【銀行融資の面談マニュアル】担当者に聞かれる5つの質問と、融資を引き出す「模範解答」を徹底解説!

法人設立

「事業拡大のために融資を受けたいが、銀行の面談で何を話せばいいのだろう?」
「面談で失敗して、融資を断られたらどうしよう…」

多くの経営者や個人事業主にとって、銀行融資の面談は、事業の未来を左右する、緊張を伴う重要な局面です。特に、コロナ関連の特別融資が終了し、金融機関の審査が厳格化している現在、面談での受け答え一つで、融資の可否や条件が大きく変わってしまう可能性があります。

実は、銀行の融資面談で担当者から聞かれる質問には、ある程度決まったパターンがあります。これらの質問の意図を理解し、事前にしっかりと準備をして、的確な回答を用意しておくことが、融資を成功させるための最大の鍵となるのです。

この記事では、銀行の融仕事談で必ずと言っていいほど聞かれる5つの重要な質問を挙げ、それぞれの質問に対する「NGな回答」と「模範的な回答」を具体的に解説します。さらに、融資をより有利に進めるための交渉術や、日頃から実践すべき銀行との付き合い方についても、分かりやすく徹底的に解説していきます。

融資面談の基本:なぜ「事前準備」がこれほど重要なのか?

銀行の融資担当者は、面談を通じて、決算書の数字だけでは分からない、経営者の資質や事業の将来性、そして返済への確実性を見極めようとしています。

  • 経営者の信頼性: この経営者は、事業内容を深く理解し、将来のビジョンを明確に持っているか?質問に対して、論理的かつ誠実に答えられるか?
  • 事業計画の妥当性: 借りたお金を有効に活用し、事業を成長させ、利益を生み出す具体的な計画があるか?
  • 返済能力の確実性: 生み出した利益から、確実に借入金を返済していけるのか?

これらの点について、その場でしどろもどろになったり、曖昧な回答しかできなかったりすると、「この経営者に貸しても大丈夫だろうか」と不信感を抱かれ、最初の段階で「門前払い」となってしまうことすらあります。

逆に、たとえ決算書の数字が完璧でなくても、しっかりとした事業計画と、それを裏付ける具体的な説明ができれば、銀行からの信頼を得て、融資の可能性を大きく高めることができるのです。

融資面談を成功させるための「前提条件」

面談に臨む前に、クリアしておくべきいくつかの前提条件があります。これを怠ると、面談のテーブルにすらつけない可能性があります。

  1. 信頼できる専門家(税理士など)を味方につける:
    • 特に創業融資の場合、税理士が関与していない事業計画書は、信頼性が低いと見なされることがあります。事前に顧問税理士をつけ、事業計画の策定からサポートしてもらうことが、融資成功の確率を大きく高めます。
  2. 金融機関は「紹介」を重視する:
    • 全く面識のない状態で、いきなり銀行の窓口に「飛び込み」で融資を申し込むのは、最もハードルが高い方法です。
    • 顧問税理士や、既にその金融機関と良好な関係を築いている他の経営者から、担当者を紹介してもらうのが、最もスムーズなアプローチです。紹介があるだけで、銀行側の警戒心は和らぎ、話を聞いてもらいやすくなります。
  3. 適切な金融機関を選ぶ:
    • 創業期の事業者や中小企業が、いきなりメガバンクに融資を申し込んでも、相手にされないケースがほとんどです。彼らの主なターゲットは、大企業や中堅企業です。
    • まずは、 日本政策金融公庫、信用金庫、地方銀行(特に第二地銀) といった、中小企業の支援に積極的な金融機関を主な相談先として選びましょう。
  4. 身だしなみは「信頼」の第一歩:
    • お金を借りに行くという場面で、ラフすぎる服装や清潔感のない身だしなみは、相手に不誠実な印象を与えかねません。銀行は伝統的な組織であり、TPOをわきまえた、信頼感のある服装で臨むことが基本です。
  5. 「事業計画書」は必須の武器:
    • 口頭での説明だけでは、事業の魅力や実現可能性を伝えるには限界があります。売上・費用・利益の計画、事業のビジョン、自社の強みなどをまとめた、具体的で実現可能性の高い事業計画書を必ず作成し、持参しましょう。
    • 日本政策金融公庫のホームページなどには、創業計画書の雛形や記入例が公開されており、これらを参考にすることで、質の高い計画書を作成することができます。

【厳選5選】銀行の融資面談で必ず聞かれる質問と、その模範解答

では、具体的にどのような質問が聞かれ、どう答えれば良いのでしょうか。ここでは、特に重要な5つの質問について、その意図と対策を解説します。

質問1:「今回、ご希望の融資金額はいくらですか?」

これは、面談の冒頭で必ず聞かれる、最も基本的な質問です。

  • NGな回答例:
    • 「借りれるだけ借りたいです」
    • 「一体いくら借りられるのでしょうか?」
  • なぜNGなのか?
    これらの回答は、「自社に必要な資金額を、経営者自身が全く把握していない」という印象を与え、計画性のなさを露呈してしまいます。銀行は、明確な目的もなく、ただ漠然とお金を欲しがっている相手に、融資をすることはありません。
  • 模範的な回答のポイント:
    • 具体的な金額を、自信を持って提示する。
      • 例:「はい、今回は運転資金として500万円、設備資金として500万円、合計で1,000万円の融資を希望しております。」
    • 事前に、次に解説する「資金使途」とセットで、必要な金額を具体的に算出しておくことが不可欠です。

質問2:「その資金の使い道(資金使途)について、具体的にお聞かせください」

希望金額を伝えたら、次に必ず聞かれるのが、そのお金を「何に使うのか」という資金使途です。

  • NGな回答例:
    • 「事業の拡大のためです」
    • 「運転資金として使います」
  • なぜNGなのか?
    あまりにも漠然としており、具体性に欠けています。これでは、銀行側も融資した資金が本当に事業の成長に繋がるのか判断できません。
  • 模範的な回答のポイント:
    • 融資の種類(運転資金・設備資金)を意識し、内訳を具体的に説明する。
      • 銀行の融資は、大きく分けて「運転資金」と「設備資金」の2種類があります。一般的に、見積書などで使い道が明確な「設備資金」の方が、融資は出やすい傾向にあります。
    • 具体的な説明例:
      「希望額1,000万円の内訳ですが、まず運転資金として500万円を考えております。具体的には、新規顧客獲得のためのWeb広告費用として300万円、事業拡大に伴う増員のための採用費用として100万円、その他諸経費の支払いとして100万円を予定しています。残りの500万円は設備資金として、事業用の高性能PCと編集ソフトの導入費用に充てたいと考えております。それぞれ見積書も準備しております。」
  • 事前準備の重要性:
    • なぜその金額が必要なのか、その根拠となる資料(広告代理店の提案書、採用計画書、PCやソフトの見積書など)を事前に準備し、面談時に提示できるようにしておくことが、説明の説得力を格段に高めます。

質問3:「その借入金は、どのようにして返済していくご予定ですか?(返済原資は?)」

銀行が最も知りたいのは、 「貸したお金が、きちんと返ってくるか」 です。

  • NGな回答例:
    • 「頑張って売上を上げて、そこから返していきます」
  • なぜNGなのか?
    具体性と客観的な根拠に欠けています。売上が上がっても、それ以上に経費がかかっていれば、返済の原資となる利益(キャッシュフロー)は生まれません。
  • 模範的な回答のポイント:
    • 「事業計画書」を基に、具体的な数値で説明する。
      • 返済原資を説明するための最強のツールが、 「事業計画書(収支計画、資金繰り計画を含む)」 です。
    • 具体的な説明例:
      「はい、こちらの事業計画書をご覧ください。今回の融資で広告宣伝と設備投資を行うことで、来期は売上高が〇%増加し、〇〇円の利益増加を見込んでおります。具体的には、月々の売上予測が〇〇円、変動費が△△円、固定費が□□円ですので、毎月××円の利益(キャッシュフロー)が残る計算です。この中から、毎月の返済額として〇〇円を充当していく計画です。この計画であれば、無理なく返済を継続できると考えております。」
  • 返済原資は「利益(キャッシュフロー)」:
    • 銀行は、返済原資が「売上」ではなく、「税引後利益+減価償却費」といった 「キャッシュフロー」 であることを理解しています。このキャッシュフローが、毎月の返済額を十分に上回っていることを、事業計画書を通じて示すことが重要です。

質問4:「ご自身の自己資金は、どれくらい準備されていますか?」

特に創業融資において、自己資金の額は、経営者の本気度と計画性を測る上で非常に重要な指標となります。

  • NGな回答例:
    • 「自己資金はほとんどありませんが、情熱はあります」
    • (融資希望額に対して、自己資金が1割にも満たない)
  • なぜNGなのか?
    • 自己資金が少ないということは、「事業を始めるための準備を計画的に行ってこなかった」と見なされます。計画的に貯蓄ができない人が、計画的に借金を返済できるとは、銀行は考えません。
    • また、親族から一時的に借りてきたお金を「見せ金」として自己資金に含めることも、その出所を問われた際に発覚し、信用を失う原因となります。
  • 模範的な回答のポイント:
    • 融資希望額の3割程度を目安に準備する。
      • 例えば、1,000万円の融資を希望するのであれば、300万円程度の自己資金を、自身の給与などからコツコツと貯めてきた実績を示すことが理想です。
    • 通帳の履歴で計画性を示す:
      • 単に残高を見せるだけでなく、毎月一定額を貯蓄してきたことが分かる通帳の履歴を提示することで、計画性をアピールできます。
    • 親族からの支援は、正直に伝える:
      • もし親族からの資金援助があるのであれば、隠さずに正直に伝え、その親族が事業を応援してくれていることを示す方が、プラスに働く場合があります。

質問5:「あなたの事業の『強み』は何ですか?他社との違いは?」

最後に、経営者としての資質と、事業の将来性を見極めるための質問です。

  • NGな回答例:
    • 「お客様に親身に寄り添うことです」
    • 「他社よりも丁寧な仕事をします」
  • なぜNGなのか?
    • あまりにも抽象的で、どの会社でも言えるような内容です。これでは、競争優位性があるとは判断されません。
  • 模範的な回答のポイント:
    • 具体的で、独自性があり、顧客にとってのメリットが明確な「強み」を説明する。
    • 市場調査に基づいた客観的な根拠を示す:
      • 例:「競合他社の多くは、〇〇というサービスを提供できていません。弊社の調査では、市場の△%の顧客がこのサービスを求めているというデータがあり、ここに大きなビジネスチャンスがあると考えています。弊社は、独自の××という技術を用いることで、このサービスを他社の半分のコストで提供することが可能です。」
    • 自身の経験と強みを結びつける:
      • 未経験の分野で起業する場合でも、「前職で培った〇〇というスキルが、この事業の××という部分で、他社にはない強みとして活かせます」といったように、これまでのキャリアとの一貫性や、成功への蓋然性を示すことが重要です。

まとめ:融資面談は「準備」が9割!戦略的に臨み、事業成長のチャンスを掴もう!

銀行融資の面談は、多くの経営者にとって緊張する場面ですが、その本質は 「自社の事業の魅力を伝え、返済能力があることを、客観的な根拠をもって証明するプレゼンテーションの場」 です。

融資面談を成功させるための鉄則

  1. 希望融資額を明確にする: 「借りれるだけ」ではなく、具体的な金額を提示する。
  2. 資金使途を具体的に説明する: 「何に」「いくら」使うのか、根拠となる資料と共に説明する。
  3. 返済原資を数値で示す: 事業計画書を基に、利益(キャッシュフロー)から返済可能であることを証明する。
  4. 自己資金の準備と計画性を示す: 融資希望額の3割程度を目安に、計画的に準備した実績を見せる。
  5. 自社の「強み」を客観的・具体的に説明する: 抽象的な精神論ではなく、市場と競合を分析した上での優位性を示す。
  6. そして何よりも、これらの準備を徹底的に行い、自信を持って面談に臨むこと。

これらのポイントを押さえ、万全の準備で面談に臨めば、たとえ創業期であっても、銀行からの信頼を得て、事業を成長させるための貴重な資金を調達できる可能性は格段に高まります。

融資は、単にお金を借りる行為ではありません。それは、金融機関というパートナーと共に、会社の未来を築いていくための重要なステップです。ぜひこの記事を参考に、あなたの事業の魅力を最大限に伝える準備を整え、未来への扉を開いてください。