「最近、出張のホテル代や食事代が高すぎて、経費精算が大変…」
「出張手当(日当)を出しているけど、今の金額で本当に合っているのだろうか?」
「出張旅費規程が、最強の節税策になるって聞いたけど、どういう仕組みなの?」
会社の経営者や、出張の多いビジネスパーソンであれば、近年、ホテル代や食事代、交通費といった、出張にかかる経費が、驚くほど高騰していることを、肌で感じているのではないでしょうか。
これまでと同じように出張しているだけなのに、会社から支給される出張手当(日当)では、全く経費が賄いきれず、むしろ自己負担(持ち出し)が発生してしまっている…。そんな悲鳴にも似た声が、多くの企業から聞こえてきます。
しかし、もし、この 「出張旅費規程」 という社内ルールを、今の時代に合わせて、正しく、そして戦略的に見直すだけで、
- 社長や社員は、税金も社会保険料もかからない、「非課税のお小遣い」を手に入れることができ、
- 会社は、その全額を経費として計上し、法人税を合法的に圧縮できる、
という、双方にとって、この上ないメリットが生まれるとしたら、あなたはその方法を知りたいと思いませんか?
この記事では、
- そもそも「出張旅費規程」とは何か?その基本的な仕組みと、3つの手当
- なぜ、今こそ、この規程を見直し、強化すべきなのか、その明確な理由
- 税務調査で「高すぎる」と否認されない、絶妙な手当金額の設定方法
- 出張先での「取引先との会食」費用を、日当とは別に経費化する裏技
- そして、この制度を導入すべき会社と、導入を慎重に考えるべき会社の違い
について、徹底的に、そして分かりやすく解説します。
出張旅費規程は、単なる経費精算のルールではありません。それは、 会社の資金繰りを改善し、社長や社員の可処分所得を増やし、組織全体のモチベーションを高めるための、極めて高度な「経営戦略ツール」 なのです。
この記事を最後までお読みいただき、あなたの会社の「出張」を、単なるコストから、会社と個人の双方を豊かにする「価値」へと、変革させていきましょう。
「出張旅費規程」とは?会社と個人を豊かにする、3つの手当
まず、出張旅費規程がどのような制度なのか、その基本的な仕組みからおさらいしましょう。
出張旅費規程とは、役員や社員が出張する際に、会社が支給する手当の種類や金額について、あらかじめ定めておく 「社内ルール」 のことです。
この規程を整備することで、会社は、出張にかかる費用を、実費精算ではなく、定額の手当として支給することが可能になります。
そして、この規程で定めることができる手当は、主に以下の3種類です。
① 日当(にっとう):出張中の雑費を補填する手当
日当は、出張中に発生する、細々とした経費を補填するために支給される手当です。
- 出張先での食事代、飲み物代
- 現地の近距離移動にかかる交通費(タクシー代など)
- 通信費
- 旅行用品(ひげ剃り、トラベルセットなど)の購入費
これらの細かい経費を、いちいち領収書で精算するのは、非常に煩雑です。そこで、「1日あたり〇〇円」という形で、定額の日当を支給し、経費精算の事務を簡略化する。これが、日当の本来の目的です。
② 交通費手当:移動にかかる費用を定額支給
出張には、新幹線や飛行機といった、長距離の移動が伴います。この移動にかかる費用を、実費ではなく、あらかじめ定めた金額で支給するのが 「交通費手当」 です。
例えば、「東京-名古屋間の出張における交通費手当は、往復4万円とする」といった形で、ルールを定めます。
③ 宿泊手当:宿泊にかかる費用を定額支給
出張が宿泊を伴う場合、そのホテル代などの宿泊費用を、定額で支給するのが 「宿泊手当」 です。
「1泊あたり〇〇円」という形で、役職などに応じて金額を設定します。
「非課税のお小遣い」が生まれる、出張旅費規程の魔法
さて、この出張旅費規程の、本当の魔力は、ここから始まります。
これらの手当は、会社側は、その全額を「旅費交通費」として、経費(損金)に計上することができます。
そして、それを受け取った社長や社員側は、その手当が「給与」とは見なされず、所得税も、住民税も、そして社会保険料も、一切かからないのです。
つまり、完全に非課税の収入となります。
そして、もし、実際に使った経費が、会社から支給された手当の金額よりも安かった場合、その「差額」は、まるまる個人の「お小遣い」になるのです。
【シミュレーション:1泊2日の名古屋出張の場合】
手当の種類 | 会社からの支給額 | 実際の支出額 | 差額(お小遣い) |
日当(2日分) | 10,000円(5,000円/日) | 2,000円 | 8,000円 |
交通費手当 | 40,000円 | 30,000円(格安チケット利用) | 10,000円 |
宿泊手当 | 15,000円 | 8,000円(ビジネスホテル) | 7,000円 |
合計 | 65,000円 | 40,000円 | 25,000円 |
いかがでしょうか。
この社員は、たった一度の出張で、25,000円という、税金のかからない、純粋な可処分所得を手に入れたことになるのです。もし、このような出張が、月に4回あれば、それだけで10万円の追加収入となります。
これは、給与を10万円上げるのとは、訳が違います。給与であれば、そこから税金や社会保険料が引かれますが、この「お小遣い」は、100%が手元に残るのです。
なぜ、「今こそ」出張旅費規程を見直すべきなのか?
「うちの会社にも、昔作った旅費規程があるけど…」
そう思っている経営者の方、その規程は、 今の時代の「物価」 に、本当に見合っていますか?
近年、インバウンド需要の回復や、深刻な人手不足、そして物価高騰の影響で、ホテルの宿泊費や、飲食店の価格は、驚くほどのスピードで上昇しています。
10年前に作った、「宿泊手当:1泊8,000円」といったルールでは、もはや、まともなビジネスホテルに泊まることさえ、困難になっているかもしれません。
もし、社員が出張のたびに、 手当の額を超えて、自己負担(持ち出し) を強いられているとしたら、どうなるでしょうか。
「出張に行くと、損をする」
「できれば、出張には行きたくない」
社員のモチベーションは著しく低下し、会社の成長に必要な、積極的な営業活動や、情報収集の機会が、失われてしまうでしょう。
だからこそ、 「今」 なのです。
会社の出張旅費規程を、現在の経済状況に合わせて、抜本的に見直し、強化する。その支給額を、社員が損をしない、むしろ少し「得をする」くらいの、現実的な水準に引き上げる。
この 「規程のアップデート」 こそが、社員の満足度を高め、会社の競争力を維持・向上させるための、喫緊の経営課題なのです。
税務調査で否認されない!「手当額」の絶妙な設定方法
「よし、では早速、手当の額を大幅に引き上げよう!」
そう意気込む前に、一つ、絶対に知っておかなければならないことがあります。
それは、出張旅費規程の手当額が、社会通念上、あまりにも高額であると判断された場合、税務調査で、その経費性が「否認」されるリスクがある、ということです。
では、税務署に否認されない、 「妥当な金額」 とは、一体、いくらくらいなのでしょうか。
残念ながら、法律には「日当は〇〇円まで」といった、明確な金額の基準は定められていません。その判断は、最終的に、個々の税務調査官の裁量に委ねられます。
インターネットで検索すると、「日当の相場は2,000円~3,000円」といった情報が出てくることがあります。しかし、これは、現在の物価水準を全く反映していない、非常に低い、そして危険な水準です。この相場観で設定してしまうと、前述の通り、社員の持ち出しが発生し、制度そのものが機能しなくなってしまいます。
否認されない、ギリギリのラインを攻める。
ここに、経営者の腕の見せ所と、信頼できる税理士の知見が必要となります。
税務調査で重要になるのは、「なぜ、その金額に設定したのか」という、合理的な根拠を説明できるかどうかです。
例えば、国内の主要都市における、ビジネスホテルの平均宿泊料金や、平均的な昼食・夕食代のデータを元に、「当社の事業内容と、社員の役職を鑑み、この金額が、社会通念上、妥当な実費弁償の範囲内であると判断しました」と、論理的に説明できる準備をしておくことが、重要になります。
また、社長、役員、一般社員といった、役職に応じて、手当の額に差を設けることも、一般的であり、妥当な方法として認められています。社長には、より大きな責任と、出張先での突発的な交際などが発生する可能性があるため、社員の2倍程度の金額を設定しても、不合理とは言えないでしょう。
【裏技】出張先での「取引先との会食」費用を、日当とは別に経費化する方法
出張先で、取引先と会食をする機会もあるでしょう。その場合、高級なレストランでの食事となれば、とても日当だけでは賄いきれません。
「この会食費用のせいで、日当が赤字になってしまう…」
ご安心ください。これには、簡単な解決策があります。
出張旅費規程の中に、 「取引先との接待交際を目的とした飲食費については、日当とは別に、実費での精算を認める」 という一文を、付け加えておくのです。
たったこれだけで、出張先での重要な会食は、 「接待交際費」 として、日当の枠とは全く別で、経費として計上することが可能になります。
これにより、日当は、純粋に、個人の食事代や雑費を補填するための「お小遣い」として、そのメリットを最大限に享受することができるのです。
この制度、導入すべき会社、すべきでない会社
最後に、この出張旅費規程が、すべての会社にとって、手放しで導入すべき制度ではない、という点にも触れておきます。
【導入を慎重に検討すべき会社】
それは、 「一般社員の出張が、非常に多い会社」 です。
社長や、一部の役員の出張がメインであれば、この制度は絶大な節税効果を発揮します。
しかし、多くの一般社員が、頻繁に出張するような会社の場合、全社員に手厚い出張手当を支給すると、その総額は、会社の資金繰りを大きく圧迫する、新たな固定費となりかねません。
社員にとっては嬉しい制度でも、それによって会社の体力が削がれてしまっては、本末転倒です。
出張旅費規程は、一度導入すると、社員の不利益になるような改定(手当の減額など)は、簡単にはできません。
自社の出張の頻度、対象となる人数、そして会社の支払い能力を、総合的に、そして慎重に判断した上で、導入を検討する必要があります。
まとめ:「出張」を、会社と個人の双方を豊かにする「価値」に変えよう
今回は、多くの経営者が見過ごしがちな、「出張旅費規程」という制度について、その本当の価値と、今の時代に合わせた戦略的な活用法を、詳しく解説しました。
- 出張旅費規程は、単なる経費精算ルールではなく、会社は「節税」、個人は「非課税のお小遣い」を得られる、Win-Winの制度です。
- 近年の物価高騰に対応するため、「今こそ」、自社の規程の金額を見直し、現実的な水準にアップデートすることが、社員のモチベーション維持に不可欠です。
- 手当の金額設定は、税務調査で否認されないよう、社会通念上の妥当性を意識する必要があります。専門家である税理士と相談しながら、最適なラインを見極めましょう。
- 出張先での「会食」は、規程に一文を加えるだけで、日当とは別に、実費精算することが可能です。
- ただし、一般社員の出張が多い会社では、手当の総額が、会社の資金繰りを圧迫するリスクもあるため、導入は慎重に判断すべきです。
あなたの会社の「出張」は、ただ時間とコストがかかるだけの、面倒な業務になっていませんか?
出張旅費規程というツールを賢く活用することで、その「出張」を、会社の利益を守り、社員の満足度を高め、組織全体の活力を生み出す、極めて価値の高い 「戦略的活動」 へと、変革させることができるのです。
ぜひ、この記事を参考に、あなたの会社の出張旅GE規定を、今一度、見直してみてください。その小さな改定が、あなたの会社の未来を、大きく変えるきっかけとなるかもしれません。
最後までお読みいただくありがとうございました。この記事があなたの経営の一助になれば幸いです。