「メルカリで不用品を売っただけなのに、確定申告って必要なの?」
「副業で転売を始めたけど、いくらから申告しないといけないんだろう?」
フリマアプリの普及により、個人が手軽にモノを売買できるようになった今、このような税金に関する疑問を持つ人が急増しています。そして、その疑問を放置した結果、知らず知らずのうちに「脱税」してしまっているケースも後を絶ちません。
実は、メルカリなどのフリマアプリでの売却が確定申告の対象になるかどうかは、 「売却したモノの種類」と「売却の目的」 によって、そのルールが複雑に分かれています。
「生活費の足しに古着を売っただけ」ならセーフでも、「限定品のブランドバッグを高く売った」場合はアウトになるかもしれない。この微妙で、しかし決定的な境界線を、あなたは正しく理解できているでしょうか。
この記事では、
- 確定申告が「必要」か「不要」かを分ける、根本的な判断基準
- 【最重要】会社員と個人事業主で異なる「20万円」と「48万円」の壁
- 知らないと危険!高級品を売った場合に適用される「譲渡所得」という特別ルール
- 税務署が今、メルカリ利用者を重点的に調査している、その背景と実態
といった、フリマアプリの税務に関するあらゆる疑問を、誰にでも分かるように徹底的に解説していきます。この記事を最後まで読めば、あなたは自身の取引が申告対象になるかどうかを正確に判断し、無用な税務リスクから身を守るための、確かな知識を身につけることができるはずです。
1.【大原則】確定申告の要否を分ける「営利目的」という境界線
まず、すべての判断の基礎となる、最も重要な原則からお伝えします。
それは、 「その売却が、利益を得ることを目的(=営利目的)としているかどうか」 です。
① 確定申告が「不要」なケース:営利目的のない不用品の売却
あなたが、日常生活で使っていたモノ(生活用動産)が不要になり、それを処分するためにフリマアプリで売却した場合。これは、利益を得ることを主目的とした行為ではないため、原則として確定申告は不要です。
- 具体例:
- サイズが合わなくなった古着や、読まなくなった本を売った。
- 引っ越しに伴い、使わなくなった家具や家電を売った。
- 子供が成長して遊ばなくなったおもちゃを売った。
これらの取引で、たまたま購入時よりも高い値段で売れて利益が出たとしても、それは「営利目的の活動」とは見なされません。したがって、その利益が年間でいくらになろうとも、確定申告をする必要はないのです。
② 確定申告が「必要」になるケース:営利目的の継続的な売却
一方で、以下のようなケースは、明らかに利益を得ることを目的とした「事業」と見なされるため、そこで得た利益(所得)は確定申告の対象となります。
- 転売・せどり: 安く仕入れた商品を、利益を上乗せして継続的に販売している。
- ハンドメイド作品の販売: 自身で製作したアクセサリーや雑貨などを、継続的に販売している。
この「営利目的」があるかどうかが、最初の大きな分かれ道です。「自分で使っていた不用品か、売るために仕入れた(作った)商品か」と考えると分かりやすいでしょう。
2.【重要】会社員と個人事業主で違う!「20万円」と「48万円」の壁
営利目的の売却で利益が出た場合でも、その金額によっては確定申告が不要になるケースがあります。そして、その基準額は、あなたの「本業」が何かによって大きく異なります。
① 会社員・パートなどの「給与所得者」の場合 → 「20万円の壁」
会社員やパートタイマーなど、主な収入源が給与である人が、副業としてメルカリで営利目的の販売を行った場合。その年間の利益(所得)が20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要です。(※住民税の申告は別途必要)
- 利益(所得)の計算方法: 売上金額 – 仕入金額 – 送料・手数料など
- 注意点: これはメルカリの利益だけでなく、他のすべての副業(Webライティング、アフィリエイトなど)の所得を合計した金額で判断します。
② メルカリ販売が本業の「個人事業主」の場合 → 「48万円の壁」
他に給与収入がなく、メルカリでの販売が主な収入源である(事業として行っている)場合。その年間の利益(所得)が48万円以下であれば、所得税の確定申告は不要です。
- なぜ48万円?:
これは、すべての納税者に適用される 「基礎控除」 という所得控除の額が48万円だからです。所得が基礎控除の範囲内であれば、課税される所得がゼロになるため、結果的に申告の必要がなくなります。(※実際には、社会保険料控除など他の所得控除もあるため、48万円を超えても税金がかからないケースはあります)
このように、あなたが会社員なのか、それとも専業の個人事業主なのかによって、申告義務が発生するボーダーラインが異なることを、正しく理解しておく必要があります。
3.【落とし穴】高級品には要注意!「譲渡所得」という特別ルール
「不用品の売却は、いくら利益が出ても申告不要なんですよね?」
この原則には、一つだけ、非常に重要な例外があります。それは、一個(または一組)の価額が30万円を超える、貴金属、宝石、書画、骨董品などを売却した場合です。
これらの「ぜいたく品」は、たとえ不用品の売却であっても、「生活用動産」の非課税の特例からは除外され、 「譲渡所得」 という特別な所得として、確定申告が必要になります。
- 譲渡所得の対象となるものの例:
- 宝石・貴金属: 80万円で買った金のネックレスを90万円で売った(利益10万円)
- 書画・骨董品: 有名作家の絵画や、価値のあるアンティーク品を売った
- ブランド品: 限定品の高級腕時計やバッグなどが、プレミア価格で売れた
「昔買ったブランド品が、たまたま高く売れただけ」といったケースでも、その売却額が30万円を超えていれば、譲渡所得として申告義務が発生する可能性があるのです。このルールを知らずに無申告のままでいると、後々、税務署から厳しい指摘を受ける可能性があります。
【補足】自動車の売却は「譲渡所得」になる?
自動車も、売却額が30万円を超えることが多い資産です。では、車を売った場合も譲渡所得の対象になるのでしょうか。
これには、その車の「使用目的」が大きく関わってきます。
- 譲渡所得の対象にならないケース:
通勤や日常の買い物など、生活に通常必要な目的で使っていた車。
(いわゆるファミリーカーや、一般的な通勤用の車など) - 譲渡所得の対象になる可能性が高いケース:
レジャーや趣味を主目的とする車。
(スポーツカー、クラシックカー、キャンピングカーなど、生活に必須とは言えない「ぜいたく品」と見なされるもの)
また、個人事業主が事業用として経費計上していた車を売却した場合も、譲渡所得の対象となります。
この境界線は曖-昧な部分もありますが、「その車がなくても生活に困らないか」が一つの判断基準となります。
4.「バレない」はもう通用しない。税務署がメルカリ利用者を狙う理由
「少額の取引だし、個人間のやり取りだから、税務署にバレることはないだろう」
もしあなたが、まだそう考えているとしたら、その認識は非常に危険です。現代の税務署は、あなたが考えている以上に、インターネット上の取引を把握しています。そして、フリマアプリなどを利用した個人の無申告は、今、国税庁が最も力を入れている「重点調査項目」の一つなのです。
なぜ、税務署は取引を把握できるのか?
- プラットフォーマーへの調査:
税務署は、法律に基づき、メルカリやヤフオクといったプラットフォーム運営会社に対して、特定のユーザーの取引履歴や売上金の入金情報などを照会する権限を持っています。つまり、あなたが誰に、何を、いくらで売ったかというデータは、税務署の求めに応じて開示される可能性があるのです。 - 銀行口座の動きの監視:
メルカリからの売上金が、あなたの銀行口座に継続的に、あるいは多額に振り込まれていれば、その不自然な入金を税務署が察知する可能性があります。 - 購入者側からの発覚:
あなたが販売した相手が事業者であり、その取引を経費として申告していた場合、その情報からあなたの無申告が発覚するケースもあります。
このように、デジタルの世界では、あらゆる取引の痕跡がデータとして残ります。「バレないだろう」という希望的観測は、もはや過去の遺物なのです。特に、転売などで継続的に利益を上げているにもかかわらず無申告のままでいる方は、いつ税務署から連絡が来てもおかしくない、という危機感を持つべきです。
まとめ:確定申告の要否を正しく判断し、健全な取引を
フリマアプリは、私たちの生活を豊かにする、非常に便利なツールです。しかし、その手軽さの裏には、税金という社会的な責任が伴うことを、決して忘れてはいけません。
最後に、確定申告の要否を判断するためのフローチャートをまとめます。
【メルカリ売却 確定申告判断フロー】
- その売却は「営利目的」ですか?
- No(不用品の処分): → 原則、申告不要
- 例外: 1個30万円超の貴金属などを売った場合は申告必要(譲渡所得)
- Yes(転売やハンドメイド販売など): → 次のステップへ
- No(不用品の処分): → 原則、申告不要
- あなたは「給与所得者(会社員など)」ですか?
- Yes: → 年間の利益(所得)の合計が20万円を超えていますか?
- No(20万円以下): 所得税の申告不要
- Yes(20万円超): 申告必要
- No(個人事業主など): → 年間の利益(所得)から各種控除を引いた後、税金が発生しますか?(目安として、利益が48万円を超えているか)
- No(税金ゼロ): 申告不要
- Yes(税金発生): 申告必要
- Yes: → 年間の利益(所得)の合計が20万円を超えていますか?
税金のルールは複雑ですが、その基本を正しく理解することが、あなたを無用なリスクから守ります。もし、ご自身のケースで判断に迷うことがあれば、税務署や税理士などの専門家に相談することも、賢明な選択の一つです。
この記事があなたの経営の一助となれば幸いです。