法人経営者として、従業員の福利厚生や、自身の将来の年金に関して最適な選択をすることは非常に重要です。特に、健康保険や年金制度の選択は、会社や個人の経済状況に大きく影響を与える要素の一つです。この記事では、法人経営者が知っておくべき「国民健康保険」と「社会保険」の違いと、それぞれの特徴、メリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
保険制度の基本構造
国民健康保険(国保)と社会保険(社保)は、どちらも日本の公的医療保険制度ですが、対象者や運営の仕組みが異なります。
- 国民健康保険(国保)の概要
国保は主に個人事業主や無職の人が加入対象です。市町村が運営しており、加入手続きは役所で行います。地域ごとに保険料が異なりますが、年間保険料の上限は約100万円となっています。国保に加入している多くの人が、フリーランスや個人事業主といった、比較的自由な働き方をしている場合が多いです。 - 社会保険(社保)の概要
一方、社会保険は法人の従業員や役員が対象で、健康保険と厚生年金で構成されています。保険料は給与に応じて決定され、会社と従業員が折半して負担します。社会保険に加入していることで、将来の年金や各種手当が手厚くなる点が特徴です。
- 国民健康保険(国保)の概要
- 対象は個人事業主や無職の人。
- 市町村が運営し、加入手続きは役所で行う。
- 保険料は地域によって異なり、上限は年間約100万円。
- 社会保険(社保)の概要
- 法人の従業員や役員が対象。
- 健康保険と厚生年金が含まれる。
- 保険料は給与に応じて決まり、会社と個人で折半するが、実質的には個人の負担が大きい。
保険料の計算と負担
保険料の計算方法について見てみましょう。保険料の計算方法や負担割合は、国保と社保で大きく異なります。
- 国保の保険料計算方法
国民健康保険は、所得に基づく「所得割」、家族の人数に基づく「均等割」、そして平等に課される「平等割」という3つの要素で構成されています。所得が高ければ保険料も高くなりますが、所得が1,000万円を超える場合、保険料の年間上限は約100万円です。また、扶養家族が多い場合、保険料が増加する点も国保の特徴です。 - 社保の保険料計算方法
社会保険は、給与の約30%が保険料の総額となり、その額を会社と従業員で折半します。給与が高ければ保険料も高額になりますが、社保には保険料の上限が設けられているため、一定以上の給与であれば保険料の負担が急激に増えることはありません。会社側としては、社保の負担が経営コストに含まれるため、従業員数や給与水準に応じて慎重な判断が求められます。
国保の保険料計算方法
- 所得割、均等割、平等割の3要素で構成される。
- 所得が1000万円を超えると、年間の保険料は約100万円が上限。
- 家族の人数に応じて保険料が増加する。
社保の保険料計算方法
- 給与の約30%が保険料総額(健康保険+厚生年金)。
- 会社と個人で折半するが、高額給与者は保険料も高額になるものの上限がある。
年金制度の違い
国民健康保険と社会保険のもう一つの大きな違いは、年金制度です。
- 国民年金(国保加入者)
国民健康保険に加入している場合、年金は国民年金に加入することになります。2024年度の国民年金の保険料は月額19,180円で、定額です。将来受け取れる年金は月額約68,000円(年間約81万円)となります。これにより、最低限の年金を確保できますが、生活費を賄うには十分ではないため、個人での資産形成が必要になるケースが多いです。 - 厚生年金(社保加入者)
社会保険に加入している場合、国民年金に加え、厚生年金に加入します。厚生年金の保険料は給与に応じて決まり、給与が高いほど保険料は増加しますが、将来の受給額も大きくなります。厚生年金では、年間最大で約213万円が上乗せされる可能性があり、国民年金だけの場合と比べて、老後の経済的安定が得られやすくなります。
国民年金(国保加入者)
- 月額19,180円(令和6年度)の定額保険料。
- 将来の年金受給額は月額約6万8,000円(年間約81万円)。
- 投資効果としては年利10%程度と考えられる。
厚生年金(社保加入者)
- 給与に応じて保険料が決まり、国民年金分も含まれる。
- 将来の受給額は国民年金に加えて、最大で年間約213万円の上乗せがある。
- 保険料負担は大きいが、年金受給額も多くなる。
各種手当ての違い
次に、国保と社保における手当の違いについて見てみましょう。特に、出産や傷病時のサポートに違いが現れます。
- 国保の手当て
国保加入者には、出産育児一時金として市町村から約40万円が支給されますが、傷病手当金や出産手当金といった給与補償的な制度はありません。そのため、病気や怪我で働けない場合のサポートが限られている点がデメリットです。 - 社保の手当て
社保加入者の場合、出産育児一時金は50万円(令和5年4月以降)に引き上げられており、出産手当金として出産前後の約3ヶ月分の給与の2/3が支給されます。さらに、病気や怪我で休業した際には、傷病手当金として給与の2/3が支給されるなど、国保よりも手厚いサポートが受けられる点が大きな利点です。
国保の手当て
- 出産育児一時金は市町村によって異なるが、約40万円。
- 傷病手当金や出産手当金はない。
社保の手当て
- 出産育児一時金は50万円(令和5年4月以降)。
- 出産手当金は出産前後の約3ヶ月分の給与の2/3が支給される。
- 傷病手当金は病気やケガで休業した場合に給与の2/3が支給される。
個人事業主と法人経営者の選択
最後に、個人事業主と法人経営者がそれぞれの保険制度を選択する際のメリットについて整理します。
- 個人事業主のメリット
国民健康保険に加入する個人事業主の場合、保険料の負担が比較的軽く、所得が増加しても保険料の上限が設定されているため、大きな負担にはなりにくいです。また、手続きが簡単で、加入や脱退も柔軟に行えるため、ライフスタイルや収入状況に応じた自由な選択が可能です。 - 法人経営者のメリット
法人経営者が社会保険に加入する場合、将来の年金受給額が増える点が大きなメリットです。また、出産や傷病時の手当が充実しており、従業員に対する福利厚生としての魅力も高まります。会社の成長に合わせて、従業員の福利厚生を充実させるためには、社保の導入が理想的です。
個人事業主のメリット
- 保険料負担が比較的低い。
- 収入が増えても保険料には上限がある。
- 手続きが簡単で、自由度が高い。
法人経営者のメリット
- 将来の年金受給額が多い。
- 各種手当てが充実している。
- 従業員の福利厚生として魅力的。
選択の際の考慮点
保険制度を選択する際には、以下の点を考慮する必要があります。
- 現在の収入と将来の見込み
現在の収入や事業の成長見込みに応じて、どちらの制度が適しているかを判断することが重要です。 - 家族構成と扶養の状況
扶養家族が多い場合、社保の方が手厚いサポートを受けられる可能性が高いです。 - 事業の成長性と従業員雇用の予定
従業員を雇用する場合、社会保険の導入が企業としての信用力を高め、従業員の福利厚生にも貢献します。
まとめ
法人経営者として、健康保険と年金制度の選択は、会社の成長と安定、さらには従業員の福利厚生に大きな影響を与えます。国民健康保険と社会保険の違いを理解し、自社の状況に合った制度を選択することが重要です。また、将来の年金や各種手当の充実度も、事業の発展と共に考慮する必要があります。もし信頼できる税理士をお探しでしたら、税理士無料紹介サービスの活用をぜひご検討ください。
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