会社の資本金って何?起業時にいくらに設定すべき?税金とお得な裏ワザを徹底解説!

法人設立

「うちの会社の資本金1000万円なのに、通帳残高はゼロ…まさか誰かに盗まれた!?」
「これから会社を立ち上げるんだけど、資本金って一体いくらに設定すればいいの?」

会社を経営されている方や、これから起業を考えている方にとって、「資本金」という言葉はよく聞くものの、その実態や適切な金額設定については曖昧な方も多いのではないでしょうか。

今回は、会社の資本金とは何か、それが会社のどこに表示されるのか、そして起業時に資本金をいくらに設定するのが最もお得なのかについて、税金に関するお得な裏ワザも交えながら徹底的に解説します。

まずは貸借対照表をおさらい!資本金はどこにある?

資本金について理解するために、まずは会社の決算書の中でも重要な「貸借対照表(BS)」について簡単におさらいしましょう。

貸借対照表とは、会社のある時点(通常は決算日)で、どのような財産(資産)があり、どのような負債(借金など)を抱えているのかを示したものです。

資産の部 (会社の財産)負債の部 (会社の借金)
現金、預金、売掛金、商品など買掛金、借入金など
純資産の部 (会社の自己資本)
資本金、利益剰余金など

貸借対照表は、左側に「資産」、右側に「負債」と「純資産」が表示されます。そして、今回メインテーマである「資本金」は、右下の 「純資産の部」 に位置しています。

純資産はざっくり言うと、皆さんが会社に出資した「資本金」と、会社が稼いだ利益が積み重なった「利益剰余金」の2つから構成されています。

株式や出資の仕組み

皆さんが会社を立ち上げる際、出資者(株主)として会社にお金を払い込みます。この払い込まれたお金が「資本金」の元になります。会社は出資の見返りとして、株主に対して「株式」を発行します。株主は株式を所有することで、会社を所有する権利や、会社の利益の一部を配当金として受け取る権利などを得ます。

これから起業される方は、通常、自分自身が会社にお金を出資する「オーナー(株主)」であり、同時に会社の「社長(役員)」も務めます。これを「オーナー社長」と呼びます。

つまり、資本金とは、株主が会社に出資した金額の裏返しのようなものと捉えてください。

資本金って何ですか?

資本金について改めてまとめてみましょう。

  1. 会社の純資産の規模を示す概念:資本金は会社の「自己資本」であり、会社の安全性を測る指標の一つとなります。資本金が大きいほど、一般的に会社は安定していると見なされます。
  2. 返済不要な資金:皆さんが会社に出資した資本金は、会社から見れば「返済義務のないお金」です。そのため、通常は出資者である皆さんが会社から返してもらうことはできません。
  3. 昔は最低額の縛りがあった:かつては、有限会社で300万円、株式会社で1000万円という最低資本金制度がありました。しかし、2006年の会社法改正によりこの制度は撤廃され、現在では資本金1円からでも会社を設立できるようになりました。
  4. 社会的な信用に繋がる:資本金が大きい会社は、「しっかりした会社」という社会的なイメージを持たれやすい傾向があります。経営的な観点からは、資本金は大きい方が有利と言えるでしょう。
  5. 通帳残高とは限らない:冒頭の問いのように、「資本金1000万円だから、会社の通帳に1000万円残っているはず!」と考える方もいますが、それは違います。資本金はあくまで「過去に会社に払い込まれた金額の記録」に過ぎません。会社を立ち上げた後、資本金は設備投資や仕入れ、運転資金など、様々な形で使われていくため、設立時の金額がそのまま預金として残っていることは稀です。
  6. 一時的に使途が縛られる期間がある:会社設立時に資本金として払い込んだ資金は、会社設立登記が終わるまでは、資本金としての証拠を保つために引き出しや使用が制限される場合があります。しかし、会社設立登記が完了し、事業がスタートしてからは、会社運営のために自由に使うことが可能です。
  7. 現金や預金以外の形になることも:会社に払い込まれた資本金は、現金や預金として残るだけでなく、商品在庫、設備、オフィスの敷金・礼金など、様々なものに形を変えて会社の中に存在します。

資本金を1000万円未満とした方がよい理由とは?(税金編)

ここが最も重要なポイントです。起業時に資本金をいくらに設定するかで、会社の税負担が大きく変わってきます。結論から言うと、 会社設立時は資本金を「1000万円未満」に設定することをお勧めします。 その主な理由を税金面から解説します。

1. 消費税の免税期間が適用される

現在、消費税には「免税事業者制度」という特例があります。これは、会社の設立後、原則として最初の事業年度と次の事業年度(最大2年間)は、消費税の納税義務が免除されるというものです。
この免税期間を享受するための主な要件の一つが、資本金が1000万円未満であることです。もし、会社設立時に資本金を1000万円以上にしてしまうと、初年度から消費税の課税事業者となってしまい、この免税メリットを享受できません。

2. 法人住民税の均等割が安くなる

法人住民税は、法人税額に応じて課税される「所得割」と、会社の利益に関わらず課税される「均等割」の2つがあります。この均等割は、会社の規模によって金額が変わる「場所代」のようなものです。

例えば東京都の場合、資本金が1000万円以下で従業員が50人以下の会社であれば、均等割の合計額は年間7万円です。しかし、資本金が1000万円を1円でも超えると、従業員50人以下でも均等割は年間18万円に跳ね上がります。約2.5倍以上も高くなるのです。
特に、利益が出ていない赤字の会社であっても均等割は発生するため、資本金1000万円未満に抑えることで、無駄な税負担を避けることができます。

3. 中小企業向けの税制優遇措置を受けられる

資本金1億円以下の中小企業には、国税庁や自治体から様々な税制優遇措置が設けられています。資本金が1億円を超えると「大企業」扱いとなり、これらの優遇措置を受けられなくなります。

主な中小企業向け税制優遇措置(資本金1億円以下)

  • 法人税の軽減税率:法人税は、年800万円までの所得に対しては15%(通常は19%)、800万円を超える部分に対しては23.2%の税率が適用されます。資本金1億円超の会社は、所得全額に23.2%が適用されるため、この軽減税率のメリットを享受できません。
  • 外形標準課税の免除:法人の事業規模(資本金、給与、地代家賃など)に応じて課税される地方税の一種です。資本金1億円超の会社に適用され、赤字であっても課税される税金ですが、資本金1億円以下であれば免除されます。
  • 接待交際費の損金算入枠:中小企業は、年間800万円までの接待交際費を全額損金(経費)として算入できます。大企業にはこの枠が大幅に制限されます。
  • 繰越欠損金の控除制限:赤字が出た場合、その赤字(欠損金)を最長10年間、将来の黒字と相殺して税金を減らすことができます(繰越控除)。資本金1億円超の会社は、繰越欠損金の控除額に制限があります。
  • 繰戻し還付の適用:今年の赤字を過去の黒字と相殺し、すでに納めた税金の還付を受けることができる制度です。これも中小企業のみに適用される優遇措置です。
  • 少額減価償却資産の特例:取得価額が30万円未満の減価償却資産(パソコン、机、椅子など)を、購入した事業年度に一括で経費にできる特例です。これも中小企業にのみ適用されます。

これらの優遇措置を考えると、事業を始めたばかりの段階で資本金1億円を超える設定にするメリットは、ほとんどありません。

4. 社会的な信用と融資審査を有利にする

資本金1円の会社と資本金1000万円の会社では、金融機関がどちらを信頼して融資を行うでしょうか?当然、資本金が多い方が信頼されやすい傾向にあります。
日本政策金融公庫などの創業融資を受ける際にも、自己資金(資本金)の額は重要な審査項目の一つです。「資本金1円」や「10万円」といった極端に少ない金額では、事業に対する本気度を疑われ、融資審査で不利になる可能性があります。

これらの点を総合すると、会社設立時は 「1000万円未満の範囲で、できるだけ大きくする」 のがベストな選択と言えるでしょう。
具体的には、100万円〜300万円程度の資本金を用意することをお勧めします。昔の有限会社の最低資本金である300万円は、ある程度の信用力を示す目安にもなります。起業資金は計画的に貯蓄し、しっかりと準備しておくことが重要です。

資本金を増やす方法はあるのか?

会社設立時は1000万円未満が有利ですが、事業が成長し、社会的な信用をさらに高めたい、あるいは事業拡大のための資金が必要になった場合、資本金を増やす(増資)方法があります。

1. 有償増資(お金を伴う増資)

株主が会社に追加でお金を払い込み、その分資本金を増やす方法です。貸借対照表では、純資産の部の「資本金」が増加します。
払い込まれた資金の全額を資本金にする必要はなく、2分の1以上を資本金に組み入れれば、残りは「資本剰余金」として計上することも可能です。

2. 無償増資(お金の動きがない増資)

会社にお金の動きを伴わない増資です。会社の内部に蓄積されている「資本剰余金」や「利益剰余金」を「資本金」に組み替えることで、資本金を増やします。これは、純資産の部の中で勘定科目の内訳を変更するだけであり、会社の財産全体の額には変化はありません。

増資を行うタイミング

一般的には、会社設立当初の消費税免税期間が終了した後、あるいは事業規模の拡大に伴い社会的な信用をさらに高めたい場合に、資本金を増資することが考えられます。

例えば、

  • BtoBビジネスで取引先からの信頼を重視する場合
  • 将来的に従業員を増やし、優秀な人材を確保したい場合(資本金が大きい方が採用に有利になることがある)

増資を行う際は、株主総会の特別決議が必要となり、登記の変更手続きや税務署への異動届の提出も必要となりますので、これらの手続きを忘れないようにしましょう。

その他の増資に関する注意点

  • 第三者割当増資における「みなし贈与」リスク:特定の第三者に株式を割り当てる増資の際、時価よりも低い金額で株式を取得させると、他の既存株主から、その第三者に対する「みなし贈与」が発生し、贈与税が課されるリスクがあります。
  • デット・エクイティ・スワップ(DES):社長が会社にお金を貸している場合、その貸付金を資本金に振り替えることで、負債を減らし自己資本を増やすことができます。会社の財務体質を改善する効果があります。

まとめ:資本金は「1000万円未満」でスタートし、必要に応じて増資を検討しよう

本記事では、会社の資本金について、その概念から適切な設定額、そして増資の方法までを解説しました。

  • 資本金は必ずしも通帳残高として残っているわけではない。あくまで出資額の記録。
  • 会社設立時は、消費税の免税期間や法人住民税の均等割、中小企業向け税制優遇措置を考慮し、「1000万円未満」に設定するのが最も税制上有利。
  • ただし、1円や10万円といった極端に少ない金額では、社会的な信用や融資審査に不利になるため、100万円〜300万円程度が目安。
  • 事業の成長や社会的な信用を高めたい場合は、消費税の免税期間終了後などに「増資」を検討する。

資本金は、会社の健全性や信用力を示す重要な要素です。これから起業される方、すでに会社を経営されている方も、ぜひ今回の内容を参考に、ご自身のビジネスにとって最適な資本金戦略を立ててみてください。