役員報酬と賞与の調整方法

役員賞与・役員報酬

役員報酬の基本ルールですが、一度決めた報酬額は原則として1年間変更できないという決まりがあります。

これは会社が簡単に利益を操作しないように国税庁が制限をかけているためです。つまり、役員報酬には安定性と透明性が求められているためです。

報酬を変更するタイミングについても決まりがあって、事業年度が始まってから3ヶ月以内に決定しなければなりません。例えば、4月に事業年度が始まる会社なら、6月末までに報酬の金額を決めておく必要があります。そして、一度変更したらその金額は決算まで維持しなければなりません。

ただし、業績が著しく悪化した場合には例外があり、役員報酬を下げることができます。

例えば、毎月100万円の報酬を70万円に減らすことができるのですが、この場合も一度下げたらそのまま決算まで続けなければなりません。このように、報酬の変更には厳しいルールがあるため、最初に設定するときには慎重に考えることが大切です。

次に、「役員賞与」についての特例制度があるのでご紹介します。それが「事前確定届出給与」という制度です。この制度を使うと、役員賞与を経費として認めてもらうことができます。使い方は簡単で、事業年度の開始から3ヶ月以内に税務署に届け出を出します。この届出には、賞与の支給日や役員の名前、金額などを記載する必要があります。ただし、この届出には注意点も。記載した支給日に必ず賞与を支給しなければならないのです。例えば、土日や祝日で振り込みができない日を設定してしまうとトラブルになるので、支給日には細心の注意を払いましょう。また、届出した金額通りに支給しなければ経費として認められなくなるので、金額の設定も慎重に行う必要があります。

この事前確定届出給与の便利な点は、たとえ届出た金額を支給しない場合でも業績に応じて調整ができることです。例えば、最初に500万円の賞与を設定していても、業績が悪くなったら0円にすることができるのです。この調整は役員ごとに行えるので、会社の状況に合わせて柔軟に対応できます。ですので、この制度をうまく活用すると、経費の最適化が図れます。

ここで重要になってくるのが税理士の存在です。

実は、この事前確定届出給与の制度を知らない、もしくはメリットを理解していない税理士が意外と多いのです。中には、手続きが簡単だからという理由でこの制度を提案しない税理士もいます。その結果、経営者が制度を知らないまま損をしてしまうことも少なくありません。ですから、この制度に詳しく、しっかりとアドバイスできる税理士を選ぶことが重要です。場合によっては税理士の変更も検討して、自分に合ったアドバイスをくれる専門家に相談しましょう。

次に資金繰りとの関係です。会社の業績が悪化したときに役員報酬を調整できるかどうかは、リスク管理に直結します。資金繰りが厳しくなった場合、役員報酬をゼロにする選択肢も視野に入れるべきです。ですので、資金繰りに応じて柔軟に対応できるよう、報酬の設定を工夫することが求められます。報酬を設定する際には、事業計画や将来の不確実性を考慮しておくと安心です。役員報酬は定期的に見直し、経営環境の変化に合わせて適切に調整することが、健全な経営のためには欠かせません。

それでは詳しく見ていきましょう。

1. 役員報酬の基本ルール

  • 変更が難しい理由:一度決めた役員報酬は原則として1年間変更することができません。これは、会社の利益を操作するのを防ぐため、国税庁が定めたルールによるものです。この規制は、企業が利益を操作して役員報酬を不当に増額することを防ぐために設けられています。利益を恣意的に操作することは、株主や従業員を含むステークホルダーの信頼を損なう恐れがあるため、非常に重要な規制です。

  • 報酬変更のタイミング:役員報酬の金額は、事業年度の開始から3ヶ月以内に決定する必要があります。これは、企業が経営戦略を明確にし、役員に対する報酬の基準を早期に設定することで、経営の安定性を確保するためのルールです。例えば、4月スタートの会社であれば、6月末までに変更することが可能です。ただし、変更後の役員報酬の金額は、その事業年度の決算まで維持しなければなりません。これは、企業の財務報告における透明性を確保し、役員報酬が恣意的に変更されることを防ぐための規制です。報酬の安定性は、株主や従業員、その他のステークホルダーに対する信頼を維持する上でも重要です。急激な報酬の変更は、企業の信頼性を損ないかねず、外部からの監査や評価においてもマイナスに働くことがあります。

  • 業績悪化時の調整:業績が著しく悪化した場合には、例外として役員報酬を下げることが認められます。例えば、月額100万円から70万円に減額することができますが、一度下げた金額は決算までそのまま支給し続ける必要があります。

2. 役員賞与の特例

  • 事前確定届出給与の制度:役員賞与を経費として認められる特例制度があります。これを利用するには、事業年度の開始から3ヶ月以内に税務署に届け出を提出する必要があります。この届出には、支給日、役員名、金額を記載しなければなりません。

  • 届出の注意点:届出に記載した支給日には必ず支給しなければなりません。土日や祝日など、銀行振込ができない日を避けて日付を設定することが重要です。また、支給金額も届出通りでなければ経費として認められないため、慎重に金額を決定しましょう。

  • 賞与の柔軟性:一方で、届け出た金額を必ずしも支給する必要はありません。例えば、500万円の賞与を設定していても、業績が悪い場合には0円にすることが可能です。この調整は各役員ごとに行うことができ、会社の業績に応じて報酬を柔軟に変えられるのがこの制度の利点です。

3. 税理士の提案不足とその影響

  • 税理士が提案しない理由:まず、税理士の役割は主に税務面でのアドバイスに限られており、経営戦略や報酬制度そのものに関する詳細な知識を持っていない場合が多いからです。役員報酬は企業の経営戦略や業績に深く関わるため、専門的な経営コンサルティングの知識が必要です。そのため、税理士は経営者に対して報酬の具体的な金額や構造を提案することを避けることがあります。次に、役員報酬は法的規制や税務ルールが厳格に定められており、これに従うことが求められます。税理士が役員報酬について提案を行った場合、誤ったアドバイスや不適切な金額設定が生じた際に、責任を問われるリスクが高まります。このため、慎重な姿勢を持つ税理士が多いのです。また、税理士は企業の財務状況を把握しているものの、役員の業績や市場の競争状況など、報酬に影響を与える多くの要因を総合的に評価することが難しい場合もあります。役員報酬の設定は、企業のパフォーマンスや市場の状況を考慮した上で行うべきものであり、これを外部の専門家が一方的に決定することは難しいのが実情です。さらに、税理士は税金対策や会計処理に関するアドバイスを行うことが主な業務であり、役員報酬に関する具体的な提案を行うことで、その業務範囲を超えることになります。このため、役員報酬の決定は経営陣自身が行うべきだとする見解が強く、税理士が介入する余地は限られています。これらの理由から、税理士は役員報酬に関して具体的な提案を行わないことが多いのです。

  • 提案されないことの影響:税理士からこの制度についてアドバイスがないと、経費として認められない賞与が増え、会社にとって損失となる場合があります。また、税理士が他の税理士からの情報を受け入れないプライドが影響して、経営者に適切なアドバイスができないこともあります。

  • 適切な税理士の選び方:事前確定届出給与の仕組みを理解している税理士を選ぶことが重要です。自分の会社の状況に合ったアドバイスをもらうために、専門家に相談し、場合によっては税理士の変更も検討しましょう。

4. 資金繰りと役員報酬の調整

  • 資金繰りの重要性:会社の業績が悪化した際に役員報酬を調整できることは、リスク管理につながります。資金繰りが悪化した場合には、役員報酬をゼロにする選択肢もあります。状況に応じて柔軟に対応できる仕組みを整えておくことが大切です。

  • 報酬の設定方法:事業計画に基づいて役員報酬を決定することが必要です。業績に応じた報酬の調整が可能な仕組みを整えておくと、経営の安定性が向上します。報酬を設定する際には、将来の不確実性も考慮に入れましょう。

  • 役員報酬の見直し:定期的に役員報酬を見直すことが推奨されます。経営環境の変化に対応し、報酬体系を見直すことで、資金繰りの悪化を防ぎます。場合によっては報酬を減額することも検討し、会社の経営状況に合わせた適切な報酬設定を行うことが重要です。

まとめ

このように、役員報酬と賞与の調整にはさまざまなルールとポイントが存在します。税務上の透明性を保ちながら、事前確定届出給与などの制度を活用し、会社の業績に応じて柔軟に対応することで、適切な資金繰りを維持することができます。

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