【融資担当者が語る】審査を100%通す「事業計画書」の作り方|具体的な数字の算出法まで徹底解説

節税・経費

「起業したいけど、事業計画書って何を書けばいいのか分からない…」
「融資を受けたいのに、数字の計画を作るのが苦手で、後回しにしてしまっている…」
「銀行員は、事業計画書のどこを見て、融資の可否を判断しているんだろう?」

新しい事業への夢と情熱を胸に、起業や新規事業の立ち上げを志すとき、その実現の鍵を握るのが 「資金調達」です。そして、その資金調達、特に金融機関からの「融資」 を成功させるために、絶対に避けては通れない、最も重要な書類があります。

それが、 「事業計画書」 です。

事業計画書とは、単なる「作文」や「夢物語」ではありません。それは、あなたの事業の未来を、具体的で客観的な「数字」という共通言語で描き出し、金融機関に「この事業には将来性があり、投資(融資)する価値がある」と納得させるための、最強のプレゼンテーション資料なのです。

この記事では、数多くの企業の融資獲得を支援してきた専門家の視点から、 融資担当者の心を動かし、審査を100%成功に導くための「事業計画書の作り方」 を、具体的な数字の算出方法から、金融機関が見ている評価ポイントまで、徹底的に解説します。

この記事を最後までお読みいただくことで、あなたは以下の知識と具体的なアクションプランを手に入れることができます。

  • なぜ金融機関が、事業計画書の「数字」をこれほどまでに重視するのか、その理由がわかります。
  • 日本政策金融公庫の雛形を元に、事業計画書の基本的な作成手順をステップバイステップで学べます。
  • 【ラーメン屋の開業シミュレーション】を元に、売上高、経費、利益といった重要な数字の、具体的で説得力のある算出方法を身につけることができます。
  • 融資額を決定する際の、自己資金との適切なバランス感覚(1/3ルールなど)を理解できます。
  • 金融機関が融資審査でチェックしている「3つの評価ポイント」を知り、信頼性の高い計画書を作成できるようになります。

事業計画書の作成は、面倒な作業に思えるかもしれません。しかし、このプロセスこそが、あなたの事業の成功確率を劇的に高める、最も重要な経営活動なのです。この記事を参考に、あなたの熱い想いを、誰もが納得する「数字」へと昇華させていきましょう。

なぜ事業計画書は「数字」がすべてなのか?

事業計画書には、創業の動機や事業内容など、文章で説明する部分も多くあります。しかし、金融機関が最終的に最も重視するのは、 「数字」 です。

なぜなら、銀行のビジネスは、貸したお金を、利息とともにきちんと返してもらうことで成り立っているからです。彼らにとって最大の関心事は、 「この会社は、融資したお金を使って、きちんと利益を出し、滞りなく返済してくれる能力があるか?」 という一点に尽きます。

あなたの事業に対する情熱や、商品の素晴らしさをどれだけ熱く語っても、それが 「いくらの利益に繋がり、どうやって返済していくのか」 を、客観的な数字で示すことができなければ、彼らは首を縦に振ってはくれません。

数字に基づかない事業計画は、単なる「夢物語」。数字に裏付けられて初めて、それは「実現可能な計画」として評価されるのです。

融資を引き出す事業計画書の作り方|5つのステップ

それでは、実際に事業計画書を作成する手順を、5つのステップに分けて解説していきます。ここでは、多くの創業融資で利用される 「日本政策金融公庫」 の雛形をベースに考えていきましょう。(雛形は公庫のホームページから無料でダウンロードできます。)

ステップ1:必要な資金(初期投資)をすべて洗い出す

まず最初に、事業を始めるために、何に、いくらのお金が必要なのかを、すべて洗い出します。これを 「設備資金」 と呼びます。

【ラーメン屋の開業シミュレーション:設備資金】

  • 店舗の取得・内装工事費
    • 保証金(敷金):100万円
    • 内外装工事費:500万円
    • 厨房設備(調理器具、冷蔵庫など):300万円
    • 客席設備(テーブル、椅子など):100万円
  • 車両運搬具:仕入れ用の軽トラックなど:100万円
  • その他:レジ、券売機など:50万円
  • 設備資金 合計:1,150万円

ここでのポイントは、漏れなく、そして現実的な金額を算出することです。それぞれの項目について、業者から取得した 「見積書」 を添付すると、計画の信頼性は格段に向上します。

ステップ2:運転資金を計算する

次に、事業が軌道に乗るまでの間の 「運転資金」 を計算します。運転資金とは、日々の経費の支払いや、仕入れ代金などに充てるためのお金です。

特に創業当初は、売上が安定して入金されるまでに時間がかかります。その間、経費の支払いは待ってくれません。手元の現金が尽きてしまわないよう、最低でも3ヶ月分、できれば6ヶ月分の運転資金を確保しておくのが理想です。

運転資金の具体的な計算方法は、後述する「経費の計算」で行います。ここでは、ひとまず「運転資金も必要なんだな」と認識しておきましょう。

ステップ3:売上高を予測する

ここからが、事業計画の「中身」を作る、最も重要なパートです。まずは、 「どれくらいの売上が見込めるのか」 を、具体的な根拠とともに予測します。

「なんとなく、月100万円くらいは売れると思います」では、全く説得力がありません。以下のように、分解して、積み上げて計算します。

【ラーメン屋の開業シミュレーション:月間売上高の予測】

  • 客単価:ラーメン1杯800円、トッピングやサイドメニューで平均1,000円と想定。
  • 席数:カウンターとテーブルで20席
  • 回転数:ランチタイム(3回転)、ディナータイム(2回転)で、1日あたり平均2.5回転と想定。
  • 満席率:常に満席とは限らないため、平均 60% と想定。
  • 営業日数:週1日定休で、月間25日営業と想定。

これらの要素を掛け合わせると、1日の来客数が計算できます。

  • 1日の来客数:20席 × 2.5回転 × 60% = 30人

そして、月間の売上高は、

  • 月間売上高:1日の来客数30人 × 客単価1,000円 × 営業日数25日 = 75万円

となります。
さらに、事業計画書には、 「創業当初は75万円だが、半年後には認知度も上がり、来客数が〇〇人に増え、月商100万円を目指す。1年後には、常連客も定着し、月商150万円を目標とする」 といった、将来の成長ストーリーも盛り込みましょう。

ステップ4:経費を計算する

次に、事業を運営していくためにかかる 「経費」 を、詳細に見積もります。経費は、前回の記事でも解説したように、「変動費」と「固定費」に分けて考えると、より正確な利益予測が可能になります。

【ラーメン屋の開業シミュレーション:月間経費の予測】

  • 変動費(売上原価)
    • 飲食業の原価率は、一般的に30%程度。
    • 月商75万円の場合:75万円 × 30% = 22.5万円
  • 固定費
    • 人件費:自分(社長)の役員報酬25万円+アルバイト2名(時給1,100円×1日6時間×月20日×2名)=約26.4万円。合計で約51.4万円
    • 地代家賃:店舗の家賃 20万円
    • 水道光熱費5万円
    • 広告宣伝費:グルメサイト掲載料など 3万円
    • その他経費:通信費、消耗品費など 5万円
  • 経費合計:22.5万円(変動費)+ 84.4万円(固定費)= 106.9万円

これで、売上と経費の見込みが出ました。このシミュレーションでは、創業当初は、
利益 = 75万円(売上) − 106.9万円(経費) = ▲31.9万円
となり、毎月約32万円の赤字が出ることが予測されます。

この赤字を補填し、事業を継続するために必要なのが、ステップ2で触れた「運転資金」です。最低でも3ヶ月分、つまり 約100万円(32万円×3ヶ月) の運転資金が必要だ、という具体的な数字が見えてきました。

ステップ5:融資希望額を決定する

最後に、これまでの計算を元に、融資を希望する金額を決定します。

  • 必要な資金の合計
    • 設備資金:1,150万円
    • 運転資金:100万円
    • 合計:1,250万円

この必要な資金を、 「自己資金」「融資」 でどう賄うかを考えます。

創業融資においては、自己資金の割合が非常に重要視されます。一つの目安として、必要な資金総額の1/3程度の自己資金を用意できていると、審査において有利に働くとされています。

もし、あなたが400万円の自己資金を用意できるのであれば、

  • 融資希望額:1,250万円 − 400万円 = 850万円

という形で、融資の申請額を設定します。
自己資金が少ない場合でも、諦める必要はありませんが、事業に対する本気度を示すためにも、できる限りの自己資金を準備することが、融資成功の確率を高めることに繋がります。

金融機関はここを見ている!融資審査の3つの評価ポイント

事業計画書を提出した際、金融機関の担当者は、どのような視点でその内容を評価するのでしょうか。主に、以下の3つのポイントが厳しくチェックされます。

1. 計画の「現実性」と「具体性」

担当者がまず見るのは、 「この計画は、絵に描いた餅ではなく、本当に実現可能なのか?」 という点です。

  • 売上予測の根拠は明確か?(客単価や来客数の設定は、周辺の競合店と比較して妥当か?)
  • 経費の見積もりは、甘すぎないか?(想定外のコストも考慮されているか?)
  • 計画に使われている数字は、どこから持ってきたものか?(見積書などの裏付け資料はあるか?)

「なんとなく」「頑張れば」といった曖รา昧な言葉は通用しません。すべての数字に、客観的で具体的な根拠を示すことが、計画の信頼性を高める上で不可欠です。

2. 経営者の「能力」と「熱意」

金融機関は、「事業」にお金を貸すと同時に、 「経営者という個人」 にお金を貸します。そのため、経営者自身の資質も厳しく評価されます。

  • 事業経験:計画している事業と同じ、または関連する業界での十分な経験があるか。
  • 自己資金:事業のために、自らのリスクでどれだけのお金を準備してきたか。これは、事業に対する「本気度」の最も分かりやすい指標です。
  • 個人の信用情報:過去にクレジットカードの支払いを延滞したり、多額のローンを抱えていたりしないか。

事業計画書を通じて、あなたのこれまでの経験と、この事業にかける熱い想いを、説得力を持って伝えることが重要です。

3. 「返済能力」の有無

そして、最終的に最も重要なのが、 「この会社は、貸したお金をきちんと返済してくれる能力があるか?」 という点です。

金融機関は、あなたが作成した収支計画を元に、

「この利益水準であれば、毎月の生活費を支払った上で、融資の返済原資を十分に確保できるだろうか?」

というシミュレーションを行います。
事業計画には、融資を受けた後の、具体的な返済計画も含めて記載し、利益の中から問題なく返済していけることを、数字で明確に示す必要があります。

まとめ:事業計画書は、あなたの夢を「現実」に変える設計図

今回は、金融機関からの融資を成功させるための、「事業計画書」の作り方について、その思考プロセスから具体的な数字の算出方法までを詳しく解説しました。

  • 事業計画書の核心は「数字」にあります。情熱やアイデアを、客観的で具体的な数字に落とし込むことが、融資成功の鍵です。
  • 計画作成は、「①必要な資金の洗い出し → ②運転資金の計算 → ③売上予測 → ④経費計算 → ⑤融資希望額の決定」というステップで進めます。
  • 売上や経費の予測は、「なんとなく」ではなく、客単価や人件費などを細かく分解し、積み上げて算出することで、説得力が格段に増します。
  • 金融機関は、「計画の現実性」「経営者の能力」「返済能力」という3つの視点で、あなたの事業を厳しく評価します。
  • すべての数字に「なぜ、その数字になるのか」という根拠(見積書やデータなど)を準備し、計画の信頼性を高めることが重要です。

事業計画書を作成する作業は、あなたの頭の中にある漠然とした「夢」や「アイデア」を、一つひとつ検証し、磨き上げ、 「実現可能な事業モデル」 へと昇華させていく、極めて重要なプロセスです。

このプロセスに真剣に取り組むことで、あなたは、金融機関を説得できるだけでなく、自分自身の事業が持つ可能性とリスクを、誰よりも深く理解することができるようになります。

ぜひ、この記事を参考に、あなたの熱い想いが詰まった、最高の事業計画書を完成させてください。その設計図こそが、あなたの夢を現実のものとする、確かな第一歩となるはずです。

最後までお読みいただくありがとうございました。この記事があなたの経営の一助になれば幸いです。