【あなたはどっち?】年末調整と確定申告、”両方”必要な人の条件とは?知らないと損する税金の基本を徹底解説

確定申告・税務調査

「2箇所から給料をもらっているけど、税金の手続きはどうすればいいの?」
「副業を始めたけど、会社で年末調整しているから何もしなくていいのかな?」

働き方が多様化する現代、このような税金に関する悩みを持つ方が急増しています。会社員にとっておなじみの「年末調整」と、個人事業主などが行う「確定申告」。この二つの手続きの関係性は、意外と正しく理解されていないのが実情です。

「年末調整と確定申告、両方やらなきゃいけないの?」
「確定申告するなら、年末調整は適当でいいって本当?」

これらの疑問を放置したままにしておくと、本来払うべき税金を納めていない 「無意識の脱税」 状態に陥ってしまったり、逆に、払いすぎた税金を取り戻すチャンスを逃してしまったりする可能性があります。

この記事では、

  • そもそも「年末調整」とは何か?その巧妙な仕組みの正体
  • 「年末調整」と「確定申告」の役割分担と、その決定的違い
  • 【あなたはどのパターン?】ケース別・本当に必要な手続きの完全ガイド
  • 知っておくべき「副業20万円の壁」の落とし穴

といった、税金手続きの基本から、多くの人がつまずきやすいポイントまで、誰にでも分かるように徹底的に解説していきます。この記事を最後まで読めば、あなたがどの手続きをすべきなのかが明確になり、税金に対する漠然とした不安を解消することができるはずです。

1.そもそも「年末調整」とは?国の巧妙な”税金前払いシステム”の正体

多くの会社員にとって、年末調整は「なんだかよくわからないけど、書類を書いたら少しお金が戻ってくるイベント」くらいの認識かもしれません。しかし、その本質を理解することが、すべてのスタート地点となります。

毎月の給与から天引きされる「源泉所得税」は”仮払い”

まず、毎月の給与明細を見てみましょう。「源泉徴収税額」や「所得税」といった項目で、一定額が天引きされているはずです。実はこれ、その年の所得税を「前払い」している状態なのです。

本来、所得税は1年間(1月~12月)の所得が確定してから税額が決まるものです。しかし、国としては、国民一人ひとりが年に一度、まとめて納税するのは手続きが煩雑で、税金を取りっぱぐれるリスクも高まります。

そこで国が考え出したのが、会社が従業員に代わって、毎月の給与から「概算」で所得税を天引きし、国に納めるという「源泉徴収制度」です。

年末調整は、払いすぎた税金を取り戻す「精算」手続き

この毎月天引きされる源泉所得税は、あくまで”仮”の金額です。しかも、生命保険料控除や扶養家族の状況などが考慮されていないため、多くの場合、本来納めるべき税額よりも「少し多め」に徴収されています。

そう、私たちは毎月、国に対して税金を少し多めに前払いしているのです。これは、国の資金繰りを安定させ、確実に税収を確保するための、非常に巧妙な仕組みと言えるでしょう。

そして、この1年間で払いすぎた税金と、本来納めるべき正しい税額との差額を精算し、払いすぎた分を還付(返金)する手続き。それこそが、「年末調整」の正体なのです。

2.「年末調整」と「確定申告」の決定的違いとは?

年末調整が「会社が行う、会社員のための簡易的な税金精算」であるのに対し、「確定申告」はどのような役割を持つのでしょうか。

両者の関係性を一言で表すなら、以下のようになります。

  • 年末調整:
    会社員の基本的な税務処理を完結させるための制度。
  • 確定申告:
    年末調整では処理しきれない、 ”特殊な事情”や”追加の申告” がある人が、自ら税務署に対して行う、最終的な税額の確定・納税手続き。

つまり、ほとんどの会社員は年末調整だけで納税が完了しますが、特定の条件に当てはまる人だけが、年末調整に加えて、あるいは年末調整とは別に、確定申告を行う必要があるのです。

3.【あなたはどのパターン?】ケース別「やるべきこと」完全ガイド

では、具体的にどのような人が、どの手続きをすべきなのでしょうか。ご自身の状況と照らし合わせながら、確認していきましょう。

ケース①:「年末調整」だけでOKな人

以下に当てはまる、ごく一般的な会社員の方は、会社の指示に従って年末調整の書類を提出すれば、納税手続きは完了です。ご自身で確定申告を行う必要はありません。

  • 勤務先が1箇所のみである
  • 給与以外の所得(副業など)がない
  • 年間の給与収入が2,000万円以下である
  • 医療費控除や住宅ローン控除(1年目)など、特別な控除を申請しない

ケース②:「年末調整」+「確定申告」が”両方”必要な人【最重要】

ここが最も重要なポイントです。以下のいずれかに当てはまる方は、会社で年末調整を行った上で、さらにご自身で確定申告を行う必要があります。

アルバイトの掛け持ちや、転職・再就職などで、年内に複数の会社から給与を受け取った方が該当します。

  • なぜ両方必要?:
    年末調整は、原則としてメインの勤務先1社でしか行うことができません。サブの勤務先で得た給与は、年末調整での精算の対象外となります。そのため、メインの会社で年末調整を受けた後、すべての会社の給与を合算して、正しい所得税額を計算し直すために、確定申告が必要になるのです。
  • やるべきこと:
    1. メインの会社に「扶養控除等(異動)申告書」を提出し、年末調整を受ける。
    2. 年末調整後、メインの会社とサブの会社、両方から「源泉徴収票」をもらう。
    3. 2枚(以上)の源泉徴収票を基に、確定申告書を作成し、税務署に提出する。

会社員として働きながら、個人で事業(Webデザイン、ライティング、コンサルティング、転売など)を行い、その利益(所得)が年間で20万円を超えた場合も、確定申告が必要です。

  • 注意!「所得20万円」の落とし穴:
    ここで言う「所得」とは、 売上そのものではなく、売上から必要経費を差し引いた「利益」 のことです。
    • 計算式: 所得 = 総収入金額 – 必要経費
    この「必要経費」の計算を誤ると、「知らず知らずのうちに脱税していた」という最悪の事態を招きかねません。例えば、 事業とは関係のないプライベートな食事代やスーツ代は、原則として経費にはなりません。 これらを誤って経費に含めて計算し、「所得は20万円以下だから申告不要」と自己判断してしまうのは、非常に危険です。
  • やるべきこと:
    1. 会社で年末調整を受ける。
    2. 副業の年間の売上と経費を正確に集計し、所得を計算する。
    3. 会社の給与所得と、副業の所得(事業所得または雑所得)を合算して、確定申告を行う。

1年間に支払った医療費の合計が、原則として10万円(または総所得金額の5%)を超えた場合、「医療費控除」を申請することで、税金が還付される可能性があります。この医療費控除は、年末調整では申請できないため、確定申告が必要です。

住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合、一定期間、税金が安くなる「住宅ローン控除」が受けられます。この控除を初めて受ける年(1年目)は、必ず確定申告が必要です。
(※2年目以降は、会社の年末調整で手続きが可能になります)

ふるさと納税を行い、寄付先が5自治体以内で、「ワンストップ特例制度」の申請書を提出した場合は、確定申告は不要です。しかし、寄付先が6自治体以上の場合や、ワンストップ特例の申請を忘れた場合、あるいは上記1~4の理由で元々確定申告が必要な人は、ふるさと納税の寄付金控除を受けるためにも、確定申告が必要です。

ケース③:「確定申告」だけでOKな人

以下に当てはまる方は、年末調整の対象ではないため、ご自身で1年間のすべての所得と経費を計算し、確定申告を行う必要があります。

  • 個人事業主、フリーランス
  • 不動産収入がある人
  • 会社を退職し、その年に再就職していない人

4.よくある疑問:「確定申告するなら、年末調整はやらなくてもいい?」

「どうせ最終的に確定申告で全部計算し直すのだから、会社の年末調整は適当でいいのでは?あるいは、やらなくてもいいのでは?」

これは、非常によくある疑問です。

結論から言えば、ぶっちゃけ、最終的に確定申告で正しく申告・納税すれば、税務上の問題はありません。

しかし、だからといって年末調整を完全に無視するのはお勧めできません。

  • 「扶養控除等申告書」は提出義務がある:
    この書類は、年末調整だけでなく、毎月の給与から天引きされる源泉所得税の額を決定するためにも使われます。これを提出しないと、毎月の税額が高く計算されてしまい、手取りが減ってしまいます。
  • 会社のルール:
    年末調整は、従業員に対する会社の義務でもあります。会社の経理担当者に余計な手間をかけさせないためにも、基本的には会社のフローに従い、求められた書類は提出するのが、社会人としてのマナーと言えるでしょう。

まとめ:自分の状況を正しく把握し、適切な手続きを

ここまで見てきたように、「年末調整」と「確定申告」は、それぞれ異なる役割を持った、大切な税金の手続きです。

  • 基本は「年末調整」: ほとんどの会社員はこれで納税が完了する。
  • 例外は「確定申告」: 2箇所以上の給与、副業所得20万円超、医療費控除など、特殊な事情がある人のみ追加で必要。

自分がどのパターンに当てはまるのかを正しく理解し、期限内に適切な手続きを行うこと。それが、無用な税務リスクを回避し、払いすぎた税金を賢く取り戻すための、唯一の方法です。

もし、ご自身のケースで判断に迷うことがあれば、税務署の相談窓口や、税理士などの専門家に相談することも、有効な選択肢の一つです。

この記事があなたの経営の一助となれば幸いです。