社員の給料はもっと上げられる!会社の利益と個人の成長を両立させる経営戦略とは?

役員賞与・役員報酬

「中小企業は、結局社長だけが儲かって、社員の給料には限界がある…」
「社員の給料を上げてあげたいけど、どうすれば会社の利益と両立できるのか分からない…」
「社員のモチベーションを高め、会社の成長にも繋がるような給与体系を築きたい…」

多くの中小企業の経営者や、そこで働く社員の方々が、一度はこのようなイメージや悩みを抱いたことがあるのではないでしょうか。「社員の給料は頭打ち」という考えは、もはや日本の社会における一種の固定観念のようになっています。

しかし、本当にそうなのでしょうか?

実は、会社のビジネスモデルや経営者の考え方次第で、社員の給料を大幅に引き上げ、年収1,000万円、さらには2,000万円を目指すことも決して夢物語ではありません。

この記事では、多くの企業の成長戦略に携わってきた専門家の視点から、 「社員の給料が上がらないビジネスモデル」「社員の給料を上げやすいビジネスモデル」 の違いを明確にし、あなたの会社を社員と共に成長させるための具体的な経営戦略を徹底的に解説します。

この記事を最後までお読みいただくことで、あなたは以下のことを深く理解できます。

  • 多くの企業が採用する「仕事に人をつける」モデルのメリットと、給与が上がりにくい根本的な理由がわかります。
  • 社員の給料を青天井に引き上げる可能性を秘めた「人に仕事をつける」モデルの具体的な仕組みと、その成功の鍵がわかります。
  • 「人に仕事をつける」モデルを成功させるための、給与制度設計における重要な注意点(基本給と成果給のバランス)を学べます。
  • 「給料が上がらないのは業界のせい」という固定概念を打ち破り、社員の強みを活かした新規事業創出のヒントを得られます。
  • 経営者が多くの報酬を得ることの正当性と、社員が給与を上げるために目指すべき道筋が明確になります。

「うちの会社では無理だ」「この業界では給料は上がらない」と諦める前に、ぜひこの記事をお読みください。社員一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、会社の成長と個人の豊かさを両立させるための、新しい視点と具体的なアクションプランがここにあります。

あなたの会社はどっち?給与水準を決める2つのビジネスモデル

社員の給料が上がるか上がらないかは、その会社が採用しているビジネスモデルに大きく左右されます。ビジネスモデルは、大きく分けて2つのタイプに分類できます。

  1. 仕事に人をつけるモデル(仕組み重視型)
  2. 人に仕事をつけるモデル(個人重視型)

あなたの会社がどちらのモデルに近いかによって、給与戦略は大きく変わってきます。それぞれの特徴と、給与への影響を詳しく見ていきましょう。

モデル1:「仕事に人をつける」仕組み重視型の光と影

これは、多くの企業、特にチェーン展開する飲食店や製造業、コールセンターなどで採用されている、最も一般的なビジネスモデルです。

このモデルでは、あらかじめ完成された「仕事(業務プロセス)」があり、そこに「人」を当てはめていくという考え方をします。

例えば、ラーメン店を想像してみてください。スープの作り方、麺の茹で時間、接客マニュアルなど、すべての業務が詳細に標準化されています。新しく入ったスタッフは、そのマニュアル通りに動くことで、誰が作っても一定の品質のラーメンを提供できるようになっています。

【メリット】

  • 仕組み化と拡大のしやすさ:業務がマニュアル化されているため、誰がやっても品質が安定します。これにより、新入社員の教育が容易になり、店舗の多店舗展開など、事業をスピーディに拡大していくことが可能です。まさに「仕組み」が利益を生み出すモデルです。

【デメリット:給料が上がりにくい理由】
このモデルの最大のデメリットは、社員の給料が上がりにくいという点です。なぜなら、社員の仕事は「マニュアルをこなすこと」であり、個人の創造性や特別なスキルが求められる場面が少ないからです。

  • 生産性が頭打ちになる:マニュアル通りに作業する以上、個人の生産性には限界があります。どれだけ早く正確にラーメンを作れるようになっても、その生産性の向上には上限があります。
  • 個人の成果が見えにくい:お店の売上が上がったとしても、それは「立地が良かった」「本部のマーケティングが成功した」といった、個人の努力以外の要因が大きい可能性があります。「自分の頑張りのおかげで売上が上がった」と直接的に証明することが難しいため、給与への反映も限定的になります。

もちろん、お店全体の業績が良ければ、多少のボーナスが出ることはあるでしょう。しかし、個人の給料が劇的に、例えば年収が数百万単位で上がるようなことは、構造的に起こりにくいのです。

このモデルで給料を上げたければ、方法は一つ。昇進・昇格して、より責任の重い立場(店長、エリアマネージャー、本部役員など)に就くことです。「プレイヤー」として働き続ける限り、給与にはアッパー(上限)が存在するのが、この「仕事に人をつける」モデルの宿命と言えます。

モデル2:「人に仕事をつける」個人重視型の可能性とリスク

一方、「人に仕事をつける」モデルは、前述のモデルとは全く逆のアプローチを取ります。

このモデルでは、まず優秀な「人」ありきで、その人の持つ「強み」や「得意なこと」を最大限に活かす形で「仕事」を創り出していくという考え方をします。

例えば、会社に情報発信が非常に得意な社員がいたとします。その社員の強みを活かして、YouTubeチャンネルを立ち上げたり、大規模な講演会を企画・運営したりする。これは、もともと会社になかった仕事を、その「人」の能力を起点に創り出した例です。

【メリット:給料を上げやすい理由】
このモデルの最大のメリットは、社員の給料に上限がなく、成果に応じて青天井に上げていくことが可能な点です。

  • 成果と給与が直結する:新規事業を立ち上げ、大きな売上を上げた場合、その成果は紛れもなくその社員個人の貢献によるものです。そのため、「売上の〇%をインセンティブとして支給する」といった形で、成果と給与をダイレクトに結びつけることができます。
  • モチベーションの向上:自分の得意なことを仕事にし、それが直接的な報酬に繋がるため、社員は高いモチベーションを維持して仕事に取り組むことができます。「やればやるだけ報われる」という環境が、さらなる成長と成果を生み出す好循環に繋がります。

実際に、この「人に仕事をつける」モデルを採用している企業では、社員の平均年収が1,000万円を超えることも珍しくありません。世間一般の「社員の給料は頭打ち」という常識を覆し、2,000万円、3,000万円といった報酬を手にすることも、理論上は可能なのです。

【デメリット】
しかし、このモデルには大きなリスクも伴います。それは、事業が特定の個人に依存してしまう「属人化」のリスクです。

  • 替えが効かない:その社員が病気で倒れたり、退職してしまったりした場合、その事業は即座にストップしてしまいます。事業の継続性が、個人の存在に大きく依存してしまうのです。
  • 規模の拡大が難しい:一人ひとりの強みに合わせた事業展開となるため、マニュアル化が難しく、事業規模をスピーディに拡大していくことには向きません。

この「替えが効かない」というリスクを背負っているからこそ、その責任と成果に見合った高い報酬が支払われる、とも言えます。

「人に仕事をつける」モデルを成功させるための給与制度設計

「人に仕事をつける」モデルで社員に高い給与を支払うためには、給与制度の設計に細心の注意を払う必要があります。特に重要なのが、「基本給」と「成果給・賞与」のバランスです。

注意点:安易に「基本給」を上げてはいけない

成果が出たからといって、安易に毎月の「基本給」を大幅に上げてしまうのは非常に危険です。なぜなら、一度上げた社員の基本給を、会社の業績が悪化したからといって下げることは、法律上非常に難しいからです。

役員報酬であれば、株主総会の決議によって柔軟に下げることが可能ですが、社員の給与は労働契約法によって強く保護されています。

もし、業績が良い時期に基本給を上げすぎると、不況に陥った際に、その固定費が会社の経営を圧迫し、倒産の危機を招くことにもなりかねません。

解決策:変動報酬で柔軟に還元する

この問題を解決するためには、給与体系を以下のように設計するのが賢明です。

  • 基本給:生活を安定させるための基盤として、ある程度の水準は確保しつつも、過度に高く設定しない。
  • 成果給(インセンティブ):個人の売上や利益など、明確な成果指標に連動して支払う。
  • 決算賞与:会社全体の年間の利益に応じて、その一部を社員に還元する。

このように、給与の大部分を 「変動報酬(成果給や賞与)」 で支払う仕組みにすることで、会社の業績と連動させながら、社員の成果に柔軟に報いることが可能になります。

例えば、社会保険料の負担を軽減するために、あえて毎月の給料を低めに設定し、その分、年に1~2回の賞与でドカンと大きく還元するという戦略も、利益が出ている会社にとっては非常に有効です。

「業界の常識」という固定観念を打ち破る

「うちの業界は特殊だから、そんなやり方は通用しない」
「人に仕事をつけるなんて、一部のクリエイティブな業界だけの話だろう」

そう考える経営者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それは本当でしょうか?

その考え方自体が、会社の成長を妨げる 「固定観念」 になっている可能性があります。

どんな業界であっても、社員一人ひとりには、まだ発揮されていない「強み」や「才能」が眠っているはずです。

  • 顧客とのコミュニケーションが抜群にうまい営業マン
  • 業務効率化のアイデアを次々と思いつく事務スタッフ
  • SNSでの発信が得意な若手社員

こうした社員の強みを活かして、既存の事業にプラスアルファする形で、新しいサービスや事業を立ち上げることは、どんな会社にも可能です。

「私たちの業種はこうあるべきだ」という枠にとらわれず、「この社員の強みを活かせば、どんな新しい価値を生み出せるだろうか?」という視点を持つこと。それこそが、社員の給料を上げ、会社を成長させるための第一歩なのです。

経営者が多くの報酬を得ることの正当性

最後に、しばしば議論になる「社長だけが儲かっている」という点について触れておきます。

結論から言うと、経営者が多くの報酬を得ることは、当然の権利であり、正当なことです。

特に、「仕事に人をつける」仕組み重視型のビジネスモデルにおいては、その「仕組み」をゼロから創り上げたのは、紛れもなく経営者自身です。

  • 誰でもできるような業務プロセスを設計し、
  • 顧客が集まり、
  • 安定的に利益が上がる

という、優れた「仕組み」を構築したからこそ、会社は成り立っています。その仕組み創りの対価として、経営者が多くの報酬を得るのは、資本主義の原則から見ても当然のことなのです。

会社には、その仕組みを使って働く「使われる立場の人」と、その仕組みを創り、人を動かす「使う立場の人」がいます。どちらが良い悪いという話ではなく、役割が違うのです。「使う立場」になり、より大きな責任を負い、より大きなリスクを取るからこそ、より大きなリターン(報酬)を得ることができるのです。

社員がもし、より高い給料を得たいと望むのであれば、マニュアルをこなすだけの立場に留まるのではなく、自ら会社に新しい価値をもたらすような「人に仕事をつける」存在になるか、あるいは昇進して「使う立場」を目指す必要がある、ということを理解することも重要です。

まとめ:社員の可能性を信じ、共に成長する会社へ

今回は、社員の給料を上げていくための経営戦略について、2つのビジネスモデルを比較しながら解説しました。

最後に、本日の重要なポイントをまとめます。

  • 給与水準はビジネスモデルで決まる:「仕事に人をつける」モデルは給与が上がりにくく、「人に仕事をつける」モデルは成果に応じて給与を上げやすい。
  • 「仕事に人をつける」モデルの戦略:給与水準には上限があることを前提に、経営者は仕組み創りの対価として報酬を得、会社は利益を再投資して規模の拡大を目指すのが王道です。
  • 「人に仕事をつける」モデルの戦略:社員の強みを活かして新規事業などを創出し、成果と給与を直結させることで、モチベーションと会社の成長を両立できます。ただし、属人化のリスク管理が不可欠です。
  • 給与制度設計の鍵:基本給を上げすぎず、「成果給」や「決算賞与」といった変動報酬を活用することで、会社の財務を守りながら柔軟な利益還元が可能になります。
  • 固定観念からの脱却:「業界の常識」にとらわれず、社員の可能性を信じて新しい価値創造にチャレンジすることが、会社の未来を切り拓きます。

「社員の給料は上げられない」というのは、もはや過去の時代の思い込みです。経営者が社員一人ひとりの強みと向き合い、その可能性を最大限に引き出す環境を整えることで、会社の利益と社員の豊かさは、必ず両立できます。

あなたの会社は、社員を「マニュアルをこなす歯車」として扱いますか?それとも、「新しい価値を生み出すパートナー」として共に成長していきますか?

その問いに対する答えが、あなたの会社の未来の給与水準を決めるのです。