不足額給付」の対象になる可能性がある。
  5. 不足額給付は、夏頃の「調整給付」との差額を精算するもので、1万円単位に切り上げて支給される有利な制度。

定額減税は、今年限りの非常に複雑で手間のかかる制度です。しかし、国が国民の負担を軽減するために設けた制度である以上、その恩恵は最大限に活用すべきです。

経営者である皆様は、ご自身の申告はもちろんのこと、従業員やご家族から質問される機会もあるかもしれません。その際に、この知識があれば、的確なアドバイスができるはずです。
まずはご自身の確定申告で、記載漏れがないかを今一度ご確認いただき、この一年間の税務上のビッグイベントを、完璧に乗り切っていただきたいと思います。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。この記事があなたの経営の一助になれば幸いです。