事業承継税制の解説とリスク

事業承継税制とそのリスクについてわかりやすくまとめてみましょう。事業承継というのは、会社の株を次の世代に譲り渡すプロセスです。しかし、株の価値が高いとその譲渡の際に多額の税金がかかってしまいます。たとえば、20年間毎年1000万円の利益を上げている企業の価値は2億円になります。この場合、最高税率55%が適用されると、譲渡する際に1億円もの税金が発生する可能性があります。これでは、事業をスムーズに引き継ぐのが難しくなってしまいます。

そこで登場するのが「事業承継税制の特例」です。この特例を利用すると、株を譲渡する際の税金が猶予され、さらに条件を満たせば相続税も猶予されるというメリットがあります。ただし、この特例を利用するためにはいくつかの条件があります。まず、会社の会長が元々の代表であり、かつ筆頭株主であること。次に、株を譲り受ける人が3年以上その会社の役員であることが必要です。また、この特例には5年間の要件をクリアする必要があり、その後、さらに次の世代に譲渡することで過去に発生していた税金が免除される可能性もあります。

ただし、この税制にはリスクも伴います。特例の要件を満たさない場合、猶予されていた税金を一括で支払わなければならないリスクがあります。たとえば、途中で代表を退いたり、株を売却してしまうと税金が発生することになります。さらに、この特例を受けるためには、事業承継計画を提出しなければなりません。提出期限は2024年3月までで、実際の事業承継を2027年までに完了させる必要があります。これらの期限を守らないと、特例の恩恵を受けられなくなるので注意が必要です。また、次の世代に誰が継ぐのかが不明確だと、事業承継の計画自体が不確実になり、リスクが高まります。したがって、長期的な視点で計画を立てることが求められます。

実際の事例として、ジャニーズ事務所のケースがあります。ジャニーさんが亡くなった後、ジュリーさんに株が譲渡されました。このとき、彼女が5ヶ月以内に代表になったことで、特例を利用することが可能になったのです。この特例を使えば、ジャニーさんからの相続税が免除される可能性があります。さらに、5年間の要件を満たすことで相続税の負担を大幅に軽減できるというメリットもあります。ただし、事業承継を完了させる期限は2027年12月までと決められています。特例の期限が延長される可能性もありますが、確実なものではないため、計画的な行動が必要です。

事業承継をスムーズに行うためには、やはり税金対策が欠かせません。たとえば、利益を抑える戦略を取ることで、将来的な税金の負担を軽減することができます。また、早めに事業承継の計画を立てることが重要です。税理士と相談して、具体的な対策を検討するのも良いでしょう。事業承継は短期間で解決できる問題ではなく、企業の成長と後継者の育成を同時に考える長期的な戦略が求められます。

それでは詳しく見ていきましょう。