マイクロ法人を使って社会保険料を削減するには、きちんとしたステップを踏むことが重要です。
- 個人事業主を続けながら、マイクロ法人を設立する
- メインの事業は個人事業として継続し、法人ではごく小さな事業を行うのがポイントです。だから「マイクロ法人」と呼ぶんです。
- 法人で役員報酬を「できるだけ低く」設定する
- 個人事業主の国保を脱退し、法人の役員として社会保険に加入します。
- 社会保険料は役員報酬の額面に対して約30%かかるため、役員報酬を低く設定すればするほど、社会保険料も下がります。
削減効果はどのくらい?具体例を見てみよう!
例えば、個人事業主で事業所得が600万円だった場合、国民健康保険と国民年金で年間約90万円の負担がありました。
ここで、個人事業とマイクロ法人を組み合わせるとどうなるでしょう?
600万円の所得を、個人事業の所得(525万円)と法人の役員報酬(75万円)に分配するとします。役員報酬を月額6万円(年間75万円程度)に設定すれば、社会保険料を一番低いラインに抑えることができます。
この場合、社会保険料の負担はなんと約26万円に!
個人事業主の時と比べて、年間約64万円も削減できる計算になります。所得が高い方なら、100万円以上削減できるケースも珍しくありません。
「これって、すごくお得じゃない!?」と思いますよね。でも、ちょっと待ってください!ここからが重要です。
要注意!マイクロ法人スキームの「落とし穴」
「お得」な話には、必ず「リスク」もつきものです。マイクロ法人を使った社会保険料削減スキームには、いくつか知っておくべき落とし穴があります。
落とし穴1:事業の切り分けが「客観的」にできるか?
個人事業と法人で事業を「きれいに」切り分けられるかが重要です。
- 良い例: 飲食店と美容室を両方やっている方が、美容室を個人事業、飲食店を法人にする。これはOKです。
- ダメな例: 飲食店を一つだけやっていて、売上の一部を無理やり法人に付け替える。「今日は法人の日!」みたいな分け方は、税務上も社会保険上も問題になる可能性があります。
客観的に見て、それぞれが独立した事業として成り立っているかどうかがポイントです。事業実態のないマイクロ法人を作っても、税金や保険料が無駄にかかってしまうだけ…なんてことにもなりかねません。
落とし穴2:役員報酬を「高く設定しすぎ」てしまう?
社会保険料削減のキモは、役員報酬を低く抑えること。しかし、事業の分け方がうまくいかず、法人に利益が残りすぎてしまうと、高すぎる法人税を払うくらいなら…と、役員報酬を上げてしまうケースがあります。
これでは、せっかくの社会保険料削減メリットが薄れてしまいますよね。マイクロ法人の設計段階で、最適な役員報酬額を見極めることが重要です。
落とし穴3:生活資金が「なくなってしまう」可能性も…
個人事業の時に、手元の資金でギリギリ生活していた方が、法人化することで資金繰りが苦しくなるケースもあります。
法人に利益が残った場合、そのお金は社長が自由に使えるわけではありません。もしキャッシュフローがカツカツの状態で無理に法人化すると、「法人にお金はあるのに、自分の生活費がない…」という状況に陥ってしまう可能性も。
ある程度の自己資金がある状態で検討することをおすすめします。
落とし穴4:そもそも、国保の負担が「十分に高い」か?
個人事業主の時の国民健康保険料が、そもそもそれほど高くない場合、マイクロ法人を作ることでかえって損をしてしまうことがあります。
例えば、国保が年間40万円で、マイクロ法人で社会保険料が30万円に下がったとしましょう。差額は10万円の削減です。
しかし、法人を設立・維持するには、法人住民税の均等割(年間7〜8万円)や会計システム料、税理士報酬などのランニングコストが数十万円かかります。
これらのコストを考えると、たった10万円の削減のためにマイクロ法人を作っても、トータルで見れば損をする可能性があります。
マイクロ法人を設立する前に、自分の国保の状況と、法人の設立・維持にかかるコストをしっかり比較検討することが大切です。
まとめ:マイクロ法人で失敗しないために
マイクロ法人を活用した社会保険料削減は、大きなメリットがある一方で、上記のような落とし穴も存在します。成功させるためには、
- 客観的に事業を切り分けられるか
- 生活が成り立つ範囲で役員報酬を低く設定できるか
- 法人設立・維持コストを含めて、トータルで本当にお得になるか
これらをしっかり見極め、綿密な計画を立てることが不可欠です。