法人化すると、節税効果が期待できるというのが大きなポイントです。法人税は通常30%前後で安定していて、所得税よりも低くなるケースが多いんです。個人事業だと、所得が増えるにつれて所得税の税率も上がっていくので、特に高所得者にとっては法人化することで節税できると言われています。ただし、実際に利益をしっかり出せる人でなければ、節税効果をあまり実感できないということも多いようです。
次に、信用力の向上です。法人化すると「株式会社〇〇」という形で取引先や金融機関からの信用度が増します。代表取締役という肩書きも、ビジネスの場では有利に働きますし、銀行から融資を受けやすくなるのも利点です。また、給与の経費化というメリットもあります。個人事業主だと、自分の収入はそのまま所得と見なされますが、法人化すれば自分への給与を経費として計上できます。これにより、給与所得控除を利用して所得を圧縮でき、結果として税負担を軽減することが可能です。
一方で、デメリットも見逃せません。まず、社会保険の負担増です。法人化すると社長一人でも社会保険に加入しなければならず、社員が増えるとその分負担も増加します。特に小規模な法人の場合、この社会保険の負担が経営を圧迫し、赤字になるリスクが高まることもあります。
また、設立費用と手続きの負担もデメリットの一つです。法人を設立するには高額な費用がかかります。例えば、設立費用だけで約230万円かかることもありますし、名刺や封筒、看板の作成など、会社名に関わる変更費用も発生します。さらに、法人化すると手続きや事務作業も増えるため、思った以上に負担になることがあります。
そして、税金の最低負担も法人化のデメリットです。法人は赤字でも最低7万円の税金を支払わなければなりません。この「均等割」の税金が経営を圧迫することもあり、加えて法人化すると税務調査のリスクも高まり、経営者にとってストレスの一因となります。
法人化して後悔する人にはいくつかの特徴があります。まず、「所得が600万円を超えたら法人化が有利」と考えて、目先の節税だけを重視する人です。実際には、法人化後に発生する費用が利益を圧迫することが多く、節税目的だけで法人化すると、かえって経営が厳しくなるケースも多いです。また、ステータスに憧れる人も後悔しがちです。代表取締役という肩書きに魅力を感じて法人化する人もいますが、経済的な安定よりも肩書きを重視すると、後からその選択を後悔することになりかねません。
では、法人化の適切なタイミングとは何でしょうか。ポイントは所得の安定性です。法人化を検討する際には、最低でも所得が1000万円以上で、かつ数年続く見込みがあることが理想です。一時的に所得が600万円を超えたからといって法人化するのは危険で、安定した利益が見込める場合にのみ法人化を考えるべきです。また、社員数の増加も考慮に入れます。社員が4名以下であれば個人事業の方が社会保険の負担が少なく、4名以上になったら法人化を検討すべきですが、その際にも慎重な判断が必要です。
マイクロ法人という選択肢もあります。個人事業を維持しながら、一人だけのマイクロ法人を設立することで、社会保険の負担を軽減しつつ事業を運営するという方法です。事業が成長したら法人を拡大する戦略も取れるため、まずはマイクロ法人からスタートするのも一つの手でしょう。
それでは詳しく見ていきましょう。
法人化のメリット
- 節税効果
- 法人税は一定の税率で、所得税よりも低くなることが多い(約30%前後で安定)。
- 所得が増えると所得税の税率が上がるが、法人税は一定であるため節税になる場合がある。
- ただし、実際に利益が出る人は少ないため、節税効果を実感できないことも多い。
- 信用力の向上
- 法人化により、取引先や金融機関からの信用が増す。
- 代表取締役という肩書きがビジネス上の信頼を高める。
- 銀行からの融資申請がしやすくなる。
- 給与の経費化
- 自分の給与を経費として計上できるようになる。
- 給与所得控除を利用して所得を圧縮できる。
- 経費計上で税負担の軽減が可能。
法人化のデメリット
- 社会保険の負担増
- 法人化すると、社長一人でも社会保険に加入する必要がある。
- 社員が増えると社会保険負担も増加し、経営を圧迫する可能性がある。
- 社会保険の負担が赤字リスクを高める。
- 設立費用と手続きの負担
- 法人設立には高額な費用(例:230万円)がかかる。
- 名刺や封筒、看板などの会社名変更に伴う費用も発生する。
- 手続きや事務作業が増えるため、予想以上の負担となることがある。
- 税金の最低負担
- 法人は赤字でも最低7万円の税金がかかる(均等割の税金)。
- この税負担が経営を圧迫する要因となる。
- 税務調査のリスクも高まるため、経営者にとってストレスとなる。
法人化を後悔する人の特徴
- 目先の節税を重視する
- 所得が600万円を超えたら法人化が有利と考える人が多い。
- 実際には法人化後の費用が利益を圧迫し、節税目的だけで法人化すると経営が厳しくなる場合がある。
- ステータスに憧れる
- 代表取締役という肩書きに魅力を感じて法人化する人もいる。
- 経済的な安定よりも肩書きを重視することで、後悔につながる可能性がある。
法人化のタイミング
- 所得の安定性
- 所得が1000万円以上で数年間続くことが理想的な法人化のタイミング。
- 一時的に600万円を超えたからといって法人化するのは危険であり、安定した利益が見込める場合に検討すべき。
- 社員数の考慮
- 社員数が4名までは個人事業の方が社会保険負担が少ない。
- 4名以上になると法人化を考えるべきだが、慎重な判断が必要。
マイクロ法人の提案
- 個人事業とマイクロ法人の併用
- 個人事業を持ちながらマイクロ法人を設立する方法がある。
- 社長一人の法人を作ることで社会保険負担を軽減可能。
- 事業が成長した際に法人を大きくする戦略が有効。