【フリーランスも標的】税務調査AIがあなたを狙っている!2024年最新動向と狙われやすい人の3つの特徴

確定申告・税務調査

「税務調査」という言葉に、漠然とした不安を感じているフリーランスや個人事業主の方は少なくないでしょう。しかし今、その税務調査の世界に、静かに、そして確実な革命が起きています。その主役こそが、 「AI(人工知能)」 です。

2024年に国税庁が発表したデータは、多くの事業者に衝撃を与えました。所得税などの調査による「追徴課税額」が、過去最高の約1,400億円に達したのです。

「やはり、税務調査が厳しくなっているんだ…」
そう思うかもしれません。しかし、驚くべきはそこではありません。この過去最高の追徴額は、なんと税務調査の件数自体は前年より減少している中で達成されたのです。

調査件数は減っているのに、見つけ出す申告漏れの金額は増えている。この、まるで腕利きのスナイパーのような、効率的で精度の高い調査を可能にしているのが、税務署が導入を進める「AI」の力なのです。

この記事では、

  • 税務調査の現場でAIがどのように活用されているのか
  • 税務調査の種類と最新の動向
  • 【本題】税務調査AIが今、特に狙っている3つのターゲット層

について、最新の公表データを基に徹底的に解説していきます。

「自分は大丈夫」と思っている、そこのあなた。もはや税務調査は、運が悪ければ当たる、という時代ではありません。AIは、膨大なデータの中から、静かにあなたの申告書を分析しているかもしれないのです。

1.税務調査の効率化を進める「AI」の正体とその役割

「税務署がAIを使っている」と聞いても、具体的に何をしているのか、イメージが湧きにくいかもしれません。国税庁はAIの具体的なアルゴリズムを公表していませんが、専門家の間では、その役割は主に 「調査対象の効率的な選定」 にあると考えられています。

税務署には、e-Taxなどを通じて提出された、膨大な量の確定申告データが蓄積されています。AIは、このビッグデータを解析し、

  • 同業他社と比較して、経費率が異常に高くないか?
  • 売上が急増しているのに、所得が伸びていないのはなぜか?
  • 過去の不正申告のパターンと類似した点はないか?
  • SNSやインターネット上の情報と、申告内容に矛盾はないか?

といった、人間の目だけでは見つけにくい「異常値」や「矛盾点」を瞬時に検出します。これにより、税務調査官は、やみくもに調査に入るのではなく、初めから申告漏れの可能性が極めて高いと判断された事業者に対して、集中的にリソースを投入することができるのです。

「調査件数が減り、追徴額が増える」という現象は、まさにこのAIによる「狙い撃ち」の精度が向上していることの、何よりの証拠と言えるでしょう。

2.税務調査の種類と最新動向。調査官はどこに力を入れている?

一言で「税務調査」と言っても、その関与の度合いによっていくつかの種類に分かれます。そして、最新のデータからは、税務署がどこに力を入れているのか、その戦略が見えてきます。

① 簡易な接触

調査官が事業所を訪れるのではなく、電話や書面で「この経費について少し教えてください」「この売上の計上時期は合っていますか?」といった、比較的軽微な確認を行うものです。

② 実地調査

調査官が実際に事業所や自宅を訪れて、帳簿や資料を詳細に確認する、いわゆる本格的な税務調査です。これにも、いくつかのレベルがあります。

  • 一般調査: 最も一般的な税務調査。事前に電話などで日程調整の連絡があり、通常1~2名の調査官が来訪します。
  • 特別調査: 大口・悪質な不正が疑われる事案に対して行われます。事前の連絡なしに、大人数(時には10名以上)の調査官が来訪し、強制的に調査が進められます。ドラマなどで描かれる「マルサ」のイメージに近い、非常に厳しい調査です。
  • 現況調査: 半日程度で終わる、比較的軽微な実地調査です。

最新データから読む「税務署の戦略」

国税庁の発表によると、2024年の調査状況は以下のようになっています。

調査の種類調査件数(前年比)
実地調査(一般・特別)増加(約3.5%増)
実地調査(現況調査)減少(約12%減)
簡易な接触減少(約5%減)

このデータから読み取れるのは、税務署が 「簡易な接触」や「軽微な調査」のリソースを削減し、その分を、より大きな追徴が見込める「本格的な実地調査」へと、戦略的にシフトさせている という事実です。

これもまた、AIによって調査対象を効率的に絞り込めるようになったからこそ可能な戦略と言えるでしょう。つまり、一度「実地調査」の対象として選ばれた場合、それはAIと人間の両方によって「高い確率で問題がある」と判断された後だ、ということを意味するのです。

3.【本題】税務調査AIが狙っている3つのターゲット

では、そのAIは、今、どのような人々を特に「調査対象」としてリストアップしているのでしょうか。国税庁の公表資料は、そのターゲットを明確に示しています。

ターゲット①:富裕層

これは、昔からの税務調査の王道です。富裕層は、取引額が大きく、資産背景も複雑なため、一つの申告ミスや解釈の違いが、多額の追徴課税に繋がりやすいからです。AIは、所得や資産状況から効率的に富裕層をリストアップし、調査官はその中でも特に問題がありそうな案件に集中しています。

実際に、富裕層に対する調査件数自体は減少傾向にありますが、1件あたりの追徴税額は依然として非常に高い水準を維持しており、税務署が重要ターゲットとして注力していることが伺えます。

ターゲット②:海外ビジネス・海外投資を行っている人

グローバル化が進む中、海外との取引もAIが重点的に監視している分野です。その理由は、

  • 利益が生まれやすい: 海外投資や輸出入ビジネスは、大きな利益を生む可能性があります。
  • 複雑で間違いやすい: 国際税務はルールが複雑で、意図せずとも申告ミスが起こりやすい分野です。
  • 不正の温床になりやすい: 海外の銀行口座などを利用して、意図的に所得を隠す(マネーロンダリングなど)といった、悪質な不正が行われやすい分野でもあります。

国税庁のデータによれば、海外関連の調査のうち、 約40%が「海外投資(海外不動産、海外証券など)」 に関連するものでした。次いで、海外向けのサービス提供や、輸出入ビジネス(特にインターネット通販を利用したもの)が多くを占めています。

手軽に始められるようになった海外取引ですが、その裏でAIの監視の目が光っていることを、決して忘れてはいけません。

ターゲット③:フリーランス【最重要】

そして、この記事を読んでいる多くの方にとって、最も衝撃的で、最も重要な事実がこれです。
税務署とAIが今、 最も熱い視線を送っているターゲットの一つが、「フリーランス」 なのです。

「自分はそんなに稼いでいないから大丈夫」
「フリーランスなんて、たくさんいすぎて調査されないだろう」

そう考えているとしたら、その認識は今すぐ改める必要があります。

その理由は、フリーランスという働き方の特性にあります。

  • 急増と無申告問題: コロナ禍以降、働き方の多様化でフリーランス人口は急増しました。しかしその一方で、確定申告の知識がなかったり、「少額だからバレないだろう」と安易に考えたりして、無申告のままになっている人が非常に多いのが実情です。
  • 手軽なビジネスの増加: インターネット通販、SNS運用、Webライティング、シェアリングビジネスなど、元手があまりかからず、副業レベルでも手軽に始められるビジネスが増えました。こうした手軽さが、かえって「申告しなくてもいいか」という意識を生みやすくしています。
  • ずさんな経理: 会社員経験しかないまま独立した場合、経理の知識が乏しく、どんぶり勘定になりがちです。AIは、プラットフォーム(Amazon、楽天、Uberなど)から提供されるデータと個人の申告内容を照合し、矛盾点を見つけ出すことができます。

特に、 ネット通販、ネット広告、シェアリングビジネス、そして暗号資産(仮想通貨) といった、インターネットを介した取引は、税務署が取引実態を把握しやすいため、重点的な調査対象となっています。

フリーランスであることは、もはや税務調査から遠い存在である理由にはなりません。むしろ、その働き方の特性上、AIにとって「調査すべき魅力的なターゲット」として認識されている、という危機感を持つべきなのです。

4.AI時代の税務調査にどう備えるべきか?

では、AIによる監視の目が光る現代において、私たちは税務調査にどう備えればよいのでしょうか。その方法は、実は非常にシンプルです。

① 正しい申告が、最強の防御策

AIは、あくまで提出されたデータや客観的な情報に基づいて異常値を検出します。つまり、日頃からルールに則って正しく記帳し、根拠のある申告を行っていれば、AIの監視網に引っかかる可能性は限りなく低くなります。

  • 売上は1円たりとも隠さない。
  • 経費は、事業に関連するものだけを、証拠(領収書、契約書など)と共に記録する。
  • 無申告は論外。利益が少なくても、必ず確定申告を行う。

結局のところ、このような当たり前のことを、当たり前に実践することが、AI時代における最強の防御策なのです。

② 証拠(エビデンス)を残す習慣をつける

AIは、数字の矛盾は見つけられても、その背景にある「理由」までは分かりません。なぜ、この経費が必要だったのか。なぜ、同業他社より経費率が高いのか。その理由を、人間の調査官にきちんと説明できるかどうかが、最後の鍵を握ります。

そのためにも、日頃から 「証拠(エビデンス)」 を残す習慣をつけましょう。交際費の領収書の裏には、誰と、何のために会食したのかをメモしておく。高額な備品を購入した際は、なぜそのスペックが必要だったのかを記録しておく。こうした地道な作業が、いざという時にあなたを守る盾となります。

③ 専門家の知見を活用する

税金のルールは、毎年のように変わります。自分一人ですべてを完璧に把握するのは、非常に困難です。合法的な節税策も、知らなければ活用できません。

税務調査に不安を感じるなら、税理士などの専門家に相談し、日頃から正しい経理体制を構築しておくことも、有効な備えの一つです。それは、安心を手に入れるための、賢明な投資と言えるでしょう。

まとめ:AIは敵ではない。正しい経営の道しるべである

税務調査におけるAIの活用は、私たち事業者にとって、一見すると怖い存在に思えるかもしれません。しかし、その本質は、不公平をなくし、正直者が馬鹿を見ない社会を実現するためのツールです。

AIは、ルールを守り、誠実に事業を行っている人にとっては、何も恐れるべき存在ではありません。むしろ、AIが不正な事業者を効率的に見つけ出してくれることで、市場全体の健全性が保たれ、私たち自身がビジネスをしやすい環境が整っていく、と捉えることもできるのです。

AIの監視を恐れるのではなく、それを「正しい経営を行うための道しるべ」と捉え、日々の事業活動に真摯に取り組むこと。それこそが、AI時代を生き抜く私たち事業者に求められる、新しい姿勢なのかもしれません。

この記事があなたの経営の一助となれば幸いです。