「帝国データバンクから調査依頼が来たけど、情報提供した方がいいの?」「取引先の情報を知りたいけど、帝国データバンクってどうやって使うの?」このような疑問を抱えている経営者の方は少なくないでしょう。
帝国データバンクは、企業の信用調査を行う代表的な企業の一つですが、その利用方法や情報提供の是非については、意外と知られていないことも多いようです。
本記事では、帝国データバンクとは何か、情報提供のメリット・デメリット、そして情報の取得方法について、分かりやすく解説していきます。
帝国データバンクとは?~銀行ではない、企業の信用調査会社~
まず押さえておきたいのは、帝国データバンクは「銀行」ではないということです。「バンク」という名称から金融機関をイメージする方もいるかもしれませんが、主な事業は企業の信用調査です。同様の企業としては、東京商工リサーチなどが挙げられます。
帝国データバンクは、大企業から中小企業まで、様々な企業の情報を収集・分析し、その結果を「企業情報レポート」として提供しています。この情報は、企業間の取引における与信判断や、新規取引先の開拓、金融機関の融資判断などに活用されています。
調査はどのように行われるのか?
帝国データバンクの調査員が企業を訪問し、経営者や担当者からヒアリングを行ったり、決算書の提供を依頼したりします。この調査は、ランダムに行われるわけではなく、他の企業から「特定の企業を調べてほしい」という調査依頼があって初めて実施されるのが一般的です。
例えば、A社がB社と新たに取引を開始しようとする際、B社の信用状況を確認するために帝国データバンクに調査を依頼すると、帝国データバンクの調査員がB社を訪問し、情報収集を行うといった流れになります。
収集された情報はどこで公開されるのか?
調査によって収集された情報は、帝国データバンクの会員サイトなどで公開されます。ただし、誰でも無料で見られるわけではありません。情報を閲覧するためには、帝国データバンクの会員になる必要があり、さらに個別の情報(例えば、特定の企業の決算情報や詳細なレポートなど)を取得する際には、情報の内容に応じて料金が発生します。安いもので数千円から、詳細なレポートになると数万円、あるいはそれ以上の費用がかかることもあります。
企業が調査に協力した場合でも、全ての情報がそのまま公開されるわけではありません。役員報酬の詳細や借入金の内訳など、企業側が公開を望まない情報は伏せられることもあります。そのため、公開される情報の範囲や詳細度は、企業によって異なります。
帝国データバンクへの情報提供:メリットとデメリット
帝国データバンクから調査依頼が来た場合、情報提供に協力すべきかどうかは、多くの経営者が悩むポイントでしょう。基本的には**「協力しなくても良い」**というスタンスで問題ありませんが、協力することによるメリットとデメリットを理解した上で判断することが重要です。
情報提供のメリット
- 信用力の向上(業績が良い場合):
自社の業績が良い場合、その情報を公開することで、取引先や金融機関からの信用力が高まる可能性があります。帝国データバンクは、収集した情報に基づいて企業を評価し、「評点」という形で点数化します。一般的に、51点以上であれば優良企業と見なされ、新規取引の拡大や有利な条件での融資につながることも期待できます。 - 新規取引先の開拓:
評点が高く、良好な業績情報が公開されれば、それを目にした企業から新たな取引のオファーが来る可能性があります。特に、大手企業との取引を増やしたいと考えている場合には、有効な手段となり得ます。 - 金融機関からのアプローチ:
銀行などの金融機関は、常に新規の融資先を探しており、帝国データバンクの情報を参考にしています。良好な情報が公開されていれば、金融機関から融資の提案が来ることもあります。
情報提供のデメリット
- マイナスイメージの拡散(業績が悪い場合):
業績が悪いにもかかわらず情報を公開してしまうと、評点が低くなり、取引先や金融機関にマイナスのイメージを与えてしまう可能性があります。最悪の場合、既存の取引が停止されたり、融資を断られたりするリスクも考えられます。 - 一度公開すると後戻りできない:
一度情報公開に協力すると、その後も定期的に調査依頼が来ることがあります。もし、ある年の業績が悪化したために情報公開を拒否すると、これまで情報を公開していた企業が急に非公開になるため、「何か問題があったのではないか」と勘繰られる可能性があります。つまり、一度公開を始めると、継続的に情報を開示し続けるプレッシャーが生じることになります。 - 情報が独り歩きするリスク:
公開された情報が、必ずしも自社の意図通りに解釈されるとは限りません。特に、決算書の内容を深く読み解けない人が表面的な情報だけで判断してしまうと、誤解を招く可能性もあります。
結論:情報提供はケースバイケースで慎重に判断
上記を総合的に考えると、帝国データバンクへの情報提供は、「よほどのことがない限り、積極的に協力する必要はない」と言えるでしょう。特に、デメリットの方が大きいと感じる場合は、無理に協力する必要はありません。
ただし、大手企業との取引拡大を強く望んでいる場合や、明確な目的を持って信用力をアピールしたい場合には、業績が良いことを前提に情報提供を検討する価値はあります。その際も、どの範囲の情報を公開するのか、慎重に判断することが重要です。
もし、特定の取引先に自社の信用力を示したいのであれば、帝国データバンクを介さず、直接決算情報などを開示する方が、より正確かつ効果的に情報を伝えられる場合もあります。
帝国データバンクの「評点」はどうやって決まる?
帝国データバンクが付与する「評点」は、企業の信用力を示す重要な指標の一つですが、その決定プロセスは複雑です。
- 決算内容:売上高、利益、自己資本比率など、財務状況が最も重要な評価基準となります。
- 社歴:一般的に、社歴が長い企業ほど評価が高くなる傾向があります。
- 定性評価:決算書には表れない、企業の文化、技術力、ブランドイメージ、経営者の資質なども評価の対象となります。
- 情報開示度:より多くの情報をオープンにする企業ほど、評点が上がりやすいと言われています。
- 帝国データバンクとの関係性(噂レベル):これは公式な情報ではありませんが、帝国データバンクのサービスを頻繁に利用したり、高額な情報料を支払ったりしている企業は、好意的な評価を受けやすいという噂もあります。顧客である企業に対して、あからさまに不利な情報を書くことは考えにくいという側面もあるかもしれません。
ただし、これらの評点やレポート内容は、鵜呑みにしすぎないことが重要です。過去には、帝国データバンクで良好な評価がされていた企業が、実は粉飾決算を行っており、その後倒産したという事例も存在します。最終的には、自社の目で決算書を読み解き、多角的な情報から判断することが不可欠です。
帝国データバンクの情報を取得するには?
自社が情報提供する側ではなく、取引先の信用情報を確認するために帝国データバンクを利用する場合、以下の方法で情報を取得できます。
- 帝国データバンクの会員になる:
会員になることで、データベースにアクセスし、企業情報を検索・閲覧できます。 - 個別レポートの購入:
特定の企業の詳細なレポートを、都度購入することも可能です。 - 調査依頼:
まだ情報が登録されていない企業や、より詳細な情報が必要な場合には、個別に調査を依頼することができます。ただし、調査には費用と時間がかかります。
情報を取得する際も、評点や表面的な情報だけでなく、決算書の具体的な内容をしっかりと確認し、可能であれば財務分析に詳しい専門家の意見も聞くことが望ましいでしょう。
まとめ:帝国データバンクとの賢い付き合い方
帝国データバンクは、企業間の取引において重要な役割を果たす信用調査会社です。情報提供をするか否かは、自社の状況や目的を考慮し、メリット・デメリットを比較検討した上で慎重に判断する必要があります。基本的には、無理に情報提供する必要はありませんが、戦略的に活用することでビジネスチャンスが広がる可能性もあります。
また、他社の情報を取得する際には、提供される情報を鵜呑みにせず、多角的な視点から冷静に分析することが重要です。帝国データバンクの情報を一つの参考資料としつつ、最終的には自社の判断基準に基づいて意思決定を行うようにしましょう。
いずれにしても、自社の決算内容を常に良好な状態に保ち、透明性の高い経営を心がけることが、帝国データバンクとの関係性においても、そして企業経営全般においても最も重要なことと言えるでしょう。