【マイクロ法人社長必見】節税の王道!車は個人・法人、新車・中古どれが一番お得?シミュレーションで徹底比較

節税・経費

「いつかは高級車に乗りたい…」
「どうせ車を買うなら、少しでも経費にして節税したい」

事業を営む方、特にご自身で法人を経営されている社長にとって、車の購入は大きな決断であると同時に、節税を考える上での重要なテーマでもあります。インスタグラムなどで、経営者が高級車に乗っている姿を見ると、「自分もいつかは…」と憧れを抱く方も多いのではないでしょうか。

しかし、一口に「車を経費にする」と言っても、そこには様々な選択肢とルールが存在します。

  • 個人事業主と法人、どちらの名義で買うのが得なのか?
  • 新車と中古車では、経費の落とし方にどれだけの違いがあるのか?
  • 一昔前に流行った「中古のベンツは節税になる」は本当なのか?

これらの疑問を解決しないまま何となく車を購入してしまうと、本来得られるはずだった大きな節税メリットを逃してしまうかもしれません。

この記事では、事業用の車を購入する際の最適な選択肢を見つけるために、「個人事業主vs法人」「新車vs中古車」という2つの軸で、具体的な数字を用いたシミュレーションを交えながら、それぞれのメリット・デメリットを徹底的に解説します。

この記事を最後までお読みいただければ、あなたの事業状況や目的に合った、最も賢い車の買い方が明確になるはずです。

経費化の基本「減価償却」とは?

まず、車の購入費用を経費にする際の基本となる「減価償却」という考え方について理解しておきましょう。

減価償却とは、車やパソコン、建物といった高額で長期間使用する資産(固定資産)の購入費用を、購入した年に一括で経費にするのではなく、法律で定められた使用可能な期間(耐用年数)にわたって、分割して経費計上していく会計上のルールのことです。

例えば、1200万円の車を買ったからといって、その年に1200万円全額を経費にできるわけではなく、「耐用年数」に応じて毎年少しずつ経費にしていく、というイメージです。

そして、この減価償却の計算方法が、個人事業主と法人、新車と中古車で大きく異なり、それが節税効果の差となって現れるのです。

【ケース1】新車(1200万円)を購入した場合の比較

それでは早速、1200万円の新車を購入したと仮定して、「個人事業主」と「法人」でどれだけ経費計上の仕方が違うのかを見ていきましょう。

新車の普通乗用車の法定耐用年数は6年と決まっています。この「6年」という期間が、計算のベースとなります。

個人事業主の場合:「定額法」と「家事按分」

個人事業主が減価償却を行う場合、原則として「定額法」という計算方法を用います。定額法とは、その名の通り、毎年「定額」を均等に経費にしていく方法です。

さらに、個人事業主には特有の「家事按分(かじあんぶん)」という考え方が必要になります。これは、車を事業用だけでなくプライベートでも使用する場合、その使用割合に応じて経費にできる金額を分ける、というルールです。

【シミュレーション条件】

  • 購入車両:新車 1200万円
  • 耐用年数:6年
  • 事業使用割合:80%(プライベート使用20%)
  • 計算方法:定額法

【計算ステップ】

  1. 経費対象額の算出(家事按分)
    1200万円のうち、プライベートで使用する20%(240万円)は経費にできません。
    1200万円 × 80% = 960万円 ← これが減価償却の対象額となります。
  2. 年間の減価償却費の算出(定額法)
    経費対象額の960万円を、耐用年数の6年で均等に割ります。
    960万円 ÷ 6年 = 160万円/年

【結論】
このケースでは、個人事業主は毎年160万円を6年間にわたって経費計上していくことになります。

法人の場合:「定率法」と「全額経費」

一方、法人が減価償却を行う場合は、原則として「定率法」という計算方法を用います。定率法は、初年度に多くの経費を計上し、年々その額が減少していくという特徴があります。

また、法人の場合は家事按分の概念がなく、事業目的で購入した車は原則として100%経費計上が可能です。マイクロ法人の社長が、法人名義で車を所有する大きなメリットがここにあります。

【シミュレーション条件】

  • 購入車両:新車 1200万円
  • 耐用年数:6年
  • 償却率:0.333(6年の場合。定額法の償却率の2倍)
  • 計算方法:定率法

【計算ステップ】

1年目:
1200万円 × 0.333 ≒ 400万円
(※厳密な計算では200%定率法を用いますが、ここでは分かりやすく簡略化しています)

2年目:
(1200万円 – 400万円)× 0.333 ≒ 266万円
(未償却の残高に対して、同じ率をかけていきます)

【結論】
法人の場合、1年目に約400万円、2年目に約266万円と、購入初期に多額の費用を計上できます。

新車購入時の比較まとめ

個人事業主法人
計算方法定額法(毎年均等)定率法(初期に厚い)
経費対象額960万円(家事按分後)1200万円(全額)
1年目の経費160万円約400万円
2年目の経費160万円約266万円

この結果を見れば一目瞭然です。新車を購入する場合、「より早く、より多くの金額」を経費にできるという点で、圧倒的に法人の方が有利であると言えます。

【ケース2】4年落ちの中古車(1200万円)を購入した場合の比較

次に、節税の文脈でよく話題に上がる中古車、特に「4年落ち」のケースを見ていきましょう。

中古車の場合、耐用年数の計算方法が新車とは異なり、これが節税効果に劇的な変化をもたらします。

中古車の耐用年数の計算方法

中古車の耐用年数は、以下の簡便法で計算します。

(法定耐用年数 − 経過年数)+(経過年数 × 20%)

今回のケース(法定耐用年数6年、経過年数4年)に当てはめてみると…

(6年 − 4年)+(4年 × 20%) = 2年 + 0.8年 = 2.8年

税法上、端数は切り捨てるため、この中古車の耐用年数は2年となります。
この「短期間で償却できる」という点が、中古車節税の最大のポイントです。

個人事業主の場合(中古車)

【シミュレーション条件】

  • 購入車両:4年落ち中古車 1200万円
  • 耐用年数:2年
  • 事業使用割合:80%
  • 計算方法:定額法

【計算ステップ】

  1. 経費対象額の算出
    1200万円 × 80% = 960万円
  2. 年間の減価償却費の算出
    960万円 ÷ 2年 = 480万円/年

【結論】
個人事業主でも、中古車にすることで毎年480万円という多額の経費を計上できます。新車の場合の160万円と比較すると、その差は歴然です。

法人の場合(中古車)

そして、いよいよ本命の「法人×中古車」のケースです。
法人が耐用年数2年の資産を定率法で償却する場合、償却率は1.000、つまり100%となります。

【シミュレーション条件】

  • 購入車両:4年落ち中古車 1200万円
  • 耐用年数:2年
  • 償却率:1.000 (100%)
  • 計算方法:定率法

【結論】
法人が4年落ち以上の中古車を購入した場合、購入費用である1200万円を、購入した事業年度に一括で経費計上(即時償却)することが可能になるのです。

中古車購入時の比較まとめ

個人事業主法人
耐用年数2年2年
1年目の経費480万円1200万円(一括)
2年目の経費480万円0円

この結果から、「節税効果を最大化するなら、法人名義で4年落ちの中古車を買うのが最強」という結論が導き出されます。これが、「中古のベンツは節税になる」と言われたカラクリの正体です。(※ベンツに限らず、4年落ち以上の車であれば同様の効果が得られます)

購入タイミングの注意点!「月割償却」

一つ、非常に重要な注意点があります。それは、減価償却費は事業年度の期首から所有していた場合に満額が計上できるという点です。

もし、事業年度の途中で車を購入した場合、その年の減価償却費は所有していた月数で「月割」計算されます。

例えば、12月決算の法人が、決算直前の12月に1200万円の中古車を一括償却目的で購入したとします。この場合、所有期間は1ヶ月しかないため、その年に経費にできるのは、

1200万円 × (1ヶ月 ÷ 12ヶ月) = 100万円

となり、残りの1100万円は翌事業年度に経費計上することになります。

大きな節税効果を狙うのであれば、期末ギリギリではなく、できるだけ期の初めに購入するのがセオリーです。

まとめ:あなたのビジネスに最適な一台は?

今回は、車の購入における節税効果を、「個人事業主vs法人」「新車vs中古車」の軸で比較解説しました。

  • 長期的に安定した経費を計上したいなら
    → 個人事業主 × 新車(毎年160万円×6年)
  • 新車に乗りつつ、早めに経費化したいなら
    → 法人 × 新車(初年度400万円)
  • 個人事業主でも、短期間で大きな経費を作りたいなら
    → 個人事業主 × 4年落ち中古車(480万円×2年)
  • 利益が大きく出た年に、最大限の節税効果を得たいなら
    → 法人 × 4年落ち中古車(1200万円を一括経費化)

結論として、節税という観点だけで見れば、「法人名義で、期の初めに4年落ち以上の中古車を購入する」のが最も効果的な選択と言えるでしょう。

もちろん、車の購入には一括購入、ローン、リースといった支払い方法の違いや、個々の事業の利益状況など、考慮すべき点は他にもたくさんあります。しかし、今回解説した減価償高いった基本的な仕組みを理解しておくことが、賢い車選びの第一歩となります。

ぜひ、この記事を参考に、あなたの法人にとって最適な一台を見つけてください。